披露の能力
祁盈…………周王朝の血筋を汲む晋国の重臣。
楊食我…………周王朝の血筋を汲む晋国の重臣。
欧陽坎…………矛の手練者。妖しの短狐を僕に持つ。
藺離…………槍の手練者。妖しの火鼠を僕に持つ。萬軍八極のひとり。
爺…………欧陽坎の祖父。
「お前……俺の僕になっちまったのか……?」
欧陽坎は掌を差し出すと、ちょこまかと駈けた短狐がその上に二本脚で乗った。円らな瞳で欧陽坎を見詰め返している。よく見れば、可愛げがあった。
短狐が徐に振り返って背を見せた。
「――――⁉」
欧陽坎の躰から、何かが湧いてくるようだった。
すると――。
小川から拳大ほどの水が幾つも宙に浮き出た。その水の玉は、不規則に宙を飛び回ると、眼にも留まらぬ勢いとなって辺りの木々に当たった。
バキバキッ、バンッ――。
その水の玉は、けたたましい音と共に木々の幹へ穴を開けた。
「――――⁉」
欧陽坎の眼前に、水の玉がひとつ浮遊している。欧陽坎は、念じた。水の玉がゆっくりと自在に動いた。
怒涛の勢いで木立に走らせた。けたたましい音が響いた。めきめきと音を立て、その木は倒れた。
「…………」
手の上の短狐が、矛に入るようにすっと消えた。
小川の潺が耳に心地よかった。欧陽坎は、唯、呆然と立ち尽くすばかりだった。右の手首の内側には、薄っすらと八芒星が浮いていた。
同じ頃、別の山に入っていた欧陽坎の仲間がひとりいた。その若者が邑に帰ってくることはなかった。
季節は、秋に入ろうとしていた。
雨の降る日が長く続くと、晴れた日にそれは起きた。
体軀は、成人の大人の二倍ほどに見えた。里に現れたのは、一頭の巨大な熊だった。
田畑を荒らすだけではなく、平然と民家に侵入して人を襲った。
邑の者は、難から逃れるよう熊を遠ざけたが、欧陽坎の仲間たちは、匕首を片手に立ち向かった。




