白い毛玉
しばらくすると、
レオニス様付きの執事が部屋を訪れた。
コンコン――
「王子、
お目覚めでしょうか?」
「ああ」
「失礼いたします」
そう言って扉を開けた執事は、
私を見るなり目を丸くした。
「……おや」
「昨夜は確か、
ミスティリア王女と一夜を共にされたはずでは?」
何やら含みのある微笑みを浮かべている。
「この子うさぎが、
そのミスティリアだ」
そう言って、
レオニス様は私を抱き上げた。
「……王子」
「いくら独占したいからといって、
ミスティリア様をそのようなお姿にされるとは」
「違う!」
「俺が起きた時には既にこの姿だった」
「理由も分からない以上、
元へ戻るまで共に行動する」
「左様でございますか」
執事は一瞬だけ真顔になったあと、
すぐにいつもの穏やかな表情へ戻る。
「では朝食の準備が整っておりますので、
大広間へどうぞ」
一一
着替えを終えたレオニス様に抱かれ、
私は大広間へ向かった。
……ちなみに。
レオニス様のお洋服に合わせて、
青いリボンを付けられてしまった。
大広間へ入ると、
既に皆様が席へ着いていた。
「遅かったな、
レオニス」
アルセリオン国王が静かに言う。
「お待たせして申し訳ありません」
「ふふっ、
いいのよ」
「珍しくミスティリア王女もお寝坊だもの」
フローリア王妃が笑った、その時。
アルセリオン国王の視線が、
私へ向けられる。
「……ところで、
なんだその毛玉は」
……冷たい視線。
確かに、
朝食の席へ動物を連れてくるのはどうなのかしら……。
少し悲しくなっていた時だった。
「実は、
ミスティリアが子うさぎになってしまって……」
「「なんだと!?」」
「「ですって!?」」
国王陛下とセレフィーナ様の声が重なる。
「まぁっ……!」
フローリア王妃まで驚いていた。
「お兄様!」
「いくらミスティリア様を肌身離さず連れていたいからって、
あんまりですわ!」
「だから違う!」
「俺が起きた時には既に――」
「まさか一緒の部屋で朝を迎えたんですの!?」
「……私ですら、
まだミスティリア様とパジャマパーティーをしていないのに……!」
「ミスティリア王女へ、
フルーツの盛り合わせを用意しろ」
「熱い飲み物は駄目だ。
全て人肌まで冷ましてから出せ」
アルセリオン国王は真剣な顔でそう命じる。
……朝食の場は、
一気に騒然となったのだった。
「理由も不明のため、
元へ戻るまで共に行動します」
「お兄様だけなんてずるいですわ!」
「いつ戻るか分からないのでしょう!?」
セレフィーナ様に見つめられ、
私は小さく頷いた。
「なら日中は交代で、
ミスティリア王女を可愛が――」
「お世話しましょう!」
「ああ、
それがいいな」
「ふふっ、
素敵ですわね」
……まさか、
氷の君主と呼ばれるアルセリオン国王まで乗り気だなんて。
そうして、
夜はレオニス様と過ごすことを条件に、
日替わりで皆様と行動することが決まったのだった。




