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日乙女に癒されたら、月を探す旅に出ましょう。

翌日…園芸部の休日作業…


テスト前、部活動最終日。だからこそ、この日は誰もやりたがらないので、来ているのは部長の桜野先輩と俺。そして部外者ではあるがなぜか真理が来ていた。


真理は何の酔狂で、本日の手入れと水撒きを手伝うと名乗り出た。


よこしまな気持ちで入った俺ですら、休日作業は面倒だというのに、自分の部活でもないのに手伝うとは、いったい真理は何がしたいんだろう?

普通に運動部とかの助っ人なら、まだわからんでもないけど、こんな地味で面倒で疲れるだけの部活の助っ人だなんてほぼあり得ない。


そして、俺にとって一番の目的である日芽子は、少し遅れてくるとのこと。


ああ、こんな時に肝心な癒しがいないなんて…


昨日のことでものすごく、後悔を残したまま今に至る。


ツキジが帰ってしまった後、俺はあいつに一切お礼をしていないことに気が付いた。

俺はあの時、ツキジにお礼として食事をおごるつもりでいたのだが、おごるどころか、お礼の言葉一つとして言ってなかったことが、今でも胸に引っかかったままだった。


そう、昨日俺はいきなり不良に絡まれ、それをツキジに助けてもらった。

本来なら、あのまま殴られた挙句に、もらったばかりの給料を奪われていてもおかしくなかった状況だった。

あんな危険なことから助けてもらっておいて、何もお礼がないなんて、さすがにないと思っている。


そのせいか、今日はずーっとボーっとしたまま、さっぱり動く気がしない。


そんな自分の気持ちにムチを打って部活に来てるというのに、なんかほとんど意味がない気がする。


「おーい!大空くーん。そっち終わった?」


桜野先輩の声は聞こえていても、俺はそのことばかりが気になったボーっとしたままだった。


「ほら、美星。早くお水あげないとお花たちもかわいそうでしょ。」


真理の声も聞こえた気がしたが、ホントに体が動かなかった。いや、なにもやる気が起こらなかったというのが正しい。


俺の様子が変だと気付いたのか、真理も先輩も俺の近くまで来て、俺の体を突っついたり、俺の目の前で手を振ったり、とにかく二人とも俺に意識があるかどうかを必死で確認している有様だった。



何も反応がない俺のことを二人は、


「だめだこりゃ。」

「ホントに固まってる…」


半ば諦めも近い言い方をしていた。



「って、まさか熱中症になりかかってるとか?」

「それまずいって。」

「でも、日芽子先生まだ来てないよね?」

「どうするの?これ?」


いろいろ好き勝手言われている様子だが、すでにそっちを気にしている余裕すらない。

もう、どうにでもしろとさえ思ってます。



そんな時だった、ホントに少しの間シーンと静まり返ったと思ったら、



「おはよう。美星くん。調子はいかが?」



「うわっ」


いきなり声をかけられて、気が付いたら顔を覗き込まれていた。顔が近すぎて、黒い瞳と思いっきり目が合ってしまった。


ヤバい


あの目と合ってしまうと…


そこまで考える間もなく、俺はバランスを崩して倒れそうになった。


「あぶないっ!」


日芽子は俺の体を支えようとしていたが、時すでに遅く、俺も日芽子もそのまま共倒れになってしまった。


「いってぇ―――っ!」

「いたたたた・・・」



「ちょっと、大丈夫ですか!?」

「もう美星!なんてことしてるのー!?」


思いっきり派手にこけた。

めちゃ痛い。

何か…かっこ悪い…。


「…美……星く…ん………大丈夫…?」


こんなかっこ悪い状態で、先に心配されてしまう。

本来なら俺の方が先に何とかしないといけないはずなのに…


「…日芽子……ごめん…」


そしていつも通り、日芽子先生と呼べる余裕すらなく、あっけなくこの間の約束を破ることになる…。が今回は運がいいことに日芽子もそこを指摘する余裕もないせいか、何も言ってこない。

そう…そんな目で見られると…俺は余計に動けなくなる…。

今は…今だけはその目で見るのは、やめて欲しい…

理由はよく判らないが、日芽子のような完璧に真っ黒な瞳で見つめられると、俺はその瞳に不思議な感じに支配されてしまうのである。


それに気が付いたのは……



「こら!美星!いつまで先生と地面でイチャコラしてるんだ!?」


俺は真理に頬っぺたをつねられて、ようやく目が覚めた。



「先生、大丈夫ですか?」


「ええ、私は大丈夫…。」


日芽子は桜野先輩に起こされていた。


「美星君。ごめんね。いきなり驚かしちゃって。立てるかな?」


日芽子は俺に手を差し出してきた。

マジ?日芽子の手を握るチャンス!?こんなチャンス滅多にないぞ。


「ああ先生。こいつ甘やかすなんて、絶対だめですよ。」


そんなチャンスだというのに真理が横で水を差してきた。


「ええ…でも…」


「とにかく!自分で立たせましょう!」


と真理がそれを言い終わる前に。俺は日芽子の手をさっと握った。


「あ――――――っ!」




真理が日芽子に注意した時には、すでに俺が日芽子の手をつかんでいて、もう遅しって感じだった。


「……あっ…あはははは…」


日芽子は苦笑いするしかなかった…。


「もうっ!」


真理はすごく悔しそうにしていた。


結局、俺は日芽子の手で起こしてもらった。


そして真理よ。

こんな大チャンスをお前ごときに邪魔されてたまるか。

おまえはもっとおとなしくしてるがいい。


なーんてこと思っていた時だった。


ポチャン


今、すぐ脇にあった池の水の音がした。


数メートル先に何かの影が動いた気がした。

どうやらその影は一か所ではなさそうだ。

なんか後ろの方からも斜め左からも何となくだが視線を感じる。


確かに俺が起き上がる前にホントに近くに誰かいた。

それがいったい誰だったのか?

動きが早すぎて、目で追えなかった。


「それにしても、この池に落ちなかっただけでもラッキーだったわねー。」


そうだ。下手したら、この池に落ちていたかもしれない。



俺がさっきまで突っ立っていたすぐ脇には池があった。そこには以前、学校で鯉を飼っていたらしく、ちょっとした庭園っぽい小さな池が設置してある。

今ではそこで、園芸部が睡蓮を育てている。

そうコンクリートで整備されているので、そこに落ちたらかなり痛いと思う。それにあまりきれいとは言い難い水でもある。できれば落ちたくはない池だ。


この池に何か落ちる音がしたということは、やっぱり近くに誰かがいたのか?

だが、その正体は判らないままだった。



「さぁ、あとはこの辺りなんとかしたら終わりかな?」


「そうですね。」

「あとは水撒き終わりました。」



「じゃあ、ここ終わったら、お茶にしましょう。」



休日作業は、朝食は出ないけど終了後は保健室に移動して、そこでちょっとしたお菓子とお茶が出る。

これもまた楽しみの一つだ。



「どうしたの?」


「ああ、ずっとこれですよ。」

「先生、こんなの甘やかす必要ないですよ。」


とまで言われてしまった。


「んー…甘やかしたかなぁ…」


日芽子に今更それを言われると、厳しいな…


「まぁ私、長女だからなぁ。つい、甘やかしてしまうのかも…」


「へぇ日芽子先生は長女だったんですね。ホントそれっぽいかも。」


「末の弟が今年で中3でね。ちょうどあなたたちと同じぐらいの年なんだ。だから美星くん見てると、弟みたいに思えちゃってね。」


「…!?」


なんだと!?日芽子にとって俺は、弟でしかなかったのかよ!?

それって日芽子からすると、俺は男に見られてないわけでマジ悔しい。


「あぁなるほどね。じゃあ、つい甘やかしてしまうのも判らなくはないなー。」


俺の体は震えていた…

それにすぐ気づいた日芽子は


「あれ?美星君?やっぱり調子悪いの?」


「…違う……」


「でも、身体が寒そうだし、冷たい麦茶よりあったかいお茶の方がよかったかな。今、用意するね。」


日芽子にすごい気を使わせてしまった。


「あんた、マジで大丈夫なん?」


真理にまで、顔を覗き込まれて心配する有様。


昨日はホントにいろいろ気にしすぎて、眠れなかったのもあるが、今はそれよりも日芽子の本音を聞いてしまったことの方が応えている。


いくら体調がきついからいって、真理や桜野先輩の手前、そんなことなど間違っても言えやしない。


「ごめんね。あまり気が利かなくて。」


日芽子が俺の前に暖かい茶を出してくれた。

暑い夏にあったかい飲み物というのも変に思うかもだが、調子の悪いときに冷たい飲み物を飲むのはやっぱり身体によくないとは聞く。

俺は気が進まなかったが、日芽子がせっかく入れてくれたお茶を無駄にはできないと思って、飲んでみた。



「……いい味だ…」



心の底からそう思えたぐらいそのお茶の味はとてもおいしかった。

なんか、ものすごくホッとした気分になれた。


「よかった。元気になれたみたい。」


日芽子が淹れたお茶だからというのもあるが、本当にうまかった。


「……あ…ありがとう…。…マジで……助かった…」


今度こそ、きちんとは言えた。

ホントに礼というものは素早く言わないと後悔するいうことは、今回のことで学んだと思えた。これまでのことを考えると、俺はなかなか素直にお礼が言える奴ではなかったんだなとこの年になってようやく気付いた。


「もう、大げさなんだから。」


まぁ、お茶一杯で大げさに見えるかもしれない。

それだけでも、かなり落ち着けたということには違いなかった。



「美星くん。」


「?」


「何があったか、わからないけど…」


そう。言うまでもないと思うから言わない。

不良から、女の子に助けられたなんてこと、このご時世でもなんか言いにくい。

それにそれって、命の給料ダブルで守られておいて、お礼一つ言えてないなんて、やっぱり恥ずかしすぎて言えない。


「まず、やれるだけのことはやってみたら、どうかな?」


「え?」


やれるだけのことって?

アイツとは連絡先すら交換してないから、捕まりそうもないのが一番の難問。

そこをどうにかしないことには、何もできない。


「それが仮にうまくいかなくっていい。とりあえず、何も動かないことには、なにも得られない。」



そうだ。

自分で動かなければ何も得られないんだ。


「先生ありがとう!」



俺はそう言ってその場を後にした。



そのあとすぐ保健室では…



「なぁに?あれ?」


「さぁ多分、お父様に怒られたか…でしょうね…」



「え?先生。私もこれで失礼します。今日はありがとうございました。」



といって真理は俺を追いかけてきていたのであった。

そして、日芽子は二人の反応を見て、美星の父とはそんなにもこわい人なのか?と思うのであった。




俺がやっと校舎を出たばかりの時だった。

俺は変な団体を目の当たりにした。



それはアラブの民族衣装?とは微妙に違った感じがする民族衣装を着た3人とスーツの男が一人。校舎に向かって歩いてきた。


そしてその背後にまた、さっと隠れる黒っぽい影を3つぐらい見た気がした。


何なんだよ?あいつらは?

まぁいいや無視していこうとした。

が、そいつらは俺に近づいてくる。


そして、民族衣装を着てる中でセンターにいた男が


「ソコノキミ ココデ イッチャン エライ カタハ ドコニイマスカ?」


すごい日本語の片言で話しかけてきた。

一応、日本語は喋れるらしい。

外見は褐色で健康そうな肌にグリーン系な瞳は俺でもマネできないジャンルが違うイケメンだ。日本語さえ喋らなければ、そしてオーラはまさに完璧すぎる威厳で圧倒される勢いがあった。


もし、日本語で話しかけられなかったら、俺はそれこそ固まってしまいそうだ。


なんだ?こいつら?まさか、何年かに一度受け入れている留学生とかか?

まぁ一応そういう制度はあるとは聞いてはいる。



俺はあまり関わりたくないなと思いつつ…



「あそこの玄関に入って、すぐ左が校長室な。」


「アリガトデス」


ものすごい屈託のない笑顔で礼を言われ、俺ですらドキッとしたぐらいだ。

性格的にはかなり素直らしい。


なぜか俺は、この男に運命のようなものを感じた。

俺は思わずその男が校舎に入っていくまでの間、ずっとその男に見入ってしまった。




そこへしばらくして現れたのが…



「………美星。」



近くの影でこっそり隠れていた真理を発見した。

真理はこっちこっちといわんばかりに俺を手招きしている。



俺はそのまま真理に誘われるがまま、一緒にファミレスに入ることとなる。



「もう、あんた何してるの?私がやっとあんたに追いついたと思って、校舎から出たとたんになんかすごい人たちと喋っててさ、ホントびっくりした。」



そうです。


なんでか判らないけど、昨日からお前含めてホント個性的な人に絡まれっぱなしです。

とこっちが言いたいぐらいの突っ込まれ方をされてしまった。


「それもさー校舎出たら、黒づくめでグラサンかけた変な人たちまでいて、忍者みたいにいきなりさっと消えて、ホント一人でいて怖かったんだからね!」



「え?まじで?じゃあ俺が見た変な影は見間違いじゃないんか?」



「あんたも見たの?」


「いやはっきりとは見えなかったが、俺たちが当番していた時から、周りになんか気配はあったぞ。」


「うそー」


「てか、お前その陰の正体までそこまではっきり見えたんか?」


あの影の正体をはっきり見た真理は、マジですげぇ思えてしまった。


「なんか、学校でまた変なことが起こりそうね…。」


「いや、あれは何年かに一度の留学生だろ?」


「そうだといいんだけど…、さすがに同じ背格好をした人を二人も見たから、イヤな予感しかしないんだけどね。」


確かに見た限りでは怪しい感じしかしない奴らだった。

それにしてもどこにでもあるしがない公立高校でも、そういう制度があるのはホントレアだ。


「それはそうと、あんたもういいかげんにしなさいよ。」


「なんのことだよ?」


「藍沢さんのこともそうだけど、もういい加減な気持ちで、女子で遊ぶのやめなさい。」


それかよ…


「別にいいかげんなんかじゃねぇよ。誰だっていいわけじゃないし。」


そう、俺だって告られた全員にOKだしているわけではない。

そんな全員に相手していたらキリがないから、それなりに選んではいる。


「じゃあなんで、藍沢さんみたいな…、えっとなんというか…。とにかく女子の間ではそこが「なんで?」という声でいっぱいだってこと判ってる?」


まぁはっきりとは言わないけど、さすがの真理でも藍沢のことはそう思いますか…

まぁさすがに高校生活最初の学園での彼女?があそこまでゲテモノじゃ、誰もが納得もいかなさそうだし、そうも言いますかな。


「まぁこれは俺も何度か言ってるけど、アイツの押しがあまりにも強烈すぎて、譲歩した結果ああなっただけだ。それでも俺は冷静に「3日以内のうちに俺を好きにさせることができなかった場合はもう関わるな」と条件をアイツに押し付けてはずだというのに…」


藍沢は未だに俺との復縁を期待しているらしいとのこと。

それもそうなった原因として、俺と付き合った尾は自分ひとりであり、それ以降に俺と付き合った女は誰もいないということから、そこを自分一人で勘違いしているらしい。

というか「たがが3日彼女、されど3日彼女」という、過去の栄光にすがってまで、他の女子生徒らにマウント取っているとのことで、俺もあきれてものが言えない状態。


「まぁ元々俺は、高校入ってから彼女作るなんてことしない予定だったからなー。」


「それって日芽子先生のため?」


それを言われて、


「さすがに気づいていましたか…。まぁそういうこと…。」


確かに高校入っても夕里に悦子に鈴々とかいろいろいたものの、いずれも中学から続いているだけなので、高校からの新規はいない。まぁ藍沢が一応いるにはいるが、それはノーカンでもいいぐらいな存在だ。


「それにはっきり言うが、俺は藍沢とは一回休日にデートはしたのは認めるが、それ以上は何もない!」


正直、藍沢とはその契約期間3日の間で何もなかったのだからな。まぁさすがに藍沢が商店街の福引で当てた高級ホテル一泊チケットを持っていたのは、マジでびっくりはしたものの…。

結局はホテルのラウンジに入ってお茶するだけで済んだのはホントに助かった…。


実はちょっとした伝手でもっていた睡眠薬を使って藍沢を眠らせたんだよな。ホテルスタッフ呼んで藍沢を部屋まで運ばせ、俺はそのまま帰って事なきを得たんだよな。


まぁ普通は逆の意味で悪用する奴のが多いけど、俺はどうしても藍沢と関係もつのだけはごめんだったのでそうしたわけだ。まぁそこはしゃーない思ってほしい。


だから、高校生になった後の俺はいろいろ無垢ですよといいたいぐらいだ。


「まぁお前が、何が言いたいかはわかる。だがな、俺が今まで付き合ってきた女は誰一人として俺からちょっかい出したわけじゃない。向こうから来たことだ。」


「んー…」


「ただ誰がなんて言おうと、これだけは言い切れる。俺が好きになったのは、日芽子だけだ。その日芽子にも「卒業までは無理」とすでに断られている。」


「ってホントに先生相手に告白したんだ。」


「俺は卒業するまでには立派な大人の男に成長してから再度、日芽子を振り向かせる気だから、それまではそっとしておいてくれ。」


「はぁ…あんた一度決めたら、ホントに聞かないんだよね…」


そういうこと。

まぁ藍沢のことを理解してくれたことはいいことだ。

面倒事は真理によろしく頼むということで。


って?あれ?ちょっと待て?真理が目の前にいることは…


「おい、桜野先輩はどうした?」


「え?保健室に置いてきたけど、何?」


「お前なんてことしてくれるんだよっ!?」


「え?」


「日芽子が男と二人きりになってしまうじゃないかよっ!?」


言い忘れていたが、桜野先輩は園芸部では数少ない男子部員だ。

それを…それを…日芽子と2人きりだと…?



「え?だめだった?」


「ダメに決まってるじゃないか!おい今すぐ戻るぞ。」


「もう遅いって!」


といわれて


「遅いって⁉日芽子はもう、桜野に喰われてるのか!?」


「もう、落ち着きなさいって。桜野先輩がそんなことするようなタイプに見える?」


はっきり言って、あの平和主義者からしてそうは見えないが桜野が男である以上、俺は信じられない。


「男を誰でもあんたと同じみたいに思うのは、やめなさいって。」


「…」


「それにあんたって、そんなにも嫉妬深かったっけ?」


「嫉妬も何も…」


「まさか本命に対しては違うっていうあれ?まぁ桜野先輩だから大丈夫思うよ。少なくともあんたよりかはそういう意味で信用できる。」


「お前なぁ…」



こんなやり取りをしている俺たちにとんでもないものが迫っていた。


「美星お久しぶりー。」



振り返るともう会いたくない人物がいた。


中学の時の元カノ青柳 麗だ。


「うらら、寂しかったぁー。やっとあえたぁー。」


こいつだけは会いたくなかった。

中学の時、俺の人生を一度潰しかけた女だ。


「青柳、お前の現旦那はドボドボだろ?ドボドボはどうした?」


ドボドボとは、俺の元同級生知保のあだ名だ。


「ドボドボ…?ああ、知保のこと…?あははははー。そんな男、とーっくに見限ったわよーっ!だってぇあいつーダッサいんだもんw」


見限ったっておまえ…確か…



その時、俺は真理と目が合った。

真理は口パクで「逃げるよ」という合図を送っていた。


とりあえず…財布を握って…

最悪千円札さえ、さらっと抜ければ、なんとかなりそうだ…。


そのあとは席を立って、レジまで猛ダッシュした。


その様子を青柳はしばらくポカーンとみていた。

青柳は常人より動きはとろい事は承知だ。

だから、少し時間がかかりそうなことでも、何とか逃げられる。



俺らはなんとか勘定を払い終わり、そのあとも猛ダッシュで店を出て逃げた。

まぁ一応、店の外まで青柳は出てきたようだが、そんなことだとお店の人につかまるのは目に見えているだろう。


「あぶなかったねぇ。」


「まさかここに来るとはな。」


俺は中学卒業とともに引っ越した。引っ越した原因は青柳のせいである…。


まぁ青柳は藍沢なんかより、ずっと危険な女だ。


「でもまぁどっちにしても、あいつが俺らのことばかりを追ってる余裕はないから、よほどのことでもない限り大丈夫だけどな…。」



とはいえ、これで変な奴に絡まれたのは昨日から3度目である。



もういい加減イヤにもなるが、それでも俺にはやらないといけないことがある。


それに月路を探すにしても、これまで以上に変な奴に関わる可能性だって大いにある。だから、こういう事態にも慣れないとである。



さてと…


と思った時だった。



「ところであんた、折音さんになに怒らせたの?」


折音は、俺の親父の本名である。

真理の一家はみんな、オヤジのことは名前で呼んでいる。

ちなみに「折音」と書いて「せつお」と読む。漢字での書き方は変だが、読み方はいたって平凡すぎる名前だ。



真理曰く、俺がオヤジを怒らせたとのことだが、ここ最近、俺はオヤジを怒らせた覚えは全くない。


どういうことだ?



「え?オヤジ、なんか怒ってたのか?」


「え?怒ってないの?じゃあなんだろう?

折音さん、滅多に怒らないから、美星が折音さんに怒られた聞いて、保健室から慌てて美星のことを追いかけてきたのに。」


ん?待て?保健室からだ?

え?全然読めないや。


「とにかく日芽子先生が心配してたとだけ。」


「ああそうなのか…」


あぁ日芽子が気にかけてくれていた結果か…

そういえば、日芽子もうちのオヤジが怖いと思っているんだっけ?

それなら合点がいく。


「真理、俺はこれから人を探さないといけない。」


「え?ちょ…これから試験期間に入るのに…テストはどうするわけ?」


まぁ確かにこれから試験期間に入る…でも…


「知らん」


「え――――っ!知らんってちょっと――――っ!!」



というか今のところ試験のことなど、考えてられん。

それより、自分の気持ちに引っかかりがあるままだと、試験勉強をするにしても集中できない。問題はそこだ。


「では真理!今日はここでさらばだ!」


「え?」


「あ、そうそう金髪ショートの人物を見かけたり、心当たりあったら、俺のところまで報告ヨロ。では。」


「金髪ショートって…?」



俺はそこで真理と別れて、今から街に出てツキジを探しに行くことにした。

これが、かなり時間がかかることになるとは、今の俺では思いもしなかった。








ホントにすぐに見つける予定でいたのに、あっという間に金曜日になってしまった。


あの日から、学校の時間以外の時は塾をさぼり、バイトもキャンセルしてまで、夜も遅くまで探しているのに、さっぱり見つからなかった。まぁ今週はテスト期間だから、バイトは元々キャンセルしていたけど、また塾をさぼってしまったことで親父に連絡がいってないことを祈るのみだ。


当然、夕里や悦子との密会デートも今週は全部パスした。

あまりパスしたこともなかったので、彼女たちもかなり驚いていた。



何でいないんだろ?


それもいろんな人に聞いてみても、金髪ショートのツキジという少女など見たことがないという人が多く、何も情報が得られなかった。

ただ、たまにそれっぽい子を見かけたという人もいた。


それは…通称トミーさんという、もうこの街の主といってもいいほど、顔の広い人物だった。


「ああそれっぽい子だったら、ちょっと前からたまに見かけてるわ。

というか、ゲーセンにも来てた記憶あるけど、なんか気に入ったゲームがなかったっぽくて、すぐ出ていったな確か…」


「え?どこのゲーセンですか?」


「んー?俺のバイト先のゲーセン。少しだけ喋ったことがあるかな。すっごいきれいな子だったよね。俺のバイト先では結構目立ってた。」


といって、そのゲーセンに連れて行ってもらったけど、ツキジは一回も現れなかった。




そこへ…




「トミーさん。見つけたよ。」


「お?」


トミーさんの友人が店に駆け込んできた。


「今、すぐそこのクラブで、例の金髪ショートの美少女踊ってる。」


「よかったじゃないかー。いるってさー。」


「ありがとう!君、今度なんかおごる!またnineで連絡する!」


「俺は?」


「もちろんトミーさんも!二人ともマジでありがとう!」



俺はゲーセンを後に、そのクラブへと向かった。


それにしても、ここまで遊び人と言われてる俺でもクラブは初体験である。正直、こんなところ怪しげすぎて入ったことがない。

というか、ここ未成年が入ってもいいのか?なんかいけない気もするが、そうなるとツキジはいったいいくつなのだろう?どう見てもそういう年頃にしか見えない外見だけど、実は結構年食ってるとか?そういうパターンもあるのか?


そしたら受付で…、



「あ、未成年者は…」



というものだから、ああバレた…とさえ思った…



「利用時間が21時までとなりますが、それでもよろしいでしょうか?」


とのことだった。


どうも詳しい話を聞く限りだと


どうやら入場料金さえ払えば、21時まで自由に踊っていていいらしい。

今は風俗法も厳しく取り締まっているので、そこの抜け穴を考えて作った特殊なクラブとのこと。


とはいえ、人が大勢集まる場所ゆえにやっぱり変な奴もやっぱりいるとのこと。



そこに入っていくと…


ステージの最センターで派手に踊っていた…


あのツキジが…

最高の笑顔で楽しそうに踊っていた。


かくいう俺は、クラブ初心者でダンスなどさっぱりだ…

よくもまぁ、あんなうまく踊れるものだなーと思いながら、ステージ下でやんのやんのして盛り上げている中で、俺も適当にはしゃぐしかない状況だった。


もう、ある意味ちょっと派手なライブハウスな感じだった。


やっぱりその中でも一番目立っているのはツキジだった。



「あの子すごいよねー」

「つい最近よね。たまに見かけるようになったの。」

「というか、どこからきてるんだろ?」



とステージ下ではツキジのことが、噂になっている。



「あの子のこと何か知ってるんですか?」


とにかくツキジのことで何か情報を知りたかった。

だから、全然知らない子たちだったけど、とりあえず話しかけてみる。



最初は「え?」と警戒されたけど、



「実は私たちもよく知らないの。もうほんとにあの子が来たのが、ここ最近だから。」


「じゃあ、連絡先を知ってる人とかもいないの?」



「ああでも、ゲーセンのトミーなら知ってそうだけど…」


「いやそのトミーさんですら、知らないっていうものだから…」


「だったら、私たちは余計に判らないわね。」

「そうそうここ一帯は、あのトミーさんが主で仕切っているようなものだから。」


やっぱりみんなトミーさんのことは口々にそう言っていく。

トミーさん本人は「そんなことはない」とは言っているが、やっぱりトミーさんがこの辺りの顔なんだろう。



ツキジはなかなかステージから降りてこないと思ってたら、いつの間にかステージから、姿が消えていた。


どこに行ったんだろ?


周りを見渡してみるとツキジはすでに出入り口の方にいた。

どうやらもう帰る感じだ。


まずい。ここは早く追わないと!



俺は急いで出入り口に向かおうとするが、人がいっぱいいてなかなか思うようには進めなかった。そうこうしているうちにすでにツキジは外に出て行ってしまった。




はぁ…やっぱり間に合わなかった…



外に出たはいいがツキジはすでにいなかった。



全くホントに素早い奴だ。

毎回、逃がしてしまうんだよな。




と思っていた時だった



「よっ!」


「わぁー!」


いきなり、ぬっと誰か現れたか思ったら、


「そんなに大声出すことないじゃん。」


ツキジだった。



「なんだぁー。お前もこんなとこに来てるのかー?この遊び人めー。」


遊び人って…俺こんなところ来たの、初めてなんですけど?

遊び人なのは、お前の方では?


と言おうとした時だった。


「あー!さっきのお姉さん!」


何か声がした。その声主は俺らの目の前に現れた。

あれ?こいつ…?



「さっきのダンス、めっちゃうまかったっす!」


「ああ、見ててくれたの?ありがとねー。」


「俺にも教えてくれませんか?」


と2人で会話し始めた。


おいおいおいおい…

こいつ、先週俺にカツアゲしようとしていた不良グループの一人やん。


よくもまぁ喋れますこと…

そんなことお構いなしなのか?殴った相手の顔すら覚えてないのか?ツキジは平気で会話していた。


俺はもう、このままだとまずいと思った。

まぁ不良たち目線、ツキジの顔は後ろから不意打ちされて倒されたから、見られてはないけど、俺の顔は明らかにこいつらに見られているわけで。

でも、今ここでツキジと喋っているこいつは、なぜか俺の顔を忘れてるという。やっぱり、やられた側は覚えていてもやった側は忘れるというあれか。



「おーい!パシリン!」


は?パシリだと?誰のことだ?


「あーリーダー。ザコっちにシタッパーも。」


ってパシリって、こいつのことかよ!?

にしても、リーダーは判るとして?他の奴の呼び名がザコっちとシタッパーだと?どういう呼び名で呼び合ってるんだ?こいつら?


と思いながらも…これやばくないか?



「おい!逃げるぞ!」


というわけで前回同様にパシリがこっち見てないうちに逃げる。

今回は逃げる宣言した側が逆なだけで、俺らは先週同様そいつらから思いっきり逃げた。



逃げた先で

先週同様、俺は息を切らすぐらいきつかったというのに…

ツキジはやっぱり、息ひとつ乱してなかった。


「いきなり逃げるって?どうした?」


「ってお前気づかなかったのか?あいつ、先週おまえが殴った奴らの仲間だぞ。」


そうだ。

あのパシリンという奴は、先週ツキジが唯一殴らずに済んだ相手だ。

そう、あのまま仲間を置いて逃げてしまったのだから、あの中では最弱な奴なのだろう。


「ああマジかー。それはまずかったな…。ありがとう。」


ありがとうということで思い出した。



「俺の方こそ、先週はありがとな。先週は礼一つ言っていなくて本当にすまなかった。もうそれのためにお前のことずっと探してたんだぞ。

いったいおまえどこにいたんだよ?あのクラブにはよく行くのか?」



ホントこいつにはいろいろ聞きたいことが山ほどある。


「探してたって?いつから?」


「お前と最後に会った翌日からずっと…」


「えーなにそれー?あたし、そんなにも毎日外に出れないよー。でれるのは金曜日ぐらいだし。」



「え?」


そういえば…思い返してみれば…、こいつを見かけるのは決まって金曜日の夜だけだったりする…。

てことは俺、すごい無駄足を踏んでたわけか…。

あ、でも今週になってトミーさんと知り合って、うまいことツキジを見つけることができたのだから、そういうわけでもないのか。



「とにかくお前には何もお礼もないままだったから、ずっと気になっていた。だから、今日なんかおごるよ。」


と言ったのだが…


「いいよ。そういうの。あたしはお礼言ってくれるだけで充分。だから、これ以上は気にしないで。」


なんか、思っていたよりいい子過ぎて尊いかも…。


「うわーっ、お前マジでいい奴だなー。俺やっぱりずっとお前のこと、探して正解だったと思うー。もう来週のテストなんか、マジでどーでもいいー!」


と思わず叫んでしまった。


「ん?テストって?どういうこと?」


「まぁ来週の月曜から学期末テストなんだけどなー。お前のことが気になって気になって、しょうがなくてな。勉強に身が入らんかったんよー。まぁそれで勉強なんかさっぱりやってなかったけど、もうどうでもいいかーと思えてきてなー。」



ともうホッとした途端に口が変にペラペラと動いていた。

そしたら、いつの間にかツキジはすごく険しい顔をしていた。



「んー…やっぱり…甘やかしたかなぁ…でもなぁ…」


「はぁ?」


ちょっと待て?何かどこかで聞いたセリフ…だ。なぜここで…?こんな時に?


「甘やかした…って、俺に言ってるのか?」


「多分…」


うわ、また同じこと言われた…。しかも二重で…。俺、何か悪いことでもしたか?


ツキジは何かを改めた感じで、俺の顔をじ―――っとみてきた。



「それやっぱり、全然よくないよ!今から帰ってすぐに勉強しよう!」


ツキジはそう言って、俺の手首をつかんでまた、俺の家まで走って向かった。


「ハァハァ…お前、こんなにも走って、よく疲れないよな…。」


「え?そうかな?」



そして、あろうことかツキジは俺の家の中にまで上がりこんできた。

というか、お前よく知らない男の家に上がれるよな?危機感ないのか?



「ねぇ親御さんとかは?」



ツキジは家に上がってようやくその疑問を持ち掛けてきた。

って、よくぞそれを聞いてくれましたと言わんばかりに…


「あぁオヤジはほとんど帰ってこねぇよ。」


と言い切ってやった。

もう内心、ここで恐怖心を煽ろうとニヤニヤが止まらなかった。



「そう」


あれ?それだけで納得?


「多分、女のとこ。」


「………」


あーあ黙り込んでしまった。これは引いてるな…


「…そ…なんだね……。てことは…ま……父子家庭なのね……。」


ツキジにしては聞き取りにくい喋り方をしている。

あれ?なんか悲しそう?まさか、複雑な家庭に育ってることが判っての同情か?


「ああそうそう。それがなに?」


俺は、それでも意地悪く返してみる。

こういう状況もう、いろいろなれたし、もう、うちが片親だと判ると各自がいろんな反応するから、ホントこういう時っておもしろい。


「ん、うちも父子家庭みたいなものだから…同じだなって…」


は?父子家庭みたいなものって?


「どういうことだ?」


「あ、うちね。父が再婚して母親は継母だったのね。」


ああ、継子はあまり構ってもらえないという家庭か。

ホント、離婚したり再婚したりするぐらいなら、最初から子どもなんか作るな思う。

子どもの迷惑も考えろって…

その点、俺のオヤジは彼女を作るが、絶対に結婚はしないタイプだ。一緒に住むなんてことはまずない。ただそのかわり、ホントにとっかえひっかえばかりしてるけど、俺から見ればそこまで迷惑はしていないし、そういうのは慣れた。


「って?今「だった」とか?過去形じゃなかったか?」


「うん、今ではその継母は死んで、お父さんのみ。」


なんだよ?なんかツキジのオヤジさんもつくづく奥さんに恵まれない人だな。


「そうか、お前もたいへんだったんだな。

俺のオヤジも女癖が悪くてな。多分、母さんもそんなオヤジに愛想尽かして、出ていったんだと思うけどな。」


「思うって?」


「ん?」


「お母さんのことは何も聞いてないの?」


ああ「思う」って俺があくまで予想したことでしかものを言わないからか。


「ああ、何も聞いてない。オヤジも話したがらないから、多分そうだとしか言えないな。」


それを聞いたツキジはなんか寂しそうな顔をしていた。


「そう…なんだね…」



ったく他人事なはずなのに、そんな悲しそうなリアクションとられると、こっちまで調子が狂うではないか。


なんか想定していた期待通りな反応しないから、俺は少し罪悪感を持ってしまった。そこまで真剣に人のことを考えてくれる子とは思わなかったな…。ツキジならもっとあっけらかんとした反応するものばかりかと。


これは、だいぶ意地悪くしてしまったなと少し反省した。



ツキジは顔をうつむいたまましばらく黙っていた。



「…」


「…」


「…」


「…」


ああ、こんなしんみりした沈黙の時間がちょっと厳しく思えてきた。

どれ…ここは、この手のことでは先輩な俺が慰めて抱いてやろうか…と考えていた時だった。



「そうだ!勉強しないと!」



「うわっ!」


といきなり顔をあげて言ったので、マジでびっくりして声まで上げてしまった。


「え?どうしたの?」


どうしたの?じゃない!

なんか、一気に冷めてしまったじゃないか?


「さぁ始めて。あたしなんか夜食作ってくるから。」



え?え?え―――――――――っ!!



もう、何なんだこの女は?


そんなわけで。ツキジはキッチンで夜食を作り、俺はダイニングテーブルで試験勉強という形で収まった。これってどこかの小学生が食事前に、お母さんの近くでお勉強みたいなそんな家庭的な状態ではないか?俺は生まれて初めて、そんな感覚を味わった。


それにしても、今うちにまともな飯が作れる材料などあったっけ?


もう典型的な男世帯なので、材料なんてロクなものがない。下手すれば使いものにならんほど、腐ってるものとかもないか?と思うぐらいだ。


これ、絶対にまずいものを食わされるフラグである。


「はいおまち。味噌ラーメン一丁ね。」


出されたものは味噌ラーメンという、今まであまり食べたことがない味のラーメンだった。ただ別に嫌いってわけではない。


「というか、味噌味のラーメンの在庫なんかなかったはずだけど?」


「ん?ああ、そのスープはあたしが作ったみそ汁だよ。一応、味噌はあったからね。」


「え?」


おいおいおい、みそ汁にラーメンなんていれたんかよ?


「そんなに驚かないでよ。もともと味噌ラーメンって、発祥地の北海道曰く、みそ汁にラーメンという組み合わせからきてるのだから、これであってるんよ。」



「マジか…」



俺はもう、覚悟を決めた。おそらくゲテモノを食わされる…


と思って、目をつぶって一口…



って、うまいではないか…



「ね、いけるっしょ?」


「うん、うまい。」



というか、こんなにうまい味噌汁は初めてだと思うぐらいうまかった。


「あ、そうだ。お前金曜日は動けたよな?」


「あ、うん。何?」


「次の金曜に俺の学校でバザーがあるんだけど、よかったら来て。」


と俺はツキジに学校からのチラシを渡した。


「あ、うん。ありがとう。」


「どうした?」


「これ、私がもらってもいいの?お父さんは呼ばないのかなって。」


「ああいいんだ。どうせオヤジは呼んでも来ないし、なら来れそうな人に渡す。」



まぁそういうもんだ。

オヤジは俺が思っている以上に忙しい。

それに家での食事中で会話するなんて、かなり珍しいことだ。



そして俺はあっという間にラーメンを、汁まで全部平らげてしまった。もう一杯おかわりが欲しいぐらいだったが…


食べ終わって俺が顔をあげて見渡した時には、ツキジの姿はもういなかった…

そしてラーメンを運んできたお盆の上を見ると、小さな封筒が置いてあった。


あ、これにnineのアドレスでも書いてあるのか?と思いきや…



手紙の内容は



「テストがんばれ!

月路より」



としか書いてなかった。裏を見ても連絡先は一切書いてなかった。


あいつらしいや…


ツキジって。

耳で聞いただけだと男みたいな名前だと思っていたけど、こうして漢字で書いて見る限りではそうでもないなというイメージだな。


ホント月路って、掴みどころがない奴だ。


そんな不思議な奴に振り回されてしまった分、これから頑張らないとな。

俺は今さらながら、テストに向けて頑張るのであった。


そして、また来週の金曜日…次はどんなことが起こるやら…




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