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119. 後始末

「タクローは先に魔法具の回収。リリィは向こうのゴブリンの処理を。メスゴブリンの始末を終えたらこっちも手伝うから」


 ゾフィアの指示で、それぞれに後処理へと動き出す。


 琢郎は円盤に魔力を通して起動させると、ゴブリンの死体の間を歩きながら針の向きで対となる発信機を探す。

 貼り付けた相手にすぐ気づかれないよう小さくできているため、遠目で見分けることができずにこうして地道に針の動きで当たりをつけるしかない。


「……こいつらのどっちかか」


 針の向きに従って移動していき、重なるように倒れている2匹のゴブリンのどちらかまでは絞り込めた。

 ついでにその耳を削ぎながら、ゾフィアが貼り付けていた場所を両方とも調べ、1匹から無事に対の魔法具を回収する。


 そう言えば、メスのゴブリンはどこがギルドの換金部位になっているのか。

 琢郎が以前に見た掲示板には特にメスについては書いていなかったため、ふと疑問に思ってゾフィアの方を見る。


「うッ……」


 思わず呻くような声を洩らしてしまった。

 魔物を殺したり、その死体の一部を削いで持ち帰ったりすることにはもう慣れたつもりだったが、これは少々インパクトが強い。

 メスゴブリンの死体を並べたゾフィアは、剣でその腹部を大きく裂き、中から血の滴る内臓らしきものを引き抜いていた。


「耳を持って行っても、雌雄の区別はつかないんでね。子袋を回収しないといけないんだが、これはリリィにはさすがにまだ見せられないだろう?」


 そう言ったゾフィア自身はもう慣れているようで、手際よくメスゴブリンの死体を捌くと抜き出した内臓を変わった袋に詰め込んでいく。

 曰く、内臓は血の量や臭いが他の部位とは比較にならないため、何枚も重ねて間に香草なども挟み込んだ特製の袋で外に洩れるのを防いでいるそうだ。


「悪いんだが、始末の終わったゴブリンを巣穴の奥に捨てていってくれないか?」


 最後のメスゴブリンの腹を裂きながらのゾフィアの言葉に従い、腹を裂かれたゴブリンの死体をさっき飛び出してきた巣穴へと投げ入れるように戻していく。

 そうする理由は正直よくわかっていないが、潰した巣の始末の仕方など知らない琢郎としては、言われた通りにする他ない。


 ゾフィアはメスゴブリンの子袋を全て袋に収めると、その口をきつく縛って中のものが洩れないようにしてからリリィの方の手伝いに移る。

 琢郎は引き続き、残った死体を巣穴に集めていった。


「メスが終われば、オスの方も頼む。リリィと一緒に耳を落とし終わったらこちらも手伝うから、巣に近いものからどんどん運んで欲しい」


 だが、穴の入り口が小さいのであまり奥の方まで入れることはできていない。メスだけでなくオスもとなると、途中で入りきらなくなることは明らかだった。

 それを言うと、無理に奥深くまで詰め込まずともよいという返事がきた。入らない分は巣穴の前に集めるだけでもいいらしい。


「よいしょ……っと」


 近いものから巣穴に運んでいたため、後になるほど搬送距離が増える。

 高さ1メートルほどの巣穴で出入りするゴブリンは重量も大きさ相応ではあったが、耳の回収を終えて死体を纏める手伝いに回ったリリィたちは、2人で前後を持って運んでいた。


「本当は、このまま燃やしてしまうのが一番なんだが、な」


 ゴブリンの死体の詰まった巣穴の前、さらにそれを隠すように数体の死体が積み上がった光景を前にゾフィアが洩らした。

 巣穴そのものは地肌が剥き出しになっているが、周りには緑も多い。下手に火葬して山火事になってしまえば一大事だ。


 このままにしておいても、死肉を漁る獣や鳥がいずれ死体を片付けてくれる。

 死体を巣穴に纏めたのは、それまでに充満した『死』の臭いと骨が、まだ巣に戻っていなかった生き残りがいたり、他のゴブリンなどが見つけたりしても、巣穴の再利用を忌避させることになるからだということだった。



「それで、この後どうするんだ? もう一度ゴブリンを見つけて別の巣を探すのか?」


 潰した巣の後始末まで終わったことで、次の行動を訊ねる。

 魔法具の使用に必要な魔力には全く問題がないことは伝えたのだが、ゾフィアは即答をせずに難しい顔をして見せた。


「少し微妙だな。道具はあと1回分なら大丈夫だが、見つけるのに手間取って時間が遅くなると問題が増える」


 3人の中で一番体力が低いリリィに話を向けても、


「大丈夫です。ゴブリン相手ならまだやれます!」


 と主張したため、ゾフィアは決断した。



 採取を再開しつつ、30分を目処にゴブリンと遭遇する機会を待つ。

 首尾よくいけば次の巣を確認し、それまでに魔法具を仕掛けられなければ以降に遭遇しても撃退のみで採取を継続して、巣の捜索は翌日に繰り越し。


 そう決定して、潰した巣を後にした一行は移動しながら薬草などを集めていく。

 どうやらこのまま繰り越しになりそうだと思いかけたが、ちょうどそこへ5匹のゴブリンが通りかかった。


「タイミングがいいのか、悪いのか。いくぞ!」


 ゾフィアの号令で動き出し、そこからは先ほどの繰り返しとなった。


 半数を削り、魔法具を仕掛けた後に一時離脱。

 少し時間を置いて対となる琢郎の持つ魔法具で巣に戻るゴブリンを追う。


「……今度は当たり。あれは女王種(クイーン)の巣だ」


 魔法具の反応を追って辿り着いたゾフィアの声が緊張している。


 同じものを目の当たりにした琢郎は、ラグードの言葉を実感した。

 なるほど、たしかに一目瞭然だった。

臓物ネタが妙に長くなったのでバッサリカット。

なんとか予定の引きに。

次回はようやく真・ゴブリンの巣です。

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