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11. 魔法の練習その3 ~初めての実戦~

初めての魔法戦闘。

 せっかく川まで来たのだ。火属性の魔法の練習だけではもったいない。

 火球投げは10球で一段落として、琢郎は川原から川の流れの中へと、立ち位置を移す。

 水属性の魔法も、森の中(というより、水辺以外の場所)ではまず大量の水を生成するところから必要になるため、時間とコスト(MP)がかかりすぎて使用に適さない。

 魔力の消費の負担というか、いちいち一手間余分にかかることが面倒と言うべきか。ともあれ、ここならそんな面倒を省いて、川の水を利用してそのまま魔法を使うことができる。

 練習するなら、この機会をおいてなかった。


<水流射>(ウォーター・ショット)!」


 銃のように構えた右手の指から、高圧の水を発射する魔法だ。さすがに貫通とまではいかなかったが、的にした手近な岩に小さな穴を穿つ。

 ある程度射程に反比例するものの、指先からまっすぐ射出されるため、照準のしやすさと一点への貫通力は高い。

 続けて<風刃>(ウィンド・カッター)の代わりに樹上の果実を狙い撃つと、枝と果実が繋がっている部分を正確に撃ち抜いて、大きな赤い実を傷つけることなく何個も落とすことができた。

 巣に持ち帰るためにそれらを拾い集め始めたその時、琢郎の耳が来たのとは反対側から近づいてくる足音を捉えた。


「え……な、なんだぁ!?」


 振り返った琢郎の視界に映ったのは、10を超える異形の姿。

 歩く姿は人間とそう変わりないが、大きさは今の琢郎の半分ほどでしかない。肌は森に隠れるような緑色をしていて、耳と鼻が尖がっている。

 服らしきものは着ていないが、唯一腰にベルトのようなものを巻いてそこに何か白い物を差していた。


 2人(匹?)に1人くらいの割合で桶のようなものを担いでいるところを見ると、どうやら川の水を汲みに来たらしい。昨日ここを見つけた時には、時間が違ったせいかあんな奴らは見なかったのだが。

 『特殊表示(ステータス)』を使って彼らを見るが、何も数値は表示されない。ただ『ゴブリン』と種族名のみが表示されるだけだった。


「ギギィ――ッ!」


 ほぼ時を同じくして、向こうもこちらの存在に気づいたようだ。ただし、驚くだけの琢郎とは違い、彼らはすぐにこちらへの対処を開始した。

 桶を放り捨てると、腰の白い物を引き抜いて駆け出す。琢郎に向かって。

 手にした細長いそれは、獣の骨のようなものを削って作ったとおぼしき短刀だった。


「ウ、<風刃>(ウィンド・カッター)!」


 咄嗟に魔法を唱える琢郎。


「グギャッ」


 ほぼ反射的にろくに狙いもつけず放った魔法だったが、運よく先頭を走る相手の短刀を持つ手を肘と手首の中間辺りで斬り飛ばす。悲鳴と赤黒い血飛沫が上がった。

 しかし、それで止まったのは斬られた本人のみで、残りのゴブリンはなおも琢郎に近づいてくる。

 体格に差はあるものの、向こうは数が10を超える上に、こちらは一見して丸腰だ。自分たちが優位であるとゴブリンたちは考えているようだった。


 実際、琢郎は慌てていた。川を挟んでいたならまだ余裕もあったが、まずいことにちょうど撃ち落とした実を拾うために、奴らが向かって来る方の岸に上がったところだった。

 こちらを殺そうとする本気の殺気。相手を殺すために作られた凶器。

 いずれも、日本で平和に暮らしてきた琢郎には馴染みのないものだ。

 そんなものを備えた相手が、しかも集団で迫ってくる。落ち着いてなどいられようはずもない。

 近づくのを食い止めようと、必死で魔法を連射する。


<風刃>(ウィンド・カッター)! <風刃>(ウィンド・カッター)! <風刃>(ウィンド・カッター)!」


 琢郎が叫ぶたびに風の刃が飛んで、ゴブリンの腕や首が次々と宙を舞う。そうして怯ませておいて、


<石壁>(ストーン・ウォール)!」


 地属性の防御魔法で、畳返しのごとく手を付いた地面から3メートル四方、厚さ10センチを超える石板を起こしてこれ以上の接近を阻む。

 この段階で、先頭の数匹がやられたゴブリンたちは、もはやこれ以上琢郎を襲える状況になかった。

 だが、ゴブリンたちを阻むための壁は同時に琢郎からも奴らの姿を遮ることになってしまい、琢郎にゴブリンたちの様子を知るよしはなかった。


「くたばれ、<火炎球>(ファイアー・ボール)!」


 凶器を持った相手への怯えが攻撃衝動へと裏返り、追い討ちをかけるように火球を山なりの軌道で壁越しに投げ入れる。


「ギャギャッ、ギャワ――ッ!」


 肉が焦げる臭いと共に、石壁の向こうで悲鳴が上がった。

 ダメ押しにもう1度火球を投げると、念のため壁を離れて川にまで下がる。さらなる悲鳴が上がって、壁の上にちらりと炎と煙が見えた。


 やがて壁の両端から火達磨になった小さな影がいくつか飛び出し、そのまま川へと転がり落ちる。


「グ……グガ……」


 ほとんどはそこで力尽きたのか動かなくなってしまったが、中には身体の一部を黒く焦がしながらまだ動こうとするゴブリンもいた。


<水流射>(ウォーター・ショット)


 そこを水流で撃ち抜いてとどめをさす。

 何発か<水流射>(ウォーター・ショット)を放っていると、やがて琢郎の視界内に動くものはいなくなった。

琢郎の慌てようを表現しようとしたのですが、ほとんど魔法を連呼してるだけだったり。

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