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報仇の剣 -萬軍八極編-  作者: 熊谷 柿
第4章 忠星
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休戦の龍虎

祁盈きえい…………周王朝の血筋をしん国の重臣。

楊食我ようしょくが…………周王朝の血筋を汲む晋国の重臣。

欧陽坎おうようかん…………矛の手練者てだれあやかしの短狐たんこしもべに持つ。

藺離りんり…………槍の手練者。妖しの火鼠かそを僕に持つ。萬軍八極ばんぐんはっきょくのひとり。

「間違いなく、痣は八芒星はちぼうせい。私もお主も、萬軍八極ばんぐんはっきょく末裔まつえい……」

「ば、萬軍八極……?」

 欧陽坎おうようかんは、眼を泳がせた。

「欧陽坎よ、私たちは紛れもない同志だ。八芒星の痣だけではない。しもべあやかしもそれを裏付けている」

 藺離りんりの背に隠れていたような火鼠かそが、肩の上にひょいと現れた。

「同志だと……? し、僕の妖し……?」

「ああ。お前も連れているだろう。先ほど、青いかわうそのような妖しが見えた」

「これのことだな」

 欧陽坎は霊気をると、首に巻き付いたような青い獺のような生き物が姿を現した。欧陽坎の肩を右往左往すると、右肩にちょこんと二本脚で立った。

短狐たんこと云う。俺の相棒だ」

 欧陽坎の虎髭面とらひげづらに、満面の笑みが浮いた。

 藺離は、その笑みにどこかなつかしさを覚えた。笑みといい躰付からだつきといい、弟の藺翼りんよく彷彿ほうふつとさせた。

「欧陽坎どのよ、私たちが争う所以ゆえんはない。宿命に従い、きたるべきときに備え、介象かいしょうさまを探し出さねばならぬ」

 束の間、欧陽坎はきょとんとした。

「お、おいおい、藺離よ、お前が何を云っているのか全くわからねえ。一体、何がどうしたって?」

 欧陽坎の様子に、藺離は愕然がくぜんとした。欧陽家には、萬軍八極の詳細が伝承されていないようだった。困り果てた藺離は、長髯ちょうぜんしごきながらしばし考え込んだ。

「おい、藺離、どうした? 腹でも痛えのか?」

 口をつぐんだ藺離に、欧陽坎が心配げな面持ちとなってその身を案じ始めた時だった。

 はっとひらめいた藺離は、ひとつ提案した。

「酒は好きか、欧陽坎どの?」

「あん?」

 一度、眉宇びうひそめた欧陽坎のかんばせが、たちまち破顔となった。

「この世で一番好きなものと云えば酒よ。それも、無料ただで呑める酒は格別ってもんだ」

「よし。一時休戦と往こう。代金は私が持つ。少し語り合おうではないか」

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