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報仇の剣 -萬軍八極編-  作者: 熊谷 柿
第6章 信星
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取引の賊徒

登場人物

韋震いしん…………賊徒のような身形みなりの若者。

尊盧そんろ…………あやかし。黄色い瞳の武者。蚩尤しゆうに仕える九黎きゅうれいのひとり。

「な、何だ、何なんだ……? 奴ら、普通じゃねえ……」

 木立の陰から草叢くさむらに紛れるようにして、異能の者たちの争いに眼をまるくしていたのは、賊徒のような身形みなりの若者だった。

「こりゃあ、関わらねえ方が身のためってもんだ」

 草叢に伏した若者が、身を起こそうとしたときだった。

「こんなところで何をしている?」

「――――⁉」

 はっとして振り返った若者は、驚きの顔をさらすと尻餅を突いて後退あとずさった。

 奇妙にも黄色い瞳だった。浅黒い肌の身に豪奢なかぶとよろいまとい、ほこを引っげた武者姿の尊盧そんろだった。

 尊盧は、黄の瞳で賊徒の若者を凝視すると、その面貌めんぼうに不気味な笑みを浮かせた。

「あの一行から、何か金目の物でもくすねようと様子をうかがっていたのであろう?」

「…………」

 賊徒のような若者は、尊盧の心中を量るように黄色い瞳を見詰め返した。

「貴様のような野鼠、殺すことなど造作もないが、良い眼付きをしている。まま、殺すには惜しいな。貴様、名は?」

 矛の穂先を若者の顔に突き付けると、尊盧はただした。

 大きく眼を見開いた若者は、生唾を飲み込んでから名乗った。

「い、韋震いしん……」

「良かろう、韋震。あの女を一行から連れ去り、私の許まで連れて来い。すれば、この尊盧が、我が軍の兵に取り立ててやる」

 その日暮らしのような韋震にとって、悪い話ではなかった。奇妙な一行が対手あいてということに躊躇ちゅうちょした。しかし、女ひとりであれば何とかなるだろうと考え直した。

「……わかった」

 尊盧を見詰め返したまま、韋震は応じた。

 矛の切っ先が韋震の眼前から離れた。不気味な笑みを濃くして尊盧は告げた。

「私は、常にお前を見ている。決して約束を違うでないぞ、韋震」

「…………」

 韋震が力強い頷首がんしゅを返すと、尊盧の姿は風に紛れるように消えていた。

 それからというもの――。

 三人の従者を引き連れた、若い女方士の一行に見える。

 韋震は、介象の一行を付け狙った。細心の注意を払って尾行していた。普段は賊徒の真似事をしている。少々の洞察力も身に付いていた。尊盧と遭遇する前から一行の様子は窺っている。数こそ少ないが、女をさらう機会は確かにあった。

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