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31. オークVS触手(但し、エロスは無し)

サブタイ通り、ファンタジー系のエロ展開ではどちらも定番の存在ですが、今回のところはお色気要素は欠片もございません。

「こんな化け物がいるとか、聞いてないぞッ!?」


 足に巻きついた蔦の出所を目で辿っていくと、半径5メートルほどの円状にぽっかりと草木のない空間があり、その中心に巨大な赤い花が。

 大きさや色形はいつだったか写真で見たことがある世界最大の花・ラフレシアによく似ている。

 しかし、1つ決定的に異なる点があった。


 茎や葉がないのは同じだが、巨大な花弁の下から触手としか言いようがない蔦のようなものが大量に、うねうねと動いている。

 触手の長さはまちまちで、1,2メートルほどのものから、おそらく10メートル近いだろうものまで。

 そのうちの1本が琢郎に向かって伸び、左足首を捉えていた。


「ウ、<風刃>(ウィンド・カッター)!」


 足首を引く力が増したために、引きずられる前に慌てて風の刃を飛ばす。狙い違わず、足首から数十センチのところで緑色の蔦が切断された。


「こいつ、魔除けが効いてないのか?」


 足の自由を取り戻したが、すぐにまた別の触手が琢郎に伸びてくる。

 触手の長さからして、<石壁>(ストーン・ウォール)では壁の上を乗り越えられてしまって有効ではないだろう。


<嵐風障>(アイ・ウォール)


 自分を中心とした竜巻状の風を起こす魔法で、伸びてきた触手をあらぬ方へ逸らす。

 すぐさまそれを解除すると、続けて<風刃>(ウィンド・カッター)をたて続けに放ち、逸らした触手をバラバラに分断する。


 その時、風が周囲の空気をかき混ぜたためか、琢郎の担いだ荷物の中の聖木の臭いとは別に、甘ったるい臭いが琢郎の豚鼻に届いた。

 それが花の魔物が捕食のために獲物をおびき寄せるための臭いで、そこに琢郎が聖木の枝の臭いを持ち込んだことが琢郎が触手で襲われた原因だった。


 聖木の魔除けの効果もないわけではなかったが、そもそも植物型の魔物であるため、自ら遠ざかることができずに、不快の元を断つため逆に攻撃的にならざるを得なかった。


 だが、そうした事情は後になって気づくことはできても、次々と触手に襲われる今の琢郎にはわかるはずもない。

 理由を考えるよりも、この場は敵を倒すことが先決だった。


<地槍>(アース・ステーク)!」


 伸びる触手は激しく動くものの、本体と思しき花自体には移動する様子がない。ならば、と真下から本体を串刺しにするべく、再び渦巻く風で身を護りながら地に手を付ける。

 『多重同時詠唱(マルチタスク)』のスキルを有する琢郎には、風の防御を維持したままで正反対の地属性の攻撃魔法を用いることも容易だ。


「……んんッ?」


 そのはずだったが、現実は琢郎の思うようにはいかなかった。

 花の魔物が地中に根を張っていることが魔力的にも影響しているのか、詳しい理屈はわからない。花本体を中心として半径3メートルほどの半球状の範囲で、琢郎による地中の元素を操作を受け付けなかった。


 やむなく、杭を発動させる座標をずらす。操作不能の範囲のすぐ外で、地表付近を蠢く触手を数本、串刺しにして縫い止める。

 これでもう計10本近い触手が使えなくなったはずだが、それでもまだ半減どころか、3分の2は残っていた。


「くそッ、こうなったら……!」


 一気に本体を狙うはずの攻撃が失敗した琢郎は、次に少々乱暴な手段を思いつく。幸い、花の魔物が栄養を奪っているせいなのかその周囲には草木が生えていないため、大惨事にはならないはずだ。


<舞火精>(フレイム・ビット)


 初めて使う魔法。

 画面の説明によると本来ならば、人魂のような火の玉を周囲に2つ浮かべ、近づくものを体当たりで自動迎撃する火属性の防御魔法だ。


 しかし、今は花の魔物が伸ばす触手を近づけないため、<嵐風障>(アイ・ウォール)で周りに風を巻き起こしている最中。

 火の玉は生成されるなり竜巻に呑み込まれ、そのまま同じように巻き込まれていた触手に燃え移った。


 ボウッと触手の先が燃え上がり、慌てたように琢郎の周りから引き戻される。火の付いた触手を何度も地面に叩きつけるが、簡単には消えない。

 自らの鎮火に躍起になったか、琢郎に向かう触手がなくなったところで、こちらも竜巻を解除する。

 とどめの一撃を刺すには、周囲の風が邪魔だった。


<火炎球>(ファイアー・ボール)!」


 火球を生み出した琢郎は、花の中心めがけて投げつける。わずかに狙いはずれたが、花弁に命中した火は瞬く間に燃え広がり、花全体がすぐに炎に包まれた。

 狂ったように触手が暴れまわるが、こうなってしまっては花の魔物になす術はない。


 触手に巻き込まれないよう、琢郎は少し距離をとって魔物が燃えていく様を見守った。

 途中、先っぽに火が付いた触手が一度、草木が生えなくなった場所の外にまで伸びて、下草に燃え移りそうになったが、<水流射>(ウォーター・ショット)でそこだけは消火。延焼を防いだ。


 燃え広がりそうになったのはその一度きりで、花本体が燃えるにしたがい触手の動きも鈍っていく。やがては動かなくなり、花もろともに触手も、最後には全て黒い燃えカスとなったのだった。

久々の戦闘回です。新魔法も2つ登場。使い方はいきなりアレンジされてますが。

どういう魔法かは前々から固まっていたんですが、表記とネーミングがまだだったために実はそこが難航。の割りに、結局なんか微妙な感じで落ち着きました。

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