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偽りの英雄~彼女に振られて異世界転生~  作者: オク炭治郎
第0章:ゲームストーリー開始前
26/62

23話:知略(笑)と勘違い

主人公の基礎能力の魔力量をS+からAにしました。

 メラレーン戦線作戦本部。


 俺はそこに連れられて来た。

 隣にはオーウェン大尉がいる。


「おい、あいつが純白の英雄か?」

「そうらしいな……でもあいつの髪色見てみろよ、白髪だ、魔法を使えない無能じゃないか」

「でも、魔法を使わなくてもとんでもなく強いらしいぞ……姿の霞むほどのスピードだったって噂らしい」

「絶対ガセだろそれ、だって無能だぞ? ただの噂だよきっと」


 周りの軍人が俺のことを奇異の目で見て、騒いでいる。


 すると、作戦室のドアが開き、三人の男女が入ってきた。一人の男はクリス中将、一人の女はベスだ。


「静粛に!」


 もう一人の真面目そうな10代後半ほどの女性が一言言うと、周りの軍人が一気に静かになった。


 若い女性がガタイのいい男たちを黙らせるという不思議な光景だった。軍では階級が全てなのである。


「今、現在のメラレーン戦線の状況を報告します……ではクリス中将お願いします」


 クリス中将がだるそうに資料を読み上げた。


「メラレーン戦線では我が王国軍は圧倒的に劣勢だ。だが、昨日の第四戦線の帝国中隊を撃退したことにより、帝国軍は戦線をメラレーンの(へそ)よりも下げた。これにより王国軍は立てなおすチャンスが出来たわけだが、何か作戦はあるか?」


 クリス中将がそう言って軍人たちを見渡す。


 ここにいる軍人たちは各戦線の責任者であり、左官以上の軍人しかいない。尉官であるのは俺と隣にいるオーウェン大尉くらいだろう。


 一人の軍人が手を挙げた。


「トーマス中佐の発言を許可する」


 クリスが発言の許可をだし、トーマス中佐が話し始める。


「このまま守りに徹するのが一番かと、攻勢には出ずに帝国がもう一度攻めてくるまでに基地の守備を万全にして迎え撃つべきです」


 さらに軍人が手を挙げた。


「トーマス中佐の意見も確かですが、攻勢に出るべきです。ゴモス平原の戦いが停滞していて、いつ終わるかわからりません。いつまでも守りに徹していたら、そのうち結局はメラレーン戦線が抜かれてゴモス平原の王国軍は裏を取られて負けてしまうでしょう! ここで攻勢に出て一気にメラレーン戦線を勝ち切るしか王国軍に勝機はありません」


「だが、攻勢に出れば王国軍の被害は大きくなります。帝国軍に待ち伏せされる可能性もあるのですよ? 現在の位置で守備に徹するしかありません!」


 俺はどちらの意見も正しいと思う。ただ何故、誰も、周りよりも高く盛り上がった大地になっているメラレーンの臍のことに触れないのだろか?


 中世の戦いであれば上を取れれば有利である。

 さらに、メラレーン戦線では木が乱立していて視界が悪いので攻勢に出るのも守備をするのも難しい。

 だが木などよりも圧倒的に高い位置にあり、見渡しのいいメラレーンの臍であれば、敵の位置もわかりやすいので攻勢に出るのも守備をするのも楽だろう。


 俺は不思議そうな顔をした。すると隣にいるオーウェン大尉が手を挙げた。


「オーウェン大尉の発言を許可する」


 オーウェン大尉は俺の方に体を向ける。


「何か、クオン少尉が言いたいことがあるそうです」


 周りの軍人たちは俺の注目をする。


「よろしい。ではクオン少尉。作戦を教えてくれ」


 は? 何言ってんだよオーウェン大尉! 別に作戦もないわ! 

 だけどこの雰囲気で作戦はありませんとかいえる雰囲気ではない。


 作戦ではないが、とりあえず高い場所を取った方がいいって言うか……だけどみんな気づいてないのか?


 あ、もしかして気づいてない?


 帝国の基地では合言葉すらなかったし、帝国は軍事の階級などもしっかりしていないで、隊長を討ち取られたら、一気に部隊が崩れた。王国軍もフェール大将が軍のシステムを作ったらしい。


 予想よりも軍事が進んでない?



――この時クオンはそう思っていたが、ここにいる軍人は佐官以上で、軍の中でも選ばれた存在であるため優秀である。実際はそんなことには気づいていた。だがそのメリット以上のデメリットがそれにはあるのだった。それにクオンは気づいていなかった――



 俺は自信満々に言った。


メラレーン戦線(視界が悪い)ではメラレーンの臍(高い場所)を取った方がいいでしょう。フェール大将(頭がいい)ならそうするはずです」


 俺がそういうと、周りが騒ついた。


「そんなわけがないだろう! 常識的にありえない! 奴隷出身はそんなこともわからないのか!」

「私たちを馬鹿にしているのか!」


 軍人たちが苛ついたようにそう言った。

 俺にはそんなにキレている理由がわからない。それにそんなにキレられても俺はただ提案をしただけだぞ?


「静粛に!」


 軍人たちが静まる。

 クリス中将が俺を見た。


「クオン少尉……君にはがっかりだよ。エリザベス中将が呼んでくれと言うから呼んだが、そんな作戦は自殺行為だ……ほかに作戦があるも――「待ってください!」


 クリス中将が次の作戦案に行こうとした時、セレス少将がそう遮った。


「クオン少尉……フェール大将ならそう考えると言いましたか?」


 セレス少将がそう言ってくる。


 フェール大将はいろいろ現代の軍の仕組みも知っているようだし、頭がいいらしい。高く見通しがいい場所をとった方がいいことはわかっているだろう。


「はい。言いました」


 俺がそう答えると、俺の案は別に難しいことは考えてないのに、セレス少将は何か考えこんだ。


「メラレーン戦線では……メラレーンの臍を取った方がいい……フェール大将ならそう考える…………あ、そう言うことですか!!」


 セレス少将は何かわかったようだ。


「クリス中将! 絶対にメラレーンの臍を取りに行きましょう! この戦争は勝てます!」


 こんな単純なことに気づくのに時間がかかるなんてやっぱりこの世界の軍事は進んでないんだなと俺は思った。


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