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報仇の剣 -萬軍八極編-  作者: 熊谷 柿
第4章 忠星
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遭遇の猛獣

祁盈きえい…………周王朝の血筋をしん国の重臣。

楊食我ようしょくが…………周王朝の血筋を汲む晋国の重臣。

欧陽坎おうようかん…………矛の手練者てだれあやかしの短狐たんこしもべに持つ。

藺離りんり…………槍の手練者。妖しの火鼠かそを僕に持つ。萬軍八極ばんぐんはっきょくのひとり。

じい…………欧陽坎の祖父。

 そのしらせを受けた欧陽坎おうようかんは、ほこを手に熊が現れたところへ駈け付けた。それに遅れて、祖父も欧陽坎の後を追った。

 人を恐れていない。二足で立った熊は、優に八尺(約百九〇㎝)を超えている。近寄る人に鋭い爪を振り下ろした。足許には、その爪牙の餌食えじきとなった欧陽坎の仲間のひとりが倒れ伏している。息はしていないようだった。巨大な熊は、狩った獲物を奪われることを拒んでいるように見えた。

 駈け付けた欧陽坎は、その眼を見張った。

 見たこともないほどの巨大な熊だった。倒れた仲間をたすけようにも、あまりの恐ろしさに、皆、足がすくんでいる。

「でかい上にまるで人を恐れとらん。あれは、人を喰っておるのう……」

 遅れて駈け付けた欧陽坎の祖父が、息を切らせて眉をひそめた。

「人の味を知ってしまったな。山に追い返しても、また里に下りて来るじゃろう」

 熊を睥睨へいげいした欧陽坎は、矛の切っ先を向けた。少しずつにじり寄ると、ふと合点がてんがいった。

「山から帰らなかった奴らは、此奴こやつ仕業しわざだというのか、じい……?」

「恐らくな」

 刹那せつな――。

 遠吠えを上げると、両手をかざした熊が二本脚で立った。

「――――⁉」

 欧陽坎を優に超える巨大さだった。

 矛を身構えた欧陽坎に、熊の爪牙が振り下ろされた。

 欧陽坎は、簡単に吹き飛ばされた。爪でえぐられた胸から血が噴き出している。

「坎――⁉」

 祖父の声が響くのにも構わず、狙いを定めたように、巨熊は欧陽坎に迫った。

 即座に立ち上がった欧陽坎は、環眼かんがんを引きくと熊の頭を斬って突いた。

 怒髪天どはつてんくような熊が、再び仁王立った。

 かさず欧陽坎は、力任せに袈裟斬けさぎりの一閃を放った。感触はあった。

 だが――。

 何事もなかったように、熊は欧陽坎に襲い掛かった。

「――――⁉」

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