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13話:見下される俺

 

「なんとか、ネオが俺だということはバレなかったようだな……はぁ、疲れた……」


 俺はそう呟くと、アンリと別れ、宿に帰った。


 それから、ベスと連絡をとり、ティリスとも連絡をとってから、ネオの姿に偽装し、冒険者ギルドに来た。


 

 随分と時間が経ってしまっていたので、既にそこにはアンリとアレンたちが揃っている。


「あら、随分と遅いのね、昨日はぐっすり寝てたのかしら?」


 アンリのあたりが強い。ネオが護衛役だと聞いたのに、昨日は役に立たなかったからであろう。


 だが、彼女を守ったクオンは俺であり、本当は護衛をしっかり務めていたのだ。だからこそ、その言葉に少しイラっとしたが、ここは我慢して作り笑いをする。


「ハハ、ごめん。寝坊しちゃった」


「ふーん、しっかりしてよね」


 アンリは俺のところを少し睨んで、そう言った。


 そして、俺とアンリが会話をしていると、アレンが話しかけてきた。


「……仲良くしろよお前ら、そんなことより、ネオも来たことだし、僕たちのクランに行くとするか」


 クランに向かう? どういうことだろうか?


「なんで、アレンたちのクランに行くんだ?」


「いや、一段落ついたようだし、この機会にクランリーダーのギルバードに君たちを紹介しようと思ってね」


 一段落とは、なんのことだろう?と俺は思考を回転させる。


「あ、もしかして、希少級魔法師になったとか?」


 俺はアレンたちが、昨日、ダンジョンに行くと言っていた事を思い出した。


「そう、それもあるね……それでネオはどうする?」


 こいつらの正体は未だに謎が多い。ここでクランハウスに行けるのは好都合かと考え、それに了承する。


「ああ、勿論だよ! 是非俺をクランリーダーに紹介してくれ」



――――



「君たちがネオとアンリだね」


 俺の前には、金髪の男がいた。その男からは自信を感じる。若くして大手と呼ばれるクランのリーダーである、という自信からか尊大に感じる……いや、これはどこか違う、俺の事を下に見てるのだ。


「初めまして、俺はネオだ」


「私はアンリよ」


「初めまして、僕が『ランカーズ』のクランリーダーのギルバードだ。今は聖の希少級魔法師だが、もうすぐ特別級になれそうだ……RTA的にも最速記録だろう」


 こいつは自分語りが好きなんだろう……しかし、RTAってどういう意味だろうか? 三文字の英字だからなんかの略称だとは思うが……


「RTAってなんだよ?」


 俺が疑問に思ったことを聞く。


「気にしないでくれ。それよりも君たちをここに呼んだのは、理由がある。……それは君たちも魔法を手に入れるために、一緒にダンジョンに行かないか? という提案をしようと思ってね。どうだい?」


 その言葉を聞いて、俺は少し考えた。もう既に魔法の加護を持っているからだ。


 普通ならば本当は聖の適性がない事を知られるだろう。しかし、予めそれは対策済みだ。

 それは、金髪の適性である聖魔法の、普通級と希少級までの魔法ならば、時空魔法で効果の代用が出来ることだ。

 ならば焦る必要はない。

 

 俺はダンジョンに行ける事を嬉しそうに言う。


「俺は加護を貰えるのはありがたいが、アンリはどうするんだ?」


 これを聞くのは、アンリは一般的には魔法を使えないとされる、黒髪であるからだ。


 しかし、アンリが何かを答えようとする前に、ギルバードが横から口を挟んできた。


「あーなるほど、アレンからまだ事情は聞いてないんだね……実は黒髪でも魔法を使えるんだ」


「なっ!!」(何故、こいつがそれを知っている?)


 驚きのあまり、声を出した。


 やばい……俺もそのことを知っている事をバレたらまずいだろう。


 俺はなんとか誤魔化しの言葉を咄嗟に言った。


「そんな魔法があるのか!?」


 少し、俺は大袈裟に反応をした。


「ああ、君のような一般市民は知らないだろうけどね」


 俺の反応に、まんまとギルバードは騙されてくれたようだ。


 それから、彼は話を始めた。黒髪は闇属性魔法を使えること、それを聖教会が隠していること、闇のダンジョンは聖教会が管理していること、実は聖教会の知らない場所に闇のダンジョンが存在していること。


「な、何故そんな事を知っているんだ?」


「君のような人は知らなくていい事だ、君は気にせずに黙っていれば居ればいい。そしたら色々力を与えてあげるよ」


 ギルバードはそう言う。ここは頷く方がいいだろう。


「ほんとか? 分かった! 是非頼むよ!」


 俺の言葉を聞いて、ギルバードはニヤリと笑った。


「それでアンリはどうする?」


 ギルバードの言葉にアンリは下を向いて、彼に問い返す。


「ほんとに私も魔法を使えるの?」


「ああ、もちろんだとも……僕たちに着いてこればきっと強くなれるよ」

 

 その言葉に、アンリは顔を上げてギルバードの方を見た。


「……頼むわギルバード」


「任せてくれ、ではとりあえず、最初の目標はアンリとネオの冒険者ランクをD級にすることかな……」



――――


 アレンやネオたちがランクを上げるため、依頼を受けに行くのを見送ったギルバードは、ある一人の女と話をしていた。


「よかったのギルバード?」


 クランハウスの一室で、女がギルバードに話しかける。


 彼女の名前はメリエル、『ランカーズ』の三つあるPT(パーティ)うち、アレンやギルバードと同じ、PTのリーダーの一人だ。


「どうゆう事かな?」


「あのネオとかいうよくわからない男に、闇魔法のことと聖教会のことを教えたこと」


 ギルバードはハハハ、と馬鹿にするように笑った。


「いいんだよ、あの魔力を見たか? 魔法の加護すらも持って無さそうだろ。あれはモブキャラだな……だから、大丈夫だ、モブキャラ如きが知ったところで、何も変わりはしないよ。それにああいう奴には、力を与えてやるとでも言っておけば、こちらに従ってくれるさ」


 ギルバードはネオの外見(偽りの魔力)に騙され、彼を見下していた。いや、それよりもこの世界をゲームの世界だと思っているギルバードは、元プレイヤーと主要キャラ以外の全てを見下しているのだ。

 

「ホントに大丈夫かな……」


 メリエルの不安の声が小さく響いた。

クオンは地球でゲームなどをしてこなかったため、RTA(リアルタイムアタック)などといった、ゲーム用語を知りません。

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