魔王……?
明日も投稿します
戦いは一瞬にして終わった気がする
勿論結果は完敗だったと思う
しっかりと覚えてないが多分勇者に殺されただろう
ただ その瞬間は走馬灯のように過ぎた
死後も尚 続いた走馬灯には人の一生のようなものを見た気がする
そんなことも関係ないか…もう死んだのだから…
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「ん……?生き…てる…⁉︎」
ギルドバートは生きていた
なぜかは分からないが生きている
しかし生きている理由を考えている余裕は今はない
この生の喜びを知った今はそれを噛み締めるしかない
「…ん? …この姿は…」
少し経ってから異変に気付く
なんと自分がしていたのは『人間の姿』だった
それも勇者のような屈強な体を鎧に包んでいるわけでもなく、いたって普通のどこにでもいる姿
いわゆる『村人』と言ったところか
そのような姿をしていた
一層深まる謎を持ったままギルドバートはさらなる謎を持つ
『今の自分が村人なら前の自分の体の持ち主はどこへ行ったのか』
「まぁ…そんなこと言ってる暇もないか」
とりあえず『自分が何者なのか』を理解しなければいけないギルドバートは 聞き込みを始めた
自分で自分のことを聞くというごく奇妙な行為であったが、自分が村人として転生していることの方が奇妙な気がしてそこまでの違和感を持たずに行えた
しかしわかったのはさらに奇妙な事実だった
『自分は今日までどこに居たのかも分からない』
つまり自分生い立ちや性格だけでなく、名前すらも分からなかったのだ
「どう言うことなんだ……?」
自分が今この瞬間に転生して来るまでこの『人間』は存在していなかった?
否
人間は年月を経て成長する生物である
今の自分の様な成人した姿になるには20年はかかると予測出来る
その間誰にもバレずにここで過ごしてきたのだろうか?
遠くから越して来たという線も考えたが、もうしっかりと部屋が片付いて居るのにそんなことがあるのだろうか
いや、そんなことよりももっと気になることがある
今のこの肉体の持ち主はどうなっているのか
それさえ分かればこの謎は全て解明出来る
しかし……もし自分の肉体が『あの』戦いに勝利していたとなればそれは厄介だ
この肉体の持ち主に会うためには魔王城にまで行かなければいけない
少数ながらも優秀な魔物を村人の肉体でどうにかする事が出来るのか
会ってみれば話が通じるかもしれないがそれはリスキーだ
更に自分の肉体が敗北していたとしたらもっと厄介だ
この肉体の持ち主はもうこの世にいないという事になる
「これは……何が最善手なんだ……?」
その時。
怒号が聞こえた
酔っ払いが怒っている訳でも
虐待や喧嘩が会った訳でもない
村を守る為の怒号
それが意味することはつまり……
「ドラゴン! ドラゴンが来たぞォッ!!」
警戒の怒号である
生まれつき魔王の座についていたギルドバートは分からないが村というものは脆いものである
特殊な事情がない限り
狩りを行うほどの戦闘力がある訳でもない
ドラゴンの猛攻を耐え凌ぎ反撃を繰り出す装置を作り出すほどの技術もない
それが村であり、それが弱者だ
特殊な事情がない限り
「安心しろ!! 私が来たぞ!!!」
ギルドバートが背後の大声に反射して振り返るとそこはあの時の勇者
の姿があった気がした
「お前は……?」
「勇者様! こちらです」
無視された
ちょっと粋がった村の女かと思いかけたがこの扱いを見る限りこの村専属の護衛かこの村の権力者か
今の言葉を鵜呑みにするなら『前者』だろう
「これは…キールドラゴンだな……」
キールドラゴン
もちろん知っている
魔物は自分の専門領域だ
いくら勇者様と言われる人間だろうと知識量では確実にこちらが優っているだろう
「お手並み拝見……だな」
次回
魔王、死亡?




