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ドラゴンを斬った女の初恋  作者: 9iyus
第5章 旅立ち
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第6話 銀髪の女剣士リリアーナは、寒いのが苦手

「うわわわわわわわ。」


———ザリザリザリザリ


 リリアーナは、雪山の斜面を滑り落ちていた。


 足を突っ張り、剣を突き刺し、なんとかスピードを緩めようとするが、浅く積もった雪が、滑りを良くする。


「良かった。」


 王子は、崖から生えている木に引っかかっていた。止まることができず、そこに飛びつく。


 エルネンはそれを、受け止めた。


「リリー、大丈夫かい。」


「こっちのセリフです。」


 しかし、勢いが強すぎたか、重さに耐えられなかったらしい。その木は大きくしなると、二人を手放した。


———ザザザザザザッザザッ


「うわああああああ。」


 二人は抱き合ったまま、再び滑り落ちた。


 相手の頭を庇い合い、前が全く見えない。それに気がついたのは、直前だった。


 岩に雪が積もって、跳ね上がっていた。そこに向かって、猛スピードで突っ込む。


「ヒッ。」


 フワッと、自分の体が浮く感覚。それは一瞬で、後は恐怖と風、落下。


—————ボフッ


 痛くはない。視界が真っ暗だ。運良く雪の吹き溜まりに落ちたらしい。


 ボスッと遅れて音がした。エルネンも近くに落ちたようだ。


 目の前の雪を払いのけると、薄暗くなってきた空に、白いドラゴンがどこかへ飛んでいくのが見えた。


「エルネン様、無事ですか。」


「うん。」


 起き上がって、辺りを見回す。真っ白な雪景色に赤いマフラーを見つけ、慌てて引っ張り上げた。


「ぐぅ。」


 埋もれていた王子が、首を釣られて出てくる。


「マドンナ、あなたも無事だったんだね。」


 すぐ近くにいたらしい白馬は、ブルルッと鼻を鳴らして、モサモサと雪を蹴りながらこちらに来た。


 たいした怪我もないらしい。


 山の方を見上げると、青い布が巻き付いている木を何本か見つけた。


「だいぶ近道になりましたよ、エルネン様。」


 半日かけて降るところを、一瞬で滑り落ちてきたらしい。


「それは、良かった。」


 二人は、ボロボロだった。


 ビュウウと強い風が吹いた。雪は降っていないが、地吹雪で視界が悪い。


 パパンッと、空に乾いた音がした。花火だ。アリストラだろう。逸れた時の合図だった。


 日が昇ってから合流しようということらしい。


 馬にエルネンを乗せ、手綱を引き、雪をかき分けながら進んだ。


 木に結んだ布を辿る。青、赤、青、赤——


 魔法禁止のドラゴン。あの時は長い間探し回ったのに、こうも簡単に姿を現すとは。


 ドラゴンは、その魔法が必要となる者の前に現れるのだという。


 迷信だと思っていたが、明らかにエルネンを狙っていたことが、リリアーナには気掛かりだった。


 戦場に、他の魔法使いでもいるのだろうか?


「リリー、かわいい山小屋だね。」


「ボーッとしていて、通り過ぎるところでした。」


 小さな山小屋は、あの時と変わりなくあった。


 幼い私たちはここで、師匠の帰りを待ち続けた。


「あまりいい思い出はないのですが。」

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