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9話:時空魔法と俺の強さ

 無音の(サイレント)殺戮者(キラー)の隊員をベスたちに任せると、俺は一人、アンリを追い帝国領の方角に進んでいった。

 俺は着ているローブの力で、敵の魔力探知を誤魔化すことが出来るため、たとえ後ろから着いていこうがまったく気付かれていない。


 そして、帝国領に入ると、茶髪のペトラが無音の(サイレント)殺戮者(キラー)の隊員たちに向かって命令を出した。


「よろしい、では各自散れ! 何かあれば報告に来い」


 無音の(サイレント)殺戮者(キラー)たちが各自に散り、ペトラの目線から消えた瞬間、俺は詠唱をした。


「世界を織りなす時空よ、


 我が魔力により起き上がれ。


 そして時空を支配する力にて、


 新たな世界を作り上げろ。


 時空の加護よ我に力を


――空間創造(アルカディア)


 俺と無音の(サイレント)殺戮者(キラー)たちは別の空間に移動した。


 俺が時空の伝説級魔法の、空間創造(アルカディア)を使ったからだ。その効果は、仮想空間を作り出し、自分と対象物をその空間に転移させるというものだ。


 時空魔法ってなんだよ?って思う人もいるだろう。

 それもそうだ、時空魔法とは、かつての純白の魔女の仕業によって、聖職者たちがその存在を隠したため、一般的にはあまり知られてはいないのである。

 この世界で時空魔法を知る人は一部の権力者と、この魔法の存在を隠した聖王国の聖職者たちだけだ。


「おい、ここはどこだ?」「いきなりどこに連れてこられた?」「どうなった?」

 

 無音の(サイレント)殺戮者(キラー)たちは、いきなり何も存在しない白い空間に飛ばされたため、かなり混乱している。


「ようこそ、俺の世界へ」


 無音の(サイレント)殺戮者(キラー)たちの目の前に俺は移動した。


「貴様は誰だ?」


 無音の(サイレント)殺戮者(キラー)たちは俺が目の前に現れると一気に冷静になったようだ。流石、精鋭部隊といったところだろう。


「俺は『白迅の悪魔』さ、そして、君たちを狩るものだ」


 俺の言葉に、男たちは驚く。


「白迅の悪魔といえば、メラレーン戦争で急に現れて、急に姿を消した、謎の人物か」「だが、今まで何をしていた?」「帝国の報復を恐れて隠れていたのだろう」

「白迅の悪魔レベルなら余裕だな」「そうだな、俺たちならば造作もない」

「でも、この空間はなんだ?」「聖魔法の幻影ではないのか?」「この男は金髪だし、そうだろうな」

「だが? 白迅の悪魔は白髪ではないのか?」「報告したものは錯乱していたと聞いている、きっと勘違いをしていたのだろう」「そうだな、やはり俺たちなら余裕だろうな」


 俺の言葉を聞いて、逆に無音の(サイレント)殺戮者(キラー)たちは、完全に落ち着きを取り戻し、話し始めた。きっと、3年前のセトと死闘をしていた程度ならば余裕だと考えているのだろう。


 なら、油断しているうちに一気に終わらせよう。


(――遅延(スロウ))


 俺が無詠唱で魔法を使うと、男たちの動きが遅くなる。時空の普通級魔法のスロウだ。


「な……に……が……


(――時空切断ディメンショングラディウス)


 無詠唱で時空の特別級魔法、ディメンショングラディウスを使う。その効果は単純で防御不可能な斬撃を速着で放つというものだ。


 その瞬間、男たちの首が吹き飛んだ。


 それは刹那の出来事であった。


 3年前は苦戦した、セト以上の敵が十数人。


 相手が油断していたとはいえ、圧倒的な強さだろう。


「こんなものか……やはり魔法は強い。あの時にこの力があれば、全て上手くいったのだろうな……」


 俺は小さく呟いた。



――――



 空間創造(アルカディア)を解除して現実世界に戻ると、すぐにアンリのところへ向かった。そこで、アンリがペトラに苦しめられているのが見えた。


「俺は何のために強くなったんだ……俺たちの都合を考えなければ、もっと早く助けることが出来ただろうに」


 もう後悔はしないように強くなると決めたはずだ。だが、今の俺はどうだ? わざと帝国に苦しめられているアンリを助けなかった。ベスにそっちの方がメリットがあると事前に言われていたからだ。


――ホントにそれは後悔しない選択なのか?


 俺は自分に問いかける。


 今回のことにより、アンリの心には大きな傷が残るだろう。

 だが、もし、誘拐される前に助けていたら、帝国の誰がアンリを狙っているのか、どのように『原初の魂源』を利用することが出来るのか、これらの疑問は永遠に解き明かされることはないかもしれない。


 だから、もう一度自身に問う。


――今、お前はアンリの苦しんでいる姿を見て、後悔しているんじゃないか?


 ああ、その通りだ。


 今回のことも、今の俺に、全てを超越する強さがあったなら、

 疑問が解決できるといったメリットを失ったとしても、

……全てを力で解決出来たんだ。


――ならば、全てを超越する力を手に入れよう。最強の力を。


 今、俺の決意は決まった


 皇帝近衛兵の零団の団員がいるということは、アンリを狙っているのは、皇帝ということ。

 『原初の魂源』は、アンリの負の魔力を含んだ血を利用して使うこと。

 それがわかればもう充分だろう。だから、早くアンリを助けてあげよう。


 俺は魔法を使い、ペトラの後ろに転移した。


「なぁ、おっさん。俺にもそれの効果を教えてくれよ」


 俺の今現在の力は帝国最強の零団の隊長に通用するのだろうか、試す時が来た。



――――



 俺とペトラは魔力を高めて睨みあう。次の瞬間、お互いの姿が消えた。いや、正確にいえば常人には見えないほどの速度の動いたのだ。


 ペトラの剣と俺の槍がぶつかり合い、火花が散る。


 魔力操作は俺の方が上で、身体強化はペトラが上だろう。だが、総合値は俺の方が上回っているらしく、剣ごとペトラを吹き飛ばした。


「なっ!? なぜ俺の速度に着いてこれる? それになんだその身体強化は」


 ペトラは驚愕した目で俺のところを見る。


 武器を交えてわかったが、確かにペトラは強い。少し前の雷付与(エンチャントサンダー)をしたエリザベスと同等以上だろう。

 付与(エンチャント)系魔法が、身体強化に繋がらない地魔法師だということを考えれば、どれだけ鍛錬を積んで来たのか分かる。それがペトラの自信に繋がっているのだろう。


 だが俺はそれ以上だ。この三年間、俺は常にダンジョンの中にいた。それも第四段階目(伝説級)の難易度だ。空間倉庫(アイテムボックス)の魔法を使えるようになってからはずっとだ。

 そして、そこでひたすらに魔物(モンスター)と戦ったり、魔力操作をし続けた。確かに才能もあっただろうが、俺はこの三年間、世界中の誰よりも努力したと断言できる。


「悪いな、俺はお前よりも強いようだ」


 そして、俺はまだ魔法を使っていない。


(遅延(スロウ))


 俺の無詠唱魔法を使うが、ペトラは魔力を高めることで、対抗(レジスト)した。その瞬間、俺は加速(クイック)を使い、さっき以上の速度で攻撃をする。


 蹴りだす足を加速させ、突き出す腕を加速させる、動き一つ一つを加速させるイメージで。


 俺の身体が加速して、一瞬でペトラとの距離を詰める。


 あまりの速度に身体に負担がかかるが、三年前ほどではない。前以上に身体強化の練度も筋力も上がったためだ。


 音速を超えた槍の一撃が、周りに衝撃波(ソニックブーム)をまき散らしながら、ペトラの心臓に向かう。


 胸に槍が当たりそうになるその瞬間、ペトラの身体に岩が纏わりつく。


 ズドン、と俺の一撃はペトラの岩を纏った胸に当たった。


 強力な攻撃ではあったが岩に威力を殺されて、ペトラの心臓までは槍は届かなかった。


「くそが!」


 悪態を吐きながらも、ペトラは地魔法を使って、地面を隆起(りゅうき)させて攻撃をしてきた。


 俺はそれを槍で振り払う。


 たったそれだけで、ペトラの魔法は吹き飛んだ。


「たった三年で、何故、それほどの力を付けることが出来る! 何故、私以上の才能を持つ奴がいるのだ! ありえない!――地の加護よ我に力を、魔法銀創造(クリエイトミスリル)


 ペトラは近距離戦は危険だと感じたのか、今度は魔法攻撃を主体に使ってきた。


 魔法は銀色に光るミスリル地面から生えてきて、俺を突き刺そうとしてくる。


(時空切断ディメンショングラディウス)


 しかし俺は魔法を使って、全てを切り裂いた。


「その魔法は、時空魔法か!? 何故、貴様が使える? 時空のダンジョンは聖王国が押さえている筈だ」

「お前に教える必要があるか?」


 俺は純白の槍を構える。月光が反射して槍が煌めく。


(加速(クイック))


 音速を超える一撃がペトラを襲うが、魔法を使う事で防がれた。


 今度は、ペトラの地魔法が俺を襲うが、それを俺も防ぎ返す。


 そして、俺たちの攻防は激しさを増していった。


ペトラ・ハンデンベルク

魔力量:A

身体能力:A-

魔力操作:B

精神力:C

魔法:地の伝説級魔法

剣術:A


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