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皇帝に成りたくない男の不本意奴隷ハーレム  作者: サイリウム


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25:リシエラの狙い


(さて、どうなるかしらね? 最悪癇癪を起されて護衛総動員。その子達とのガチバトルになってもおかしくないけど……。まぁエド様のことを考えたら、やっておくべきよねぇ。)



そんなことを考えながら、彼女。自身のご主人様のお母様の後を追いかける。


つい先ほどまで行われていたのは、息子と母親の楽しい家族の会話。まぁ最初からお説教だったし、途中からも心配のお小言。もとい精神的な拷問のようなものだったけれど……。彼女の心配は、理解できる。


お母様からしたら子供一人で家元を離れて一人暮らしを始めたようなものだし、色んなことが気になってしまうのだろう。護衛から伝えられた物事、その中で気になったことを全てを本人に訪ねてしまうのもそうおかしな話ではない。


ただ内容がちょっと。エド様にとっては地獄だった、ってだけで。



(お話が終わった後。見送りが出来ないレベルで参ってたからね、彼。ライカちゃんにつつかれても呻き声しか上げてなかったし。)



けれど私に、彼女を責める気持ちは一切ない。


自身は子を産んだことは無いが、母親代わりになったこと。子供を育てて見送ったことは何度かある。そのせいか『たぶんここまで踏み込んだら嫌われるな』ってレベルがなんとかく解るのだ。けれど話を聞いている限り、エド様のお母様は彼が一人目。ちょっと心配で行き過ぎてしまうのも凄く理解できちゃう。


まぁエド様もエド様でお母様の気持ちが解るくらいには成熟してるみたいだし、何かテコ入れする必要はない。放っておくしかないだろう。


なにせこういう心配事って、子供が巣立ちしても本人の中で区切りがつかないとずっと続いちゃうものねぇ。



(その分エド様の負担が大きくなるんだけど……。“私達”からすれば、そっちの方が都合がいい。)



お母様がやって来る前に行っていた今回の“たくらみ”は失敗してしまったが、ストレスというのは此方にとって益しかない。何せ溜め込めば溜め込むほど、“欲”として発散したくなるのが、ストレスなのだ。やろうと思えば溜まりに溜まったソレを全部ライカちゃんに吐き出させるなんてことも出来ちゃう。


まぁそんなことすればライカちゃんのM気質が進行して、色ボケ加速して手の付けられない“おバカ”になっちゃうかもだけど……。特に問題はないだろう。そっちの方が面白いし。



(だからこそ……。あの会話の中で見えた違和感、解消しておくべきよね。)



勿論、知識奴隷として。


我ながら色欲に塗れたことばかり考えているなとは思うが、真なる目標の通過点。ご主人様を皇帝にするという意思は変わっていない。ならばそれを為すために必要な“打ち合わせ”は出来るだけ早いタイミングで行うべきだろう。


そんなことを考えながら、玄関から外へ。


メイド服のままゆっくりと外へと歩いて行く彼女の後ろを追いかける。



(……まぁ、いるわよね。)



すると感じる、多数の視線。


おそらく此方の接近に彼女の護衛が察知したのだろう。すぐさま周囲から人が集まって来るが……。それよりも早く、お母様が此方に振り返る。それを受け入れる様に、眼を合わせない程に深いお辞儀を。



「ん……? あぁエドの知識奴隷ですか。少し待ちなさい、散らせます。」



彼女がそう言いながら軽く眼鏡を触ると、先ほどまで此方に接近していた護衛達の動きが止まり適切な距離へと戻っていく。


そのレンズの屈折から“伊達ではない”ことは解っていたが、どうやらその触り方によって周囲への符号としているようだ。エド様の前で見せた眼鏡の上げ方と少々違う。



「貴女が此方に来た理由はある程度推測できます。息子の前では話しにくい話題であることも。……確か貴女は、魔法も出来ますね? 口元と音を遮断する物を使いなさい。……あぁそれと、発言を許します。」


「寛大なお慈悲に深い感謝を。すぐにご用意いたします。」



彼女が眼鏡の触り方によって周囲の護衛達に通達を行うのを見届けた後、求められた魔法を行使する。


風の動きをちょっとだけ弄って音を周囲に探らせないようにして、外から見た時に口がある部分に靄がかかる様にするもの。貴族に連なる人がご主人様だったりすると凄く重宝されるからってことで、100ぐらいのすっごく若い時に覚えた魔法だ。


ちなみに古すぎて術式の解読が出来ないせいか、今の子達には解除できない代物だったりするのだが……。今は特に関係ないわね。



「……お待たせいたしました、効果時間は約1時間。幾らでもおしゃべり出来ますわ。」


「えぇ。よしなに。……はぁぁぁぁぁぁぁ。」



私がそう言うと、急に深いため息をつかれるお母様。


そのしぐさが少しエド様に似ていて、思わず笑みを浮かべそうになってしまうが……。まだご許可は頂いていないのだ。奴隷という最下層に位置する存在の前で思いっきり溜め息をつく、それだけで『自身の想定が間違っていなかった』ということを理解できるが、まだ曝け出すべきではない。


おそらく、今のは本音8割くらいの“護衛”への確認。


聞こえてきたら護衛が飛んで来る、って感じの奴だ。……まぁ大事な息子が朝から庭で女の子と乳繰り合っていたらため息もつきたくなりますよねぇ。


あ、でもその首謀者私だった。あはー! ごめんなさいな♡



「あぁぁぁぁ……。ふぅ、あぁいや、少し気が抜けて。……護衛達の反応が無いようですし、機能しているのでしょう。自由に話して構いません。」


「では、お言葉に甘えまして。“お母様”とお呼びしても?」


「えぇ、良いでしょう。……年を考えれば私が貴女を母と呼ぶべきかしら?」


「人の尺度で考えればと多い先祖、ほぼ他人のような形になりますし、お気になさらず~。」



やり取りの合間に飛び出てくる、人間族の貴族としてはありえないレベルのジョーク。


しかも私の返答の後に、『もっと崩して構いません』とまで付け足してくれる。ご主人様風に言うなれば相当な“人格者”という奴なのだろう。


……以前考えていた『ご主人の両親』についてのこと。今のやり取りからその該当者が彼女であることを推察できるが、そのプレッシャーが否定する。お母様が皇室出身者であるならば、“軽すぎる”のだ。


確かに未だ彼女が無意識に放っているであろう覇気は皇帝などの“上位者”特有のモノだが、その振る舞いは若干平民に近いモノへと変化している。


結構チグハグな感じで、混乱しちゃいそうね。どっちが本当の彼女……。いや、両面?



「はて? あぁ。この身は平民と皇帝のハーフ。幼少期は奴隷の子と遊んだこともあるのです。別種族に対するアレコレは自覚できるくらいにはありますが、身分差はそこまで。そう考えて貰って問題ありません。」


「あらら、そうだったのね! ……つまりカワイ子ちゃん! 頭撫でてもいいかしら!」


「……崩していいと言ったのは自身ですが、急に詰めてきますね。」


「そっちの方がやり易いでしょう?」


「…………まぁ、確かに。」



意図的に話し方。先ほどまでの主人や貴種に向けて行う話し方から、ライカちゃんに向ける様な優しい者へと変化させてみれば。少し困惑しながらも受け入れてくれるお母様。


たぶん生まれや境遇からガチガチに固めて行かないとマズイ感じだったんでしょうけど……、適応力とかは結構ある感じなタイプ。ライカちゃんが『なんちゃって堅物』だとすれば、お母様は『ちゃんとした堅物に成れるよう努力した堅物』って感じね。


……爪の垢でも貰ってライカちゃんに飲ませようかしら? ご主人様に脳みそ焼かれて凄い事なってるし。



「して、私に話しかけてきたということは何かあるのですね?」


「えぇお母様。“知識奴隷”としての責務を果たしに来たの。先に言っておくけど、私と彼女。獣人族のライカちゃんはご主人様の為に全力を尽くすつもりよ? 勿論、本人の意思には反しちゃうけど♡」


「……単なる母としては心配しかありませんが、“皇帝の母”としては喜ばしい、とだけ。」



目筋を強く抑え、ため息を噛み殺しながらそう言う彼女。


まぁ主人の命令に反した動きをする奴隷って滅茶苦茶怖いものね。母親としたらそんなの息子の手元に置いておきたくないってのは凄く分かるわ。けど優秀なスキル持ちと、長年生きた知識奴隷。そして愛する息子が関係を拒否しながらも“迫っても明確に拒否しない”相手たち。


切るに切れない、って感じかしら?



「……貴女、名は?」


「リシエラ、と申しますわ♡」


「ではリシエラ。長く生きた貴女からして、この国はどう見えますか? “場”は整えてさせたのです。その真意を聞かせなさい。」


「……崩壊寸前、かしら。」



そう口にしてみれば、深く頷く彼女。


成程、見てるモノは一緒ってわけね。……いいわ、後援者と足並み揃えられるのは明確な利点よ。



「えぇ、こちらも同じ意見です。統制できぬほどに増えてしまった貴族と土地、そして皇帝の指示を聞かぬ阿呆ども。あと1代、2代持てば良いレベル。いずれ国は分裂し多数の王が立つ時代がやってくるでしょう。夫としては、そこに照準を向けているようですが……」


「お母様? “奴隷”が抜けておりますわ?」


「……もしや。」


「えぇ、十数年前から起き始めた『奴隷暴走事件』。長く使い過ぎたせいか、隷属魔法に限界が来ています。たぶんお上が潰れたら、下も全部ぶっ壊れますわァ?」


「………1代すら、持ちませんか。」



情報を追加してみれば、即座に額に指をあて思考を回す彼女。


そして叩きだされたのは、私と同じ答え。うんうん、やっぱりちゃんと解ってるタイプのお人ね。エド様も結構道理が解ってる方だし……。遺伝かしら? まだお父様を見てないけど、もしかすると母親の血の方が強かったりするのかもねぇ。



「元々我が子、“エド”はこの国を立て直すために育てた子でした。母としてはもっと自由に、その身に流れる血など気にせず過ごして欲しいモノでしたが……。スキルが宿ってしまった以上、もう逃げることはできません。……昔はあれほど欲しかったはずのモノが、息子に宿って苦悩するとは。」


「……あるある、よねぇ。」


「ふふ、どうやら母としても先達、のようですね。」



零すような笑みを浮かべた後、淡々と語られていくエド様への“教育方針”。


やはりというか、彼女も『これまで同様の教育』では色々と問題があると感じていたのだろう。息子を死地に送りたくはない。けれど送るしかないのであれば、万全の準備をさせるべき。『昔ながらの教育』をさせようとした夫の反対を押し切って、特別な教育を施そうとしたそうだ。


その目標は、彼女自身と同じように『平民や奴隷に対する差別意識』を持たせないモノ。


与える情報を制限し、どんな相手でも同じように見ることが出来る力。貴族が無駄に増えて発言権を伸ばしてしまったからこそ、より下からより良い人材を引き上げていく。外戚やらなんやらで面倒なところを、皇帝肝いりの人材を投入することで盤面を破壊する。妨害とか色々厄介になりそうだけど……。そもそも“いい人材”を持ってこれないと意味がない。


だからこそ、その“下地”を。そしてこの国を蝕む阿呆どもを愚かと判じ、ことごとく消し飛ばせるだけの価値観を。


……まぁ、何か教えるよりも先に“精神が確立していた”みたいだけどね?



「夫はその知性の高さに目を向け、無邪気に神童だと喜んでいましたが……。注目すべきは“価値観”です。しかも何を教えたとしても変わらない程に“強固”な。」


「博愛というか、色々と凄いものねぇ。」


「……えぇ、“良さ”ではありますが。少々“異常”でもあります。」



お母様の言う通り、エド様のアレは魅力と言えるだろう。


今日はあと少しと言ったところで逃げられてしまったが……。情欲をある程度乗り熟しながら、全ての人類種を出来るだけ同じように見ようとする価値観。女性に対する恐怖は持っているが、それすら押し込んで対応することが出来る胆力。……話を聞く限り、幼少期からそんな感じだったのだろう。



(まるで生まれた時から一個の人間として“完成”してる、みたいな……。)



彼女の話し方からして、おそらく彼女もそこに疑問を抱き、悩んだ形跡が見て取れる。


本来人を形作っていくはずの幼少期をすっとばして、大人の精神をはじめから持っている様なモノなのだ。こういうのは一度気が付いてしまえば、ずっと悩んでしまうようなもの。自分の子が何なのかと苦悩する気持ちは、十分理解できる。



(でも、ちゃんと乗り越えてる。)



けれど先ほどのエド様とのやり取りを見る限り、何処にでもある様な息子のことを心配する母親と、それに気恥ずかしさを覚えながらも受け入れる息子。親子としての愛は、確かにあるのだろう。


皇帝や血筋と言ったという厄介ごとが絡んでいるせいで面倒になっているだけ。家族関係、少なくとも母と息子の間には、問題は無い。



(……本人たちが気にしてないのなら、踏み込むべきではないわね。)



個人的にはその“出所”が非常に気になるところだが、今話すことではない。そもそも私としても、互いに興奮し合える情欲さえ備わっていれば体も性別も精神も、問題に成らないのだ。謎は謎のまま置いておく方が、ミステリアスな感じで素敵だしね?


っと。彼女の時間も限られているのだ。そろそろ“本題”に戻ってもいいだろう。


というわけで……。


お母様♡ お慕い申しておりますわ♡





「…………は?????」





ちょっとシリアスに傾き過ぎたちゃったせいで、もう色々耐えきれないの♡ 我慢の限界って奴♡ エド様にもずいぶん焦らされちゃって、大変なんですよ♡


というかお母様! そのメイド服とってもラブリーですよね! 一緒に【自主規制】が【自主規制】で【自主規制】な楽しいお時間とか、過ごしません? 経産婦メイド皇族ってとってもアダルティだと思うの♡♡♡



「……いや、は???」


「つまり、ベット行きましょってこと♡」


「行きませんが? 夫がいる身に何を言っているのです。……800年生きるとこうも胆力も育つのですが? 崩して構わないと言いましたが、下品な冗談を言って良いという意味ではありません。ふざけるのも大概になさい。」


「本音だぞ♡」


「……まぁいいです。して、これからの方針ですが……。息子にはまず、“伯爵位”を取ってもらいます。」



あら、流されちゃった。普通に守備範囲で正直結構キュンと来てたのに……。


にしても、“伯爵位”ねぇ?


……実家乗っ取っちゃえ、ってオーダーかしら。




〇何考えてるの?

・母

何このエロフ、えぇ……。こ、こんなのが大事な大事な息子の傍にいるの? えぇ……。い、今からチェンジとか出来ない? あ、800年も生きて政治も出来るエルフなんかコイツぐらいしかいない? そ、そっか……(諦め)

とりあえずエドに伯爵位取らせてね♡ んでその後は皇帝にしろ。国何とかしろ。それだけ生きてるなら出来ますよねぇ? あとこっちに熱視線送るなエロフ。


・リシエラ

何このドエロ経産婦! 丸眼鏡に? メイド服で? しかも子供産んでて皇族??? やっば! エド様のこともあって、無茶苦茶唆るわ、コレは……! ちょっと360時間ぐらい一緒にベッドの中でくんずほぐれつしましょう……? え、夫? 奴隷はモノだから不倫じゃないわ! 奴隷制最高ッ!!!

え? 伯爵位? もちもち~、大体そんな感じって考えてたし、イケルイケル!





次回は母視点からのお話です。



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