オルレアン平定
ちょい短め
オルレアン地方。平野が広がり馬の産地として知られる。住民は独立独歩の気風を持ち、領主にも牙を無ことも多い。彼らに認められるには、より巧みに馬を乗りこなし、より巧みに弓を操る、勇者として認められねばならない。
レイルは今回の戦いの論功行賞で、リンをオルレアンの領主として封じた。領主補佐としてアレスをつけて、オルレアン伯としたのである。
オルレアンから上がる収益は多い。軍馬の販売と、川の付近では農産物の実りもよい。川が運んでくる沃土は大きな実りをもたらす。また、交通の要衝でもあるので、商人の往来も多く、そこから上がる税収もかなりのものだ。そこに目をつけ、より豊かな領土をほしがる者は多い。
そう、オルレアンは豊かな土地である。兵も精強で、騎射突撃を受けて持ちこたえられる兵は少ない。多数の騎兵を養う経済力もある。まともに治められればだが。
「貴公らは今回の戦勝の褒章にオルレアンを望むと?」
「はっ」
4人の騎士や小領主がレイルの前にいた。大きな声を上げてはいないが、身内びいきも甚だしいとすら放言している。そして功績といっても、ひとまず生き延びましたというレベルであり、敵将を討ったとか、高名な騎士を捕らえたとかではない。リンの今回の功績は、敵情を探り出しグラナダの会戦で敵の補給物資を焼き払ったこと。オルレアン会戦では、後方をかく乱し、裏崩れを起こさせ、クリフォード軍の中央突破を支援したことだ。だが彼らはそんなものは功績といえないと言い張る。正々堂々と敵を打ち破ることでしか誇れる勲功にならぬと。
「なれば貴公らに条件を出そう。オルレアンの民を従わせるのだ。それが出来れば領主として認めよう。無論姉上にも同じことをしてもらう。これで身びいきという言い分は当てはまらぬ。よいか?」
「はは、かしこまりました。して、順番はどのように?」
「ふむ、同時にかかればよい。おぬしらのやり方があるだろう。そうだな、姉上はおぬしらが無理と判断した後でやらせよう。それでどうか?」
「二人以上が認められた場合は?」
「なれば、領土を分割し、それぞれに与えよう」
「かしこまりました」
4人は嬉々としてオルレアンに出向いた。そして一月を待たずして全員が失敗に終わる。
一人は金銭をばらまいたが、まったく興味を示されなかった。
一人は力を示そうとして、逆にコテンパンにされた。
一人は弁説の限りを尽くしたが、誰一人耳を傾けるものはいなかった。
さらに一人は3人が無残に失敗したのを見て、恐れをなして辞退した。
リンとアレスはオルレアンに出向き高らかに宣言した。弓と馬の試合を申し込むと。
リンの弓術は徒立ちで誰よりも遠くの的を射抜き、アレスは駄馬を乗りこなして駿馬と渡り合った。リンは疾風のごとき速さで馬を走らせ、馬上からの矢継ぎ早ですべての的を射抜いた。アレスと馬上戦で三合以上耐え抜いたものはいなかった。二人は勇者としての名声を得た。そして、複数の部族を渡り歩き、彼らと生活を共にした。長老達は彼らを認め、リンとアレスのもとでレイルに従うことを約した。
「リン殿、お見事」
「いいえ、私は旅芸人ですからね。行く先々の人に溶け込めないと商売にならないから」
「というか、あの弓の腕は何ですか?」
「お母様に教わったの。ティルナノグの隠れ里に伝わる武芸一般ね」
「それは…是非お話を聞きたいのですがよろしいか?」
「義姉上って呼んでくれたら。身内以外には漏らすなって言われてるし」
「私を身内と認めてくださるのか!?」
「レイルはもう貴女なしじゃやっていけないでしょう。それは本人もわかってるはずなのにね。往生際が悪いったら」
「それは、レイル殿の良いところですよ。出会ったときからあの心根は変わらない。わたしは好ましく思います」
「それって惚れた相手への欲目がかなりあるわよ。あれはただのヘタレね」
「義姉上は手厳しい」
「さて、じゃあ練兵場に行きましょうか。あ、スカサハさんの武術も興味あるの、教えてもらえる?」
「喜んで、義姉上!」
オルレアン平定の知らせをアレスから受けているとき、レイルは妙な寒気を感じた。彼は直感的にまた一つ外堀が埋まったことを感じていたのか?
オルレアンを平定したレイル。北上してアルフェンスとトゥールを窺う。そこにはラーハルトの一族が待ち受けていた。
次回 一族
お楽しみに




