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50. ビフォーアフター

同居人ができたので、棲家の改装作業。

「……じゃあ、とりあえず今日は、リリィがここで生活できるようにするか」


 握手を交わした後は、棲家の生活環境をリリィが暮らしやすいものに調整するために動き始めた。


 そうは言っても、できることはそれほど多くはない。

 まずは、1人用には十分だったが、同居人ができるとなると少々手狭に思える棲家そのものの広さに手を加える。

 やり過ぎて天井を支えきれなくなってしまい崩落、といった事態を避けるため慎重に、元素操作で少しずつ岩を削って広げていった。


「よし、こんなもんだろ」


 荷物置きにしていた奥の天井が低い部分に十分な高さを取り、入り口近くの空間も広げた結果、なんとか畳2畳分ほど広くすることができた。


 続いて、配置換えだ。

 昨日は気を失ったリリィを元からあった寝床に運んだ流れで、リリィには奥で寝てもらったがこれを変更。

 入り口側の新たに広げたスペースに、リリィの寝床を移した。


「広くなった分、奥は暗くなるからな。俺ならある程度は夜目もきくし」


 それも理由の1つだったが、リリィを奥に置いて結果的に琢郎が入り口を塞ぐような形は避けたかった。互いに信用を深めるために一緒に生活しようというのに、無意味に不安を誘っては意味がない。


 琢郎は奥で寝起きすることにして、荷物はリリィにも使いやすいよう彼女の寝床とは逆側の壁に新しく置き場を作った。


「ひとまず、棲家はこれでいいか。何か希望があるなら言ってくれ?」


 改装が一段落して、リリィに意見を求めてみる。何でも希望通りにとは言えないが、できる範囲で要望があれば応えるつもりだった。


「あ。で、でしたら……」


 リリィが口にしたのは、要望というよりは疑問。井戸なり川なり、最寄りの水場がわからないので、その場所を教えて欲しいというものだった。


 昨日から食事の際には琢郎が元素操作を用いて水を生成していたが、生活するとなると食事以外にも水を使う場面が多々あるだろう。その都度、琢郎の手を煩わせて出してもらうというのは、互いに好ましくない。


 そこで、自分で自由に使える水を調達したいというのがリリィの希望らしい。

 だが、言われて琢郎は困った。


「……いや。リリィがここから1人で歩いて行けそうな場所に、水場はないぞ」


 棲家周辺の地形を確認した時にわかっている。だが、琢郎自身は自分で出せるために近くに水がないことを問題視はしていなかった。

 むしろ、そのことがこの周辺を他の生き物が棲みづらい場所にしていて、安全上は好ましいとさえ思っていた。


「……要は、リリィが好きに使える水があればいいんだろう?」


 琢郎は、新しく荷物置き場にした壁に向かい、その横で再び元素操作を始める。

 地面を丸く掘り下げ、同時にその時出る岩の破片をその円周上に積み上げていく。結果、半分地面に埋まる形で(かめ)状のものを作り上げた。


「確かに、俺もずっと中にいるわけじゃないし、不便だからな。あらかじめここに水を出して溜めておけば、リリィの使いたい時に使えるようになる」


 そう言って、すぐさまそこ一杯に生み出した水で満たした。


「あとは、水を汲むのに使う柄杓(ひしゃく)みたいなものがあればいいか」


 さすがにそれまで石で作ろうとすると、重くなりすぎる。森に下りて適当な木か何かを材料にして作る必要があった。

 町で買ってくるには、残金が心もとない。


 棲家の外に出ると、拡張作業に思いのほか時間がかかっていたのか日がすでに高い位置にあった。ついでに昼食用の食材も探してくるかと思ったところで、ふと思いつく。


「これから食材採りに森に入ろうと思うんだが、色々採ってもリリィが食べられるものじゃないと意味ないだろ。よければ、リリィも一緒に行かないか?」


 後ろを振り返って、リリィに呼びかける。


「そしたら、集める段階でどれを選んだらいいのか俺にもわかるし。魔除けの枝があれば魔物に襲われることはそうないし、万一の時や移動の間は俺が助ける」


 互いを信用するには、一緒に何かをする経験を積むことも有効だろう。

 毎回ではなくとも、何度か一緒に探せば何か食べられてどれがそうでないかの知識も、直接生えているところで教わって、詳しくなれるはずだ。お互いいいことずくめの提案だった。


「えっと……じゃあ、危なくないならご一緒します」


 その証拠(かどうかはわからないが)に、リリィは少しだけ迷ったものの、すぐに同意を返してきた。

地属性がどんどん便利に。

塩の件で限界はありますが、強力だが効果がはっきりしている魔法よりも元素操作の方が汎用性が高くて有用な気がしてきました。

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