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101. 新たな魔物との戦闘

 またゴブリンか。

 そう思ったのだが、違う。


「獣人?」


 小柄ではあるがゴブリンよりも身体は大きく、何より顔が醜悪な鬼のものではなく、犬科のそれであった。

 ゆえに、琢郎は犬系の獣人族かと最初思ったのだが、よく見るとそれも違う。


 獣人族の姿は街中で何度か見かけることがあった。

 人間に獣耳や尻尾が生えた者、顔はほぼ獣そのものといった者。一括りに獣人といってもさまざまなタイプの者がいたが、今琢郎の視界に入っている連中はそのいずれとも異なる。


 顔が獣だけならまだしも、獣毛は全身を覆っていて、犬科の動物の骨格だけを人間のものに変えて二足歩行させているか、あるいは精巧な着ぐるみでも纏っているかのようだった。

 全身に毛が生えているとわかるのも、毛皮を纏ったリーダーらしい個体を除いて服を着ていないからであり、手には棍棒のようなものを握っている。

 冒険者の格好だとは思えないし、野盗の類でももう少しましな格好をしているだろう。


 目を凝らして琢郎が『特殊表示(ステータス)』を使うとその正体がはっきりした。


「コボルトか!」


 その声が引き金となったかのようなタイミングで、コボルトの群れは琢郎たちに向かって来る。


<風刃>(ウィンド・カッター)!」


 いつものように琢郎が風の刃を飛ばして迎え撃つが、ゴブリン相手の時と比べると的は大きくなっているが動きが速い。

 2匹ほどは斬り飛ばされて倒れたが、その間にも残りの敵が近づいてきた。

 前衛のゾフィアがいない今、数をあまり削れないまま接近戦となると、琢郎自身はまだしもリリィのフォローに回る余裕がなくなりかねない。


 が、要は近づかせなければいい。


<石壁>(ストーン・ウォール)!」


 ゾフィアがいない代わりに、琢郎は彼女の目があるところではほとんど使えなかった、風属性以外の魔法を自由に唱えられるようになっていた。

 久しぶりに使うために少し気合を入れた結果、思ったより大きな壁がコボルトたちの接近を阻む。


「ギャッ!?」


 先頭のコボルトが突如として眼前に出現した石壁に、停止が間に合わず衝突して声を上げる。


<地槍>(アース・ステーク)!」


 すかさず、琢郎は壁から水平に尖った杭を隆起させ、そのコボルトを串刺しにした。


「やっぱり、このコンボは効果的だな」


 さらに壁を乗り越えようとした別のコボルトも同じように突き殺し、琢郎は満足げな声を洩らす。これで数が減って、対処が楽になった。


「やああぁッ!」


 壁を回り込んで近づいて来ようとしたコボルトには、リリィが勢いよく槍を突き出す。

 ゴブリンより(獣)人型により近い魔物に、動きがまた鈍らないかと琢郎は考えたが杞憂であった。ゴブリン相手で慣れたせいか、リリィは躊躇することなくコボルトを攻撃していく。

 その成長が嬉しいような、寂しいような。


 琢郎もまた風の刃を放って1匹倒し、また敵の数が減る。


「ワオオオオォォ……!」


 その時、後方に留まったままだったリーダー格の毛皮を纏ったコボルトが吠えた。

 その声に応えて、琢郎たちの後方からも茂みを掻き分ける音が聞こえてくる。


「仲間を呼んだ……?」


 減らした数を補って余りある新手が、2方向から姿を見せた。


「か、囲まれちゃいました……」


 その数を見て、リリィの声には不安が滲み出している。


「……これがコボルト?」


 呟く琢郎の声にも驚きがあった。

 コボルトごとき、琢郎のイメージではゴブリンと大差ないやられザコだったのだが、少々厄介な感じだ。


「大丈夫だ。まだいくらでも手はある」


 だが、厄介ではあってもお手上げではない。

 気を取り直した琢郎は、そう言葉を接いでリリィを安心させようとする。


 実際、考えている作戦はある。

 ゾフィアのいるところでは試すことができなかったため実験はしていないが、おそらくうまくいくはずだ。

 最悪でも、<風加速>(フェア・ウィンド)を使えば逃げることはできる。


 そう考える琢郎の視線の先で、リーダー格のコボルトが纏った毛皮の下から武器を取り出す。

 人から奪った物だろうか。他のコボルトとは違い、ところどころ錆の浮いた鉄の剣を大きく掲げる。


「ゥワォッ!」


 かけ声とともにそれが振り下ろされるのを合図に、琢郎たちの周囲のコボルトたちはその包囲を一気に縮めてきた。

タイトル通り、新しい魔物・コボルトの登場です。

ゴブリンより速く、体格が大きい分だけ力も強い。そして集団を指揮するリーダーを有する。

個としては魔狼よりまだ下なんですが、書いてるうちに妙に手強く見える……

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