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報仇の剣 -萬軍八極編-  作者: 熊谷 柿
第4章 忠星
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胸襟の長髯

祁盈きえい…………周王朝の血筋をしん国の重臣。

楊食我ようしょくが…………周王朝の血筋を汲む晋国の重臣。

欧陽坎おうようかん…………矛の手練者てだれあやかしの短狐たんこしもべに持つ。

藺離りんり…………槍の手練者。妖しの火鼠かそを僕に持つ。萬軍八極ばんぐんはっきょくのひとり。

「おっ! お前、話がわかるじゃねえか! もしかして、存外良い奴なのか?」

「どうだろうな?」

 藺離りんりは、浮足立ったような欧陽坎おうようかんを伴い、雑木林を引き返した。

 二人が後にした雑木林は、何か得体の知れない災害でも起きたかのような有り様だった。


「かつて、蚩尤しゆうという邪神が世を覆そうとしたことがあった……」

 二人の偉丈夫いじょうぶが対面で座している。

 間に挟んだ卓上には、焼いた豚肉の塊と、野菜や肉を混ぜてべいに包んで蒸したもの、そして、酒甕さかがめが置かれている。

 よくの郊外にある閑散とした酒店に藺離と欧陽坎の姿は在った。

 藺離と欧陽坎は、二人とも吞みっぷりが良かった。対手の盃から酒が尽きる前に、軽々と酒甕を持ち上げ互いに酌をしている。あっという間に酒甕は空となり、二つ目の酒甕に手を付け始めていた。

「蚩尤……?」

 眼を充血させた欧陽坎は、盃を口に運ぶのも忘れ、藺離の話に食い入った。

「ああ。それを討伐したのが介象かいしょうさまだ。そして、徒弟とてい萬軍八極ばんぐんはっきょく。つまり、私とお主の先祖ということになる」

「…………」

 合点がてんがいかないような欧陽坎は、頭をきながら藺離に尋ねた。

「どうして俺の先祖が、その萬軍八極だと云い切れる?」

「これだ」

 藺離は、微笑を湛えると黒々とした八芒星はちぼうせいの痣を見せた。

「萬軍八極の子孫には、代々右の手首の内側にこの八芒星の痣が浮き出る。私の父親にもあったが、父親の痣が薄くなり始めると、私に浮き出てきた。お主の親族にも、この痣がある者がいたはずだ、欧陽坎どの。覚えはないか?」

 欧陽坎は、眼を泳がせながら過去を振り返った。

「そう云やあ、じいに同じような痣があったような……」

 ほほに赤みを帯びた藺離は、得意げになって長髯ちょうぜんしごいた。

「それに、萬軍八極は霊気をる異能を備え、代々一体のあやかしをしもべに従えている」

 欧陽坎は、ぐいっと酒を口に含んだ。

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