常闇の独占欲
……酷く気分が悪い。
ミスティリアが白夜王国へ来てからというもの。
光属性の国と、
闇である俺の相性が悪いのもある。
……だが、
それだけではない。
俺の契約主は、
あまりにも無防備すぎる。
人の想いを知らないくせに、
無意識で掻き乱していく。
そんなミスティリアが今、
小僧と同じベッドで眠っているだと……?
一一
「……ノクティス?」
「今日はお庭じゃないの?」
不思議そうにこちらを見るミスティリア。
……本当に、
何も分かっていないらしい。
「ここは俺の私室だ」
「俺は今、
酷く気分が悪い」
「……なぜだか分かるか?」
ミスティリアは少し考える素振りを見せ、
首を傾げた。
「……私が長く白夜王国にいるから?」
「闇属性の貴方とは、
相性が悪いものね……」
「……違う」
思わず低い声が漏れる。
「お前は、
無防備すぎる」
「あの小僧の部屋へ行ったかと思えば、
今眠っているのはどこだ?」
愛情。
嫉妬。
執着。
……どす黒い感情が、
胸の奥で渦巻いていた。
「……っ!
私、あのあとソファで寝てしまったわ……!」
「起きないと……!」
俺は闇の霧を吐き出し、
現実で眠るミスティリアの姿を映し出してやる。
「まさか、
男と同じベッドで眠るとはな」
「……俺の気持ちが、
本当に伝わっていないのか?」
ミスティリアは、
同じベッドで眠っていることへ羞恥を見せたあと、
すぐに困惑したように俺を見た。
「……ノクティスの気持ち?」
「魂の契約をしたから、
一体になりたい……みたいな、
そういうものではないの?」
……あぁ。
こいつは、
乳母以外から愛されたことがないのか。
なら、
直接教えてやらなければ伝わらない。
俺は困惑するミスティリアを強引に抱き寄せ、
無理矢理視線を合わせた。
「愛してる」
「……どうしようもないくらいに」
ミスティリアは驚いたあと、
寂しそうに呟く。
「……愛が、
何なのか分からないの……」
……そんなこと、
とっくに知っている。
あれほど分かりやすい小僧の想いにすら、
この女は気付いていない。
……いや。
気付いていても、
信じられないのだろう。
そして、
自分自身の感情にも名前を付けられない。
「お前が欲しい」
そう言って、
俺はミスティリアへ口付けた。
柔らかい。
甘い。
……あぁ、
ずっとこうしたかった。
どれほどの時間、
唇を重ねていただろうか。
不意に、
ミスティリアが小さく俺の胸を叩く。
そこでようやく、
俺は彼女を解放した。
「……すまない」
「怖かったか?」
ミスティリアは静かに首を横へ振る。
「怖くなんてないわ……」
「……でも、
レオニス様の顔がよぎるの」
その言葉に、
胸の奥がざらつく。
「私は、
結婚のために白夜王国へ来たのに……」
「良くないことだわ」
「……嫌か?」
「嫌とか、
嫌じゃないとか、
そういうことではないの」
「結婚が決まっているのに、
こんなこと……」
……真面目な女だ。
「……俺が嫌いか?」
ミスティリアは困ったように目を伏せ、
小さく言った。
「嫌いじゃないわ」
「……むしろ、
頼りにしてるもの」
……本当に、
お前らしい答えだ。
思わず、
小さく笑みが零れる。
「これは夢だ」
「お前は、
何も悪いことはしていない」
「……それに、
あの小僧と結ばれたとしても」
「人間の寿命は短い」
「分かっているのか?」
「……国が決めた結婚だもの」
「白紙には出来ないわ」
「お前は俺のものだ」
「……だが」
「お前は、
人間として幸せにもなるべきだ」
「だから、
小僧の寿命が尽きるまで貸してやる」
「……それだけだ」
そう言って、
俺はもう一度ミスティリアへ口付けた。
……だが。
現実では、
あの小僧と同じベッドで眠っている。
そう思い出した瞬間、
また胸の奥からどす黒い感情が込み上げてきた。
……少しだけ、
お仕置きをしてやるか。




