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魔術師ソフィアの青春  作者: 華月 理風
魔術学院4年生
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わたしの秘密1



書斎に戻ってきて、持ち出したブラックダイヤを、フィロスが書斎の机に仕舞うのを見てから、私はフィロスの前で自分のクリスタルがついたネックレスを取り出して見せた。


「これは?」


2つのクリスタルネックレスを前に、フィロスの目が大きく見開かれる。

2つのネックレスは見た目が全く同じ。

ただ、持ち主となった私はどちらが宝飾室で、どちらが図書室(メイ・パラディース)のものか、触ればわかる。


「フィロス、手を貸してくださる?」


フィロスの手を右手できゅっと握って、左手にクリスタルを握りしめ、

「ビビリオテーション。」


図書室(メイ・パラディース)に移動したフィロスが目を見張っている。


「ここは…、図書室、か。」

「はい、そうです。」

「ドラコ王の、4宝具。…そうか4つある、はずだ。」

「4宝具というのは、わたくし、初めて聞きました。…もとは、父の持ち物だったようです。」

「プラエフクトウスの…。だが、なぜだ?なぜ、ドラコ王の魔道具が、この国ではなく、フォルティス国にあるのだ?誰が、持ち出した?」

フィロスは、難しい顔をする。

「そこまでは何も聞いていないので、わからないのですけれど。」


この図書館が、フィロスの宝飾の部屋と同じようだ、と説明する。

勝手に増える本。でも、それらは、店頭に並んだ、あるいは製本され、ある程度の人数の人が読める状態の本ばかりであること。

持ち出しができないこと。


キャレルに、フィロスを連れていく。


「ドラコ王の、4宝具の説明が書いてある本。」

机に、本が積みあがっていく…と言いたいが、わずかに3冊。

「なるほど…。そういうことか。」

「わたくしは、母に教わったのです。読みたい本があったら、条件を細かく言って、最後に『本』を付けること。と。だから、わたくし、先ほど、ダイヤを探すとき最後に、『宝飾品』と言ってみました。宝飾品、で合っていたようですね。」

「全く、知らなかった。それは。」

知っていたら石を探すとき、端から見つかるまで一つずつ見なくても済んだのに、と悔しそうだ。


「それにしても、ここは素晴らしい。過去、製法が失われている調合薬が多くある。もしかしたら、ここで資料を探せば、その製法が見つかるかもしれぬな。」

抑えようとしているけれど、興奮しているのが、声からもわかる。

ああ、そういえば、フィロスは研究が好きだ。研究している彼を見ればわかる。

この図書室は彼にとって宝の山だろう。


きゅっと、クリスタルを握りしめる。

「フィロス。」


フィロスの手にクリスタルを押し付け、ぎゅっと握らせる。

「ケーデ。わたくしは、フィロスに、ここを譲ります。」

権限が、すっと消えるのを、感じる。


「ソフィア!」

「無理やり、わたくしに宝石のお部屋を譲られた、お返し。です。」

フィロスの唇に人差し指を当てて、いたずらっぽく、笑う。

「しかし、この部屋は、宝石などとよりも、はるかに、価値が…。」

「ここは、わたくしの、ゆりかごみたいな、ものです。」

「ソフィア?」

「5歳の時に、ダングレー侯爵家に引き取られてから、ほとんど1日中、ここで過ごしました。…一人ぼっちで。」

「…。」

「でも、わたくしはもう独りではない。あなたが居てくれるから。だから、わたくしが一番大事なこの場所を、一番大事な、あなたに、あげます。」


まっすぐ、フィロスを見つめる。

「でも、手放すとまでは、言ってなくてよ?これからは、ここをあなたと一緒に過ごす場所にしたいの。2人で、ここで本を読みましょう。…あなたに、ここへ誘ってほしいです。…ダメ?」

「だめじゃない。」

フィロスが、私をまた抱きしめる。

「わかった。ありがとう。」



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