主従の会合
祁盈…………周王朝の血筋を汲む晋国の重臣。
楊食我…………周王朝の血筋を汲む晋国の重臣。
欧陽坎…………矛の手練者。妖しの短狐を僕に持つ。
藺離…………槍の手練者。妖しの火鼠を僕に持つ。萬軍八極のひとり。
爺…………欧陽坎の祖父。
欧陽坎は、聞いたこともない生き物の名称に首を傾げた。
「欧陽家に憑り付いた妖しじゃよ。かつて、儂の爺さんが自在に操ったと聞いておる。ほれ、お前がこの前、納屋から連れ出したであろうが」
「――――⁉」
欧陽坎は、眼を剥いて息を飲んだ。
「お、俺が連れ出した……? 何を云ってるんだ、爺?」
祖父は、作業を続けながら聞いた話を思い出すようにして語った。
「お前に憑いてしまったようじゃな。だが、心配するな。悪さはせん。爺さんが云っておった。己の中に霊気を感じよ――とな。そうすれば、憑いた妖しも自ずと従順となる」
「…………」
呆気に取られた欧陽坎は、何も云い返せなかった。躰からは疲れが取れていなかったが、その足で近くの山へ向かった。得物は、柄が紺の矛だった。連日見る夢が頭から離れなかった。
山に入ると、小川の潺が聞こえた。よく仲間と水分を補給するために立ち寄る小川だった。
欧陽坎は、小川から手で水を汲み取ると口に含んだ。佇立して一度深呼吸すると、夢に現れる妖し、短狐を思い浮かべた。
瞬間、躰に怖気が走った。
「――――⁉」
欧陽坎は、眼に映ったものに驚愕した。
左の肩に短狐が乗っている。嬉しそうに欧陽坎の首元を駈け回ると、ぴょんと飛び降り、円らな瞳で欧陽坎と対峙した。
「わっ!」
怯んだ欧陽坎は、矛先を短狐に向けた。
短狐は、それにも構わず向けられた矛を駈け上がると、戯れるように欧陽坎の躰中を駈け回っている。
「なっ⁉ 離れろ! 此奴、離れろ――‼」
欧陽坎は、躰の上を駈け回る短狐を振り落そうとしたが、欧陽坎を弄ぶような短狐は、その頭上にちょこんと乗った。
諦めたように欧陽坎の動きが止まった。




