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報仇の剣 -萬軍八極編-  作者: 熊谷 柿
第5章 螢惑星
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決意新たに

登場人物

介象かいしょう…………方士。干将かんしょう莫邪ばくや眉間尺みけんしゃくの三剣をびる。

元緒げんしょ…………方士。介象の師であり、初代の介象。

丘坤きゅうこん…………美質な弓の名手。あやかしの狻猊さんげいしもべに持つ。萬軍八極ばんぐんはっきょくのひとり。

巩岱きょうたい…………細作しのびのもの。介象に仕える。

欧陽坎おうようかん…………ほこ手練者てだれ。妖しの短狐たんこを僕に持つ。萬軍八極のひとり。

藺離りんり…………槍の手練者。妖しの火鼠かそを僕に持つ。萬軍八極のひとり。


蚩尤しゆう…………邪神。

季平きへい…………国の司徒しと。三公のひとり。三桓氏さんかんしと呼ばれる。

叔孫豹じょそんひょう…………魯国の司馬しば。三公のひとり。三桓氏と呼ばれる。

孟献もうけん…………魯国の司空しくう。三公のひとり。三桓氏と呼ばれる。

陽虎ようこ…………三公に仕える魯国の若き重臣。

尊盧そんろ…………妖し。黄色い瞳の武者。蚩尤に仕える九黎きゅうれいのひとり。

赫胥かくしょ…………妖し。短槍の手練者。蚩尤に仕える九黎のひとり。

風沙ふうさ…………妖し。美貌の持ち主。蚩尤に仕える九黎のひとり。

蒼頡そうけつ…………妖し。剣の手練者。蚩尤に仕える九黎のひとり。

軒轅けんえん…………妖し。老爺ろうやの姿。蚩尤に仕える九黎のひとり。

裴巽はいそん…………魯国の若き将校。妖しの飛廉ひれんを僕に持つ。

太皞たいこう…………妖し。老婆の姿。蚩尤に仕える九黎のひとり。


夸父こほ…………巨人の妖し。性質たちは狂暴。隻眼せきがんで緑の皮膚。

計蒙けいもう…………龍頭人身の妖し。剣の手練者。

蚩尤しゆうが復活している」

 藺離りんり欧陽坎おうようかんは、束の間、呆然ぼうぜんとなった。

「やはり、あの刺青いれずみ野郎が云っていたことは、本当だったのか……」

 欧陽坎は、地に眼を泳がせた。祖父の顔が脳裏に浮かんだ。萬軍八極ばんぐんはっきょくの血が、介象かいしょうに会わせてくれたような気がした。

「さては、復活の時は先日の地震ないか……? 我が人生は、蚩尤を鎮撫ちんぶするためのものであったか……」

 藺離は、眉間にしわを寄せて瞑目めいもくした。浮かんできたのは、父と兄、弟たちだった。宿命に翻弄ほんろうされているような気がした。

「藺離、欧陽坎……」

 介象は、良く通る声音こわねでその名を呼んだ。

 二人は、はっと介象を見上げた。冴えた眼差まなざしだった。

「俺には、お前たちが必要だ。萬軍八極がそろわねば、再び蚩尤を封印することはできまい。蚩尤を野放しにしては、世は地獄と化す。それを阻止するためにも、俺に力を貸してくれ」

 介象は、丁重に頭を下げた。

「なっ――」

 藺離と欧陽坎は、思わず眼をいた。萬軍八極、その主たる介象が頭を垂れて懇願したのである。その態度に、藺離と欧陽坎はたちまち胸を打たれた。

「そんな真似は止めてくれ、介象さま」

 さっと立って胸を張ると、虎髭とらひげを逆立てるようにして欧陽坎は云い放った。

「生まれる前から、俺の主は介象さまと決まってらあ。決して裏切るようなことはねえ。蚩尤って化け物と戦うのが宿命ってんなら、俺は介象さまのために全力で戦うぜ!」

「当然だ」

 欧陽坎に続いて立ち上がると、長髯ちょうぜんを風になびかせながら藺離は告げた。

「再び介象さまと共に戦う萬軍八極として、先祖が私を選んだのだと信じよう。我が身の置きどころは介象さまの側。介象さまのために尽力することをお誓い申そう」

 藺離と欧陽坎は、そろって介象に拱手きょうしゅしてみせた。

「ほう。三番目の徒弟とてい藺瑩りんえいと、六番目の徒弟、欧陽洪おうようこうの子孫たちか。い。立派なもんじゃ」

 藺離と欧陽坎は、介象の側に立つ美質に眼を向けた。その肩には、奇妙な亀が乗っていた。

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