2年後
待望の休日はこれまでの人生で稀に見る最悪なものとなった。
溜まった洗濯をしようと思っていたのに、起きたのは昼近く。午後になって出かけようとしたとき、先月受けた面接の不採用通知が届いたのだ。
今回の通知はある意味、人の短所を徹底的に追求されては人格否定にまで及んだ腹立たしい1次面接を通過した証でもあった。それをまたこうしてバッサリ斬られてやられてしまったわけであり、一縷の望みを密かに託していたことも我ながら呆れる。
ちょうど2年前の春先。
S駅まで歩いた間の何げないひとときは、僕の中でとても大切な思い出として輝きを放ち続けている。
会話の序盤で交わしていた互いの連絡先。
僕にとっては家族以外で結那に続く2人目の女性。漢字を聞いてサクサク打ち込みながらカオリは「もしかかってきたとき、誰かわかるから安心」と、自らはかけないとしつつ儀礼的なものでもないさりげない気遣いで自分の番号を教えてくれた。その時点ではカオリの事情を知らないながら、できるかぎり有効活用できる関係になりたいと密かに思った。
結局それから1時間もしないうちにカオリは彼と再会。2人でS駅を後にしたわけだけど、僕にとっては夢を叶える希望の蜘蛛の糸と化したのはいうまでもない。
あのとき打ち明けたことが夢物語になってはどうしようもない。ほんのわずかでも結果を残すために日々考え、過ごしてきた。
まずは結那といっさい連絡を絶ち、一人前の社会人になろうと決意。理想どおりにはゆかなくても、いつかカオリと再会したとき、胸を張っていられる男でいられるように。
いつまでも親のすねをかじっていてはダメだとアルバイトを辞め、わずかな貯金でひとり暮らしを開始。最初の数カ月は湯水のようにお金が出ていったものの、何とか節約して凌いだ。ただし契約社員として入ったところはあまりに過酷だった。
拘束時間が長く、休日はほぼ睡眠。その割に給料は特別高くもなく、収入と支出が相殺されてはまた翌月。入り用な物を得るには親から借金。就職先はことごとく蹴られ、それでもいつの日か夢を叶えようとこれまで2年間やってきた。
2つ目の面接を終えた帰り道。
行きと同じ地下鉄を乗り継ぐ前に喉が渇き、ふと目にした公園に足を踏み入れる。
ネクタイを緩めて缶ジュースを一気飲み。これから帰った後のことが頭に浮かんでは抑えきれない感情が込み上げてしまった。
初めて電話帳を広げ、カオリの番号をタップ。グレーの楕円の顔を見つめながらコールを待つ。
今まで頑張りが間違っていないという証明、ささやかなエールがほしくなった。
正直寂しかった。ただ、これから果てなく続く夢の道のりに僕はまだ本気の覚悟ができていなかったことを思い知らされる。
電話はワンコールもしないうちに、
「この電話番号は現在―――」
Bad ending of “Yuna & Kaori”




