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104. 手紙

 ゾフィアは10日は街を離れることになる、と言っていたに過ぎない。

 何日までには必ず戻るというような話ではなかったし、仕事も荷馬車で運ぶ商人の護衛というものだ。馬車に不具合が出るとか、悪天候に遭遇するだとかで、1日や2日予定より遅れてしまう理由などいくらでも考えられる。

 第一、ギルドのロビーで毎日のように顔を合わせて合流してはいたが、正式にパーティーを結成してもいなかった。

 それゆえ、現時点ではそれほど心配するような状況ではなかったのだが、理屈がどうあれ人の心というのはまた別だ。


「……今日もまだ、ゾフィアさんは戻っていないんでしょうか?」


 行きと帰り、それぞれギルド内のロビーを見渡してゾフィアの姿を探していたリリィは、宿へ戻る道すがらに心配の声を洩らす。


「まだそこまで心配することはないんじゃないか?」


 上記のような予想を挙げて、琢郎はそれを慰める。

 ゾフィアのことを気にしていたせいか、この日は依頼で採取した薬草の中に、リリィが間違えて採ってしまったものが数本混じっていた。

 採取の時ならまだいいが、ミスが戦闘にまで及ぶ可能性を考えると、琢郎もリリィとは少し違う理由でゾフィアの早い帰還を祈るのだった。


「ああ! リリィさん、ちょっと待って下さい」


 そんな言葉を交わしながら宿に戻ったところで、珍しくそこの主が呼び止めてきた。


「リリィさん宛ての手紙が1通、届いてますよ」


「えぇッ?」


 リリィがレオンブルグで冒険者をしていることなど、トラオンの者が知るはずもない。琢郎と一緒にこの街へ着いてから知り合い、まして宿の場所を教えた相手など、1人しかいなかった。


「ゾフィアさんからです!」


 手紙を受け取ったリリィは、差出人の場所に書かれた想像通りの名前に声を上げた。

 宛先がリリィになっているのは、ギルド員用のこの宿を借りているのは琢郎ではなくリリィの名義になっているので、これも当然だった。


 急いで部屋に戻ると、封を切って中の文字に目を通していく。


「……えッ!?」


 そして、初めの2,3行だけで、リリィは再度驚きの声を上げることとなった。

 琢郎も同じく手紙を覗くと、冒頭にこうあった。


『タクロー、リリィ。

 まず最初に詫びておく。

 すまない。当分レオンブルグには戻れそうにない』


 なるほど。このようなことが書いてあれば、ここ数日ゾフィアの帰りを待ち望んでいたリリィが驚くのも無理はない。

 その後には、なぜ戻れないかの理由も綴られていた。


 ゾフィアが向かった町、オルベルクからさらに西にいくつか町を過ぎたところに、大森林と隣接したヴェステンヴァルトという町があるらしい。

 魔物がほとんど出ない森の浅い部分を活用した産業の町だったが、最近になって急に森の深い方からの魔物の出現が多発。町の産業に大きな支障が出たため、一流の冒険者を集めて調査に派遣した。

 さらに、町周辺の魔物の対処に中堅冒険者を近隣から広く募ったため、オルベルクでは冒険者の人手不足となっているということだ。

 そのため、なかなか帰るに帰れないらしい。

 そして、その分なかなか依頼の割もいいようで、よければ琢郎たちの方がオルベルクへ来てはどうかとも書かれてあった。


「……どうする?」


 驚いて読むのが一度止まっていたリリィが最後まで読み終わった頃合を待って、琢郎は訊ねてみた。

 もっとも、リリィの答えは予想できていたが。


「わたしは、ゾフィアさんのお手伝いに行きたいです。色々教えてもらったお礼もまだできてないですし」


 琢郎としては、無事は確認できたのだから、またゾフィアと組むにしても別にレオンブルグに戻るのを待ってからでも構わないとも思っていた。

 が、思った通りリリィが行きたがるなら、それならそれで構わない。


「なら、明日ここを出て、ゾフィアのいるオルベルクとかいう町に行くとするか」


 さすがに日もだいぶ傾いたこの時間からは出発できない。

 翌日に向かうことを決めると、ゾフィアの無事を確認できたこともあってか、リリィの顔は先ほどまでより明るくなっていた。

間の空いてしまった上に短い……

色々手紙の背景やら考えたりもしたんですが、うまく纏まりませんでした。

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