休戦の龍虎
祁盈…………周王朝の血筋を汲む晋国の重臣。
楊食我…………周王朝の血筋を汲む晋国の重臣。
欧陽坎…………矛の手練者。妖しの短狐を僕に持つ。
藺離…………槍の手練者。妖しの火鼠を僕に持つ。萬軍八極のひとり。
「間違いなく、痣は八芒星。私もお主も、萬軍八極の末裔……」
「ば、萬軍八極……?」
欧陽坎は、眼を泳がせた。
「欧陽坎よ、私たちは紛れもない同志だ。八芒星の痣だけではない。僕の妖しもそれを裏付けている」
藺離の背に隠れていたような火鼠が、肩の上にひょいと現れた。
「同志だと……? し、僕の妖し……?」
「ああ。お前も連れているだろう。先ほど、青い獺のような妖しが見えた」
「これのことだな」
欧陽坎は霊気を繰ると、首に巻き付いたような青い獺のような生き物が姿を現した。欧陽坎の肩を右往左往すると、右肩にちょこんと二本脚で立った。
「短狐と云う。俺の相棒だ」
欧陽坎の虎髭面に、満面の笑みが浮いた。
藺離は、その笑みにどこか懐かしさを覚えた。笑みといい躰付きといい、弟の藺翼を彷彿とさせた。
「欧陽坎どのよ、私たちが争う所以はない。宿命に従い、来るべきときに備え、介象さまを探し出さねばならぬ」
束の間、欧陽坎はきょとんとした。
「お、おいおい、藺離よ、お前が何を云っているのか全くわからねえ。一体、何がどうしたって?」
欧陽坎の様子に、藺離は愕然とした。欧陽家には、萬軍八極の詳細が伝承されていないようだった。困り果てた藺離は、長髯を扱きながら暫し考え込んだ。
「おい、藺離、どうした? 腹でも痛えのか?」
口を噤んだ藺離に、欧陽坎が心配げな面持ちとなってその身を案じ始めた時だった。
はっと閃いた藺離は、ひとつ提案した。
「酒は好きか、欧陽坎どの?」
「あん?」
一度、眉宇を顰めた欧陽坎の顔が、忽ち破顔となった。
「この世で一番好きなものと云えば酒よ。それも、無料で呑める酒は格別ってもんだ」
「よし。一時休戦と往こう。代金は私が持つ。少し語り合おうではないか」




