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報仇の剣 -萬軍八極編-  作者: 熊谷 柿
第3章 義星
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伝来の妖し

登場人物

藺石りんせき…………藺家の当主。槍の達人。八人の子息を持つ。

藺授りんじゅ…………藺家の長子。苛烈かれつな槍の名手。

藺離りんり…………藺家の次子。槍の手練者てだれ。道徳的な思想を持つ。

藺翼りんよく…………藺家の三男。豪快な槍術の持ち主。

藺冑りんちゅう…………藺家の四男。鋭敏な槍術の持ち主。


火鼠かそ…………炎を自在にあやし。

「――――⁉」

 藺離りんりは、得体の知れない化け物に血相を変えると絶句した。

「やはり、お前には見えているな、藺離」

 眼前の藺石りんせきの顔が不敵に歪んだ。

いにしえより藺家に伝わりしあやかし、火鼠かそ――。此奴こやつを斬ってみい」

 そう云うと、藺石は藺離の許に年季の入った槍を放り投げた。

 それを手にした藺離は、さっと顔を上げて藺石を見遣みやった。

 肩にいたはずの火鼠の姿が消えている。

 ふっと、室内の篝火かがりびも消えた。

「――――⁉」

 刹那せつな、側面を打つような熱風が藺離のからだを吹き飛ばし、その身は部屋の壁を破って中庭まで放り出されたのである。

 槍は手放していなかった。藺離は、受け身を取って身構えた。尾を炎に揺らした小さな火鼠が、対峙するように眼前にいた。

 藺石は、崩れた壁からゆっくりと縁側にその身を運んだ。

「火鼠に一閃を加えろ。己のしもべとなるよう唱えるのだ。もなくば、お前は死ぬ」

「ど、どういうことですか……?」

 合点がてんのいかない藺離は、眼前の火鼠と藺石を見比べながら尋ねた。

 人の頭ほどの大きさだった。火鼠の身から浮き出た三つの火の玉が、その頭上に浮いている。

「折を見、火鼠をっては槍にほむらまとわせていた。火鼠の姿が透けるほどに霊気を緩めてな。俺の眼は誤魔化ごまかせんぞ。火鼠が見えていたのは、藺離、八人の息子たちの中でもお前だけだ」

 ぼうっと音を立て、疾風はやてのような火の玉が藺離に向かった。

「――――⁉」

 藺離は、咄嗟とっさに地を転がって火の玉を避けた。地に落ちた火の玉は、ぜて藺離の視界を火の粉で覆った。熱い。その奥から、更に火の玉が走ってくる。藺離は、更に地を転がってかわした。

玉炮ぎょくしゃくにばかり眼が往っておっては、いつまでも火鼠を捉えることはできぬぞ」

 藺石の声を耳に入れながら、藺離は身を起こした。既に眼前には火鼠が放った玉炮が迫っていた。

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