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報仇の剣 -萬軍八極編-  作者: 熊谷 柿
第5章 螢惑星
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九死に一生

登場人物

蚩尤しゆう…………邪神。

季平きへい…………国の司徒しと。三公のひとり。三桓氏さんかんしと呼ばれる。

叔孫豹じょそんひょう…………魯国の司馬しば。三公のひとり。三桓氏と呼ばれる。

孟献もうけん…………魯国の司空しくう。三公のひとり。三桓氏と呼ばれる。

陽虎ようこ…………三公に仕える魯国の若き重臣。

尊盧そんろ…………あやかし。黄色い瞳の武者。蚩尤に仕える九黎きゅうれいのひとり。

赫胥かくしょ…………妖し。短槍の手練者てだれ。蚩尤に仕える九黎のひとり。

風沙ふうさ…………妖し。美貌の持ち主。蚩尤に仕える九黎のひとり。

蒼頡そうけつ…………妖し。剣の手練者。蚩尤に仕える九黎のひとり。

軒轅けんえん…………妖し。蚩尤に仕える九黎のひとり。

裴巽はいそん…………魯国の若き将校。妖しの飛廉ひれんしもべに持つ。


夸父こほ…………巨人の妖し。性質たちは狂暴。隻眼せきがんで緑の皮膚。

「何と愚かな……。内廷にまで民草を招き入れ、徴兵検査でもしていると云うのか……?」

 曲阜きょくふの宮廷は、式典などをり行うための外廷の中に、君主の生活空間である臥室がしつや応接室、書斎などが設けられている内廷に区分けされていた。その内廷に民草を招き入れるなど、前代未聞のことだったのである。

 ぷりぷりとした叔孫豹じょそんひょうが、目的の応接間に向かって大きな通路の角を曲がった刹那せつなだった。

「――――⁉」

 叔孫豹と陽虎ようこは、たちまち立ちすくんだ。

 無理もない。鉢合はちあわせたのは、一体の夸父こほだった。身の丈十六尺(約四・八m)から見下ろす大きな隻眼せきがんが、叔孫豹と陽虎をにらみ付けている。夸父は、野太い雄叫おたけびを上げ、手にした棍棒こんぼうを振り下ろそうとした、その時だった。

 ズバッ――。

 夸父の動きが止まった。足許の床に斬撃が走っている。それは鋭い爪痕つめあとのようだった。

「――――⁉」

 たちまち身が強張こわばった叔孫豹と陽虎は、斬撃が飛んで来た方へその眼を向けた。

 深紅しんく具足ぐそくで全身を包んだ将軍のような出で立ちだった。手にはげきを引っげている。

 その雄姿に、陽虎は一縷いちるの望みを見た。

「は、裴巽はいそん――‼」

 不敵に顔を歪め、陽虎に応じた裴巽は、戟の刃を夸父に向けると叱り飛ばした。

「この者らは国の重臣。お前がもてあそぶに相応ふさわしい相手ではない。顔を覚えたら早々にここを立ち去り、己が役目に戻るが良い!」

 即座にしゅんとなった夸父は、肩を落として叔孫豹と陽虎の脇を素通りして往った。

「宮廷は、既に得体の知れない者どもの巣窟となっている。宮廷内とは云え、あまり往来せぬ方が身のためだぞ、陽虎」

 裴巽は、陽虎に笑みを向けると叔孫豹の前で拝跪はいきした。

「う、うむ。裴巽よ、お主のお陰で九死に一生を得た心地だわい」

「化け物から受けた傷は、もう良いのか?」

 佇立ちょりつした裴巽に、陽虎はあきれ顔で尋ねた。

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