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報仇の剣 -萬軍八極編-  作者: 熊谷 柿
第4章 忠星
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粋な申し出

祁盈きえい…………周王朝の血筋をしん国の重臣。

楊食我ようしょくが…………周王朝の血筋を汲む晋国の重臣。

欧陽坎おうようかん…………矛の手練者てだれあやかしの短狐たんこしもべに持つ。萬軍八極ばんぐんはっきょくのひとり。

藺離りんり…………槍の手練者。妖しの火鼠かそを僕に持つ。萬軍八極のひとり。

じい…………欧陽坎の祖父。

 欧陽坎おうようかんは、むらを後にした。往く宛てはなかった。しんの国内を彷徨さまよい歩いた。旅の途次で、重量感のあるほこを自在にれるよう、自分なりに技を磨いた。短狐たんこも召喚すると、技の鍛錬を繰り返した。

 あるとき、欧陽坎は五十ほどの賊徒ぞくとをひとりで討伐した。その武勇を晋の重臣の祁盈きえいに見込まれ食客となった。齢二十三となっていた。


「まあ、そんなとこだ」

 欧陽坎は、盃をあおるようにして酒を咽喉のどに流し込んだ。

 その眼前で腕組みのまま、ふむふむと欧陽坎の話を聞いていたのは、藺離りんりだった。聞けば、弟の藺翼りんよくと同じ歳だった。風貌骨格ふうぼうこっかくもどことなく似ている。藺離は、欧陽坎の話を聞くに従い親しみが湧いた。

「なあ、欧陽坎どの」

「どうした?」

「どうもお主を見ていると、実の弟のように思えてならん。一層いっそのこと、私と義兄弟になる気はないか?」

 藺離は、欧陽坎のいた盃に酒を注ぎ入れた。

「ぎ、義兄弟――⁉」

「そうだ」

 藺離は、盃を口に運ぶと続けた。

「私たちは、共に萬軍八極ばんぐんはっきょく同士。二人で介象かいしょうさまを探すというのはどうか? 介象さまであれば、きっと私たちへ指針を示して下さるだろう」

 欧陽坎は、藺離を見詰めたまま、酒を一口ごくりと呑んだ。何ら目標のなかった欧陽坎にしてみれば、興味深い誘いだった。このまま、祁盈の食客をしていても、いいように使われるのが落ちだった。

 それよりも、兄弟のいない欧陽坎にとって、藺離と義兄弟になる話の方が魅力的に聞こえた。対面している藺離は、武も事乍ことながら、明察で義のある人物に見えた。

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