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報仇の剣 -萬軍八極編-  作者: 熊谷 柿
第4章 忠星
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火の猛反撃

祁盈きえい…………周王朝の血筋をしん国の重臣。

楊食我ようしょくが…………周王朝の血筋を汲む晋国の重臣。

欧陽坎おうようかん…………矛の手練者てだれあやかしの短狐たんこしもべに持つ。

藺離りんり…………槍の手練者。妖しの火鼠かそを僕に持つ。萬軍八極ばんぐんはっきょくのひとり。

 藺離りんりは、己と同じような異能の持ち主に違和感を抱いた。不敵な笑みを浮かべたのは、藺離の番だった。霊気をると、ふっと肩に現れたのは、あやかしの火鼠かそだった。続けて、藺離の背後に浮き出て上空へ走ったのは、三つの火の玉だった。人の頭ほどの大きさだった。

「な、何だ――⁉」

 上空に走った玉灼ぎょくしゃくに気を取られた欧陽坎おうようかんすきを突き、藺離は後方へ身をひるがえした。

「むっ?」

 欧陽坎は、藺離の次なる攻撃に備えるように身構えた。

「こちらに気を取られて良いのか? このままだと玉灼が頭上から降り落ち、丸焦まるこげになるぞ」

 はっとした欧陽坎は、上空にほこで弧を描くようにすると、厚い水の層が傘のように頭上を覆った。

 それに玉灼が三つ落ちた。

 ジュワッ――と音を立て、たちどころに辺りを覆うような濛濛もうもうとした水蒸気が発生すると、欧陽坎が作り出した厚い水の層も、藺離が放った玉灼も消えていた。

 その間隙かんげきうように、藺離は一閃を放った。その斬撃はほむらを帯び、欧陽坎の右腕の裾を焼き消した。

「――――⁉」

 欧陽坎は、思わず眼をくと息を飲んだ。

「やるなあ、藺離とやらよ。俺と似たような技を使う対手あいては、お前が初めてだ。では、これはどうだ?」

 欧陽坎が頭上で矛を旋回させた刹那せつなだった。

「ま、待て‼ 待ってくれ、欧陽坎――‼」

 てのひらを欧陽坎に向けて、藺離が待ったを掛けた。只事ただごとではない様子である。

「あん? これから盛り上がろうって時に、どうしたってんだ?」

 興を削がれたような欧陽坎が、渋面じゅうめんを作って肩に矛を掛けた。

「これを、これを見てくれ……」

 藺離は、己の右腕の袖をめくってみせた。八芒星はちぼうせいの黒い痣が浮いていた。

「んん――⁉」

 眼をまるくして驚いたのは、欧陽坎だった。己の右腕にある痣と見比べている。

 どこか安堵あんどしたような藺離は、長髯ちょうぜんを揺らしながら欧陽坎に歩み寄った。

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