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報仇の剣 -萬軍八極編-  作者: 熊谷 柿
第4章 忠星
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祖父の自慢

祁盈きえい…………周王朝の血筋をしん国の重臣。

楊食我ようしょくが…………周王朝の血筋を汲む晋国の重臣。

欧陽坎おうようかん…………矛の手練者てだれあやかしの短狐たんこしもべに持つ。萬軍八極ばんぐんはっきょくのひとり。

藺離りんり…………槍の手練者。妖しの火鼠かそを僕に持つ。萬軍八極のひとり。

じい…………欧陽坎の祖父。

「俺には、不可思議な力が宿ってしまった……」

わしじいさまと一緒じゃな」

「…………」

 欧陽坎おうようかんは、寂しそうな眼差まなざしで右手首を見遣みやった。八芒星はちぼうせいの痣が、また少し濃くなったように見えた。

 それ以来、欧陽坎の父が営む店には、誰人だれも寄り付かなくなった。

「あそこの肉を食うと化け物になる」

 ちまたには、瞬く間に噂が広まり、窮地を救ったはずの欧陽坎とその家族は、むらから爪弾つまはじきにされた。

 父親は、酒浸りになった。

 ほこを担ぎ、旅装をした欧陽坎が、店の裏で鳥の血抜きをしている祖父の許に身を運んだ。

「爺……」

「何じゃ?」

「この邑を出ることにした」

「…………」

 祖父は、手を血塗ちまみれにして作業に没頭していた。

「俺がいれば、おっ父にも爺にも迷惑を掛けることになる」

「…………」

「おっ父はあんな塩梅あんばいだから、黙って出て往くぜ。長生きしろよ、爺」

 無理に声を弾ませ、欧陽坎は告げた。きびすを返して、家から出ようとした時だった。

「坎や」

「あん?」

 欧陽坎は、振り返った。

 作業を中断した祖父が身を起こすと、曲がった腰で欧陽坎を見詰めた。

「お前は、辛抱強い。誰人に対しても表裏のないわしの自慢の孫じゃ。儂の爺さんのように、己が信じた道を往ってみい。腹が減ったらいつでも帰ってくりゃあえ」

 祖父は、破顔して見せた。

 欧陽坎は、胸が熱くなるのを覚えた。あふれ出そうなものを堪えるように再び前を向いた。

「わかってるよ」

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