戦火の王女
それから数日後。
白夜王国の方々は、
ルクシア城へと帰還されました。
そして――
事件は起きたのです。
レオニス王子は、
白夜王国と幻影帝国の国交安定のため、
「ミスティリア様を、
我が妃として迎えたい」
と、
国王アルセリオン様へ申し出られたのでした。
……ですが。
その言葉を聞いたアルセリオン王は、
深く恐れたのです。
“レオニスまでもが、
忌み子に魅了された”
と。
元より、
白夜王国は幻影帝国を快く思ってはおりませんでした。
ですから――
今回は、
良い口実となったのでしょう。
「……幻影帝国を焼き払え」
「忌み子を殺せ」
王命が下されると同時に、
白夜王国による侵攻は始まりました。
ある者は空より。
またある者は地上より。
幻影帝国へ攻め入ろうとしたのです。
……ですが、
それは叶いませんでした。
帝国上空を覆う、
巨大な結界。
白夜王国の攻撃は、
一切届かなかったのです。
これほどの規模の結界を維持出来る者など、
幻影帝国には一人しかおりません。
――ミスティリア様です。
あの方は、
常に帝国全土へ結界を張り続けておられたのでした。
そして、
ミスティリア様は静かに仰ったのです。
「……もし、
私が原因でこの国へ戦火が上がるのなら」
「私一人で、
白夜王国へ向かいましょう」
「私は、
誰一人傷付けません」
「国民も。
……貴方達も」
その言葉に、
誰もが息を呑みました。
疎まれ、
恐れられ、
時には刃すら向けられてきたというのに。
――何故、
そこまで人を愛せるのか。
誰にも、
分からなかったのです。




