20. 思わぬ収穫
この辺、事前のプロットが非常に雑になっている部分のため、話の繋がりに難航しています。
「あっ、おい! って、あぁ……」
琢郎と目が合うなり、道を歩いて来ていた中年の男は、慌てて踵を返す。そのまま一目散に元来た方向へと逃げていった。
琢郎が呼び止めた声も、耳には入っていなかったようだ。
オークの巣へと自ら乗り込んできた昨日の冒険者たちは例外で、一般の人間の反応としてはこれが普通なのだろう。
だが、琢郎としては人間と出会ったからといって、向こうが襲ってくるならともかく、特に害意は持っていない。あえて男を追う理由もないので、緩やかなカーブを描いた道の先で木々に隠れて見えなくなるのをその場で見送った。
あとに残ったのは、少しでも逃げ足を速くしようとしたのか、人馬共に背負っていたのをその場に投げ捨てられた荷物だけだった。
「……このまま放っておくのも、もったいないよな?」
誰に向かって言ったでもないが、言い訳を口にする。ゆっくりとその荷物に近づいていって拾い上げた。
都合よく考えるなら、さっきの男はいらないから捨てていったわけで。
ならば、欲しい者がもらっていっても問題はない(日本なら拾得物横領とかあったが、見ないフリ)。
何か役立つ物があるかもしれない以上、生活状況の改善のためにも遠慮はしない。
ただ、この場でゆっくり拾った物の中身を確かめるというのはさすがにまずい。逃げた男がそのうち引き返してくるかもしれないし、別の人間が通りがからないとも限らない。
琢郎を見て逃げるような奴ならいいが、武装した戦闘能力を有する相手だと面倒なことになる。
「<風加速>!」
両手で2つの荷物を掴むと、加速魔法を再び唱える。
そのまま男が逃げたのとは逆の方向に少し進んで、琢郎は道を外れて森の中へと引き返した。
しばらく森の中を進んだところで、手近な岩陰を見つけて足を止める。そこで運んできた荷物を下ろし、その中身を確認していく。
まずは、馬の背に括り付けられていた毛皮の束。
言うまでもないがこれはありがたい。これがあればボロ切れ1枚を腰に巻いただけの姿から、少しはマシな格好ができるだろう。
余った分は寝床にでも使えばいい。こちらも、枯れ草や枯れ葉を集めただけのものよりは、かなり快適になるはずだ。
「次は、こっちの袋の方か……」
毛皮の束を一旦置いて、男が担いでいた袋に目を向ける。
毛皮の方は男が馬の背から投げ落とした時に包みがズレてしまって中身が覗いていたが、こちらは紐でしっかり口が縛られていて何が入っているのかまるでわからなかった。
もっとも、仮に中身が役に立たないものであっても、この袋そのものだけでも今の琢郎には非常に有用だった。
袋の口の紐を緩めて中を覗き込み、手を入れて取り出していく。
火打石、筆記用具。他にもいくつか、魔法で代用できたり、今の琢郎には必要なかったりする物も当然入っていた。
大きな燻製肉の塊。袋の中身の半分をこれが占めていた。
弁当用と思われる、固くて黒いパンが2つほど。上等な物ではないだろうが、果実や草、あるいはただ焼いただけの肉を喰ってきた琢郎にはそれでもかなりのご馳走だった。
オークはたいがいの物が喰えるので飢えはしなかったが、喰える=美味いと感じるわけではない。さらに、
「おぉッ!?」
瓢箪のような、硬い木の実か何かでできた小さな瓶。その栓を抜いて、半分ほど入っていた中身の液体を少しだけ舐めてみた琢郎は、思わず声を上げた。
やはり質は良いものではないのか、かなり酸味が強い。だがそれは間違いなく、ぶどう酒だった。
久しぶりに酒精を味わう喜びに、ついつい興奮してしまった。
ちょうど朝から何も食べていなかったこともあって、燻製肉をおかず兼肴にして久々の人間らしい(今はオークだが)食事を堪能する琢郎だった。
今はオークでも、元は人間。群れを離れたことで人間らしい生活への回帰が強くなる。
そんな感じが表現したいのですが、ここでわざわざこうして書いている辺りでわかるように、うまく書けているとは思ってません。




