生業の狩り
祁盈…………周王朝の血筋を汲む晋国の重臣。
楊食我…………周王朝の血筋を汲む晋国の重臣。
欧陽坎…………矛の手練者。妖しの短狐を僕に持つ。
藺離…………槍の手練者。妖しの火鼠を僕に持つ。萬軍八極のひとり。
爺…………欧陽坎の祖父。
困り果てた欧陽坎を招いたのは、祖父だった。祖父は、欧陽坎から獲物の雉と野兎を受け取ると、店の裏で血抜きの処理を施した。
「ようやったが、これほどの量では、儂らの晩飯にしかならんな」
欧陽坎は、ちらと店の中で肉を捌く父親を見遣った。
「もっと狩れば、その肉も売り物になるのか?」
普段から欧陽坎は、不愛想な父の興味を惹く手立てを考えあぐねていた。
「なる。鹿や猪を仕留められればもっと良いが、お前にはまだ無理じゃろ」
何気ない祖父の返答に、欧陽坎は笑みを晒すと勇んだ。
それから、欧陽坎は来る日も来る日も近くの山に入り、獲物を追い求めた。
収穫は、野兎一羽の日もあったが、手ぶらで帰る日はない。野兎を五羽仕留める日もあれば、雉と野兎が三羽ずつの日もあった。
「欧陽坎の奴、凄えや」
毎日、棒に獲物をぶら下げ、堂々と持ち帰る欧陽坎に、邑の童子たちは憧れた。
「俺も付いて往って良いか?」
ある日、欧陽坎に同年代の男児が訊いてきた。
兄弟がいない欧陽坎は、悪い気がしなかった。
「ああ。良いぜ」
狩った獲物の半分を分け与えた。次の日になると、同行したいという男児が増えた。日が経つにつれ、欧陽坎と行動を共にする童子が増え、遂には十人ほどに達した。
仲間が増えるに従って、欧陽坎は狩った獲物を持って帰ることが減っていった。収穫の少ない日は、新入りの童子から順に獲物を持って帰らせたからだった。
「流石は欧陽坎、気風が良いな」
「そんなことねえだろ。皆で捕まえたんだ。分け前は、順番だ」
欧陽坎は、童子たちに罠の仕掛け方を教えた。
すると、複数の組に分かれ、獲物を狩ることができるようになった。大きな獲物も、追う者と待ち構える者に分かれ、集団で狩る方法が身に付いた。四方の山々に罠を仕掛け、日ごとに獲物を追う山を変えていた。
欧陽坎が十五を数えた頃だった。
追い立てた獲物は鹿だった。
「其方に向かったぞ、欧陽坎!」




