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報仇の剣 -萬軍八極編-  作者: 熊谷 柿
第4章 忠星
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魁、義兄弟

祁盈きえい…………周王朝の血筋をしん国の重臣。

楊食我ようしょくが…………周王朝の血筋を汲む晋国の重臣。

欧陽坎おうようかん…………矛の手練者てだれあやかしの短狐たんこしもべに持つ。萬軍八極ばんぐんはっきょくのひとり。

藺離りんり…………槍の手練者。妖しの火鼠かそを僕に持つ。萬軍八極のひとり。

じい…………欧陽坎の祖父。

「……兄者と……呼んでも良いのか……?」

 欧陽坎おうようかんは、照れ臭そうに云った。

勿論もちろんだ、欧陽坎。この一杯の盃に誓おう。如何いかなる時も、如何なることが起ころうとも、この一杯を飲み干したときから、私たちはいつまでも兄弟だ」

「……応‼」

 藺離りんりと欧陽坎は、意気投合すると、それぞれ手許の盃を呑み干した。

「兄者‼」

「うむ、弟よ‼」

 二人は、そろって呵呵かかと大笑した。

 明くる日――。

 藺離と欧陽坎は、再びよくの郊外にある酒店の前で落ち合うと、肩を並べて旅路に着いた。偉丈夫いじょうぶが二人並んで歩く姿に、擦れ違う人々はどれも振り返った。

介象かいしょうさまは元来、漆黒の襤褸ぼろまとっておられる。先日、介象さまと思しき御仁ごじんを見たという者と話ができた。どうやら魯国ろこくに向かっていたらしい」

 二人は、本当の兄弟のように、他愛もない談笑をしながら魯国を目指した。何やらたのしげな二人に疲れは見えなかった。

 五里ほど歩いたときだった。束の間、地鳴りがした。その地鳴りが揺れに変わった。

「――――⁉」

 揺れは次第に大きくなると、立っているのも難しいほどの巨大な地震ないとなった。

「な、何だ、これは――⁉」

 藺離と欧陽坎は、互いに眼をき顔を見合わせた。

 巨大な揺れに紛れ、微かな妖気が地より涌いているのを感じ取った。

 長い揺れは徐々に治まると、再び地鳴りとなって元の静けさを取り戻した。

 義兄弟は、互いに驚愕きょうがくの表情で向き合ったままだった。

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