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番外1-3 ゾフィア=クレンゲルの独白 その3

「ほら。とりあえず、これでも飲んでゆっくりしよう」


 休憩場所に腰を下ろすと、当たり前のようにタクローはコップを取り出し、そこに元素操作で水を注いでいく。


 さすがというか何というか。

 あまり適性のない元素でも少しぐらいの操作は慣れればできるらしいが、適性ある元素に比べると同じ10の魔力を用いてもせいぜい2~4ほどしか作用せず、効率が悪いので使うことはほとんどないと別の魔法使いに以前聞いた。


 効率の悪さが気にならないほどの魔力の余裕がまだあるのか、2属性持ち(ダブル)以上か。

 一流の冒険者や国などに雇われるクラスの魔法使いの中にはたまに複数の元素に適性を持つ者がいると噂に聞いたことがあるが、あるいは――


 いや、やめておこう。

 タクローの素性は詮索しない約束になっている。

 何者かはともかく、実力は申し分ない。余計なことで機嫌を損ねて、縁をこれきりにしてしまうには惜しい相手だ。


 頭の中の推測を押し流すべく、私も自分で持ってきた水筒を取り出し喉を潤す。


 ……どうやら、タクローに変には思われなかったようだ。

 ついしばらく注視してしまっていたが、タクローはタクローでリリィの方を気遣っていたおかげでこちらにあまり意識は回っていなかったらしい。


「……それで、この後どうしようか?」


 休憩が一段落したところで、話を切り出す。


 自分の手でゴブリンを倒すことができたとはいえ、かなりリリィの顔色は悪い。

 だが最初の衝撃はこうしてもう経験したのだから、続きは日を改めた方が慣れにも繋がるだろう。


 そう思っての提案だったが、リリィは続行を望んだ。


「無理をする必要はないぞ?」


 一応、翻意も促してみたが、リリィの答えは変わらない。


「……わかった。じゃあ、これからもう少し山の奥の方へと進もう。別のゴブリンを見つけて、次は連携しての集団戦だ」


 本人が望むのなら、それもいいだろう。

 休憩を終えると、私は再びゴブリンがよくいる場所へと先導にたった。


 さすがにまた最初の場所ですぐにとはいかなかったが、3つ目の場所で別のグループを発見する。

 今度も、まだ相手はこちらに気づいてはいない。


「リリィ。やるからにはしっかりやってもらう。もちろんすぐにフォローはするが、キミが先陣を切ってもらおう」


 奇襲となる最初の一撃の役を、私はリリィに任せることを告げる。

 状況はいつも同じとはならないのでその場その場に応じたものになるが、色々な攻撃を経験させることも今日の課題の内だ。


 もちろん、危なくなればフォローはするし、そうでなくとも今度の戦闘は集団戦が基本なのだから、すぐに私たちも参加する。

 そのことも告げると、リリィは覚悟を決めて飛び出していった。


「やあああぁぁぁぁ!」


 ただし、自らを奮い立たせるためだろうかけ声のせいで、せっかくの奇襲の利も半減してしまったが。

 初撃で仕留め切れなかったリリィに、近くにいる別のオークが動く。


<風刃>(ウィンド・カッター)!」


 そこにすかさず、タクローが援護の魔法を飛ばす。前もって言っていた通り、即死はさせずに武器を持つ腕を飛ばすに留めた。

 それでも他のゴブリンを怯ませるには十分。その隙に、これ以上リリィに近寄らせないよう割って入った。


 ゴブリンの攻撃を捌いて足止めし、リリィが最初に傷を負ったゴブリンのトドメを刺す時間を稼ぐ。

 続いて戦った次のゴブリンとも、ほぼ決着がついたところを見計らい、


「すまない、リリィ! 1匹そっちへ行った!」


 あえて見逃し、次の相手をリリィに送る。


 その次は、残る1匹を私が足止めしているところに、加勢に来てもらうとしようか。

 いや、タクローの方に先に行ってもらおう。まともな武器を持っていないせいで、意外と足止めに苦戦している。

 一度など、運よく相手がなぜかバランスを崩したおかげで難を逃れたように見えていた。


  ◇


 だが、予定外の事態でそうも言っていられなくなってしまった。


「ゲギャ!? グギガァァァ……!!」


 運の悪いことに、戦闘中にまた別のゴブリンたちが来てしまった。それも、数がかなり多い。

 さすがにあの数を相手に、あえて殺さずに捌き続けるというのは厳しいものがある。

 これは、予定を変更せざるを得ない。


「ギャアッ!」


 まず手始めに、目の前のゴブリンを攻撃を受け流すだけから一転、その命を絶つ。


「仕方ない。新手は私とタクローで始末するぞ!」


 リリィには今相手しているゴブリンを仕留めたら当面身を守るのに専念するように言い、タクローには私と共に新手のゴブリンたちを倒すように指示。


「はぁッ!」


 そして、私も自ら新たに姿を見せたゴブリンたちに斬りかかった。

 剣を振るい、正面から敵を次々と斬り伏せる。


<風刃>(ウィンド・カッター)!」


 その間、横や背後に回ろうとする後続のゴブリンは、全てそこまで辿り着くこともなくタクローの魔法に倒れていった。後ろを気にせず戦えるというのは、実に助かる。

 みるみるうちにゴブリンたちはその数を減らしていった。

終わらない……

前回の切れ目が悪かったのか、残りも半分くらい書いたところで普段の倍くらいの分量になりそうだったのでやむなく再度割りました。

いい加減、話を先に進めないといけないので残りは短い間隔で更新か、あるいは次の本編との2話同時更新のどちらかになります。

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