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第52話 村に寄ろう

 イフリートの首都から徒歩でまる一日半、ようやく見えてきたのは火の神を司る集落であり、アレクサンダーを召喚したシャーマンがいる集落だ。定期便は無いので、歩くぐらいしか方法は無かった。

 辺りは、赤色の土や岩石ばかり広がった荒涼とした大地だ。半日ほど前から木々を見かけなくなり、今では時々雑草を見かけるだけだ。さらに、地面が熱く、気温も上がっていた。さらに、進行方向には岩石だらけの平べったい火山が見えている。火山からは煙が絶えることなく吹き出している。

 その割にはだが、空には黒雲が立ちこめていた。雨でも降るのだろうか。


「この辺りは、火山の影響で温暖だそうだ」


 額の汗を拭き取りながら、アレクサンダーが説明する。


「温暖つーか、暑いわ!」


 俺もアレクサンダーもとっくに上着を脱いでいた。こんな場所でわざわざ暮らしているのか。


「暑いのは季節のせいだろうな。一般的には温暖な土地だそうだ」

「地球だと、こんな場所で暮らしているのいねーな」

「サラマンドラの監視をする必要があるからいるのだろうな」

「近くにサラマンドラがいたりしないよな?」

「サラマンドラは火山の火口付近にコロニーを作っている。コロニーからはぐれが出るのは10年に一度あるか無いか程度だそうだ」

「そうかい。またやれって言われても無理だぞ。藤崎のおっさんもいないし」


 あの時の戦いから変わったことと言えば、アレクサンダーは細身の剣を持っていること、俺は柄が長く刀剣ほどのリーチはあるメイスとナイフを数本もっていることぐらい。何一つとして対抗手段が怪しいし、この場所だと水が貴重かもしれないとなると、アレクサンダーの戦力も半減と考えて良いだろう。最も、雨が降ってしまえば気にする必要もないだろうか。


「確かに、厳しい戦いになるな。だが、安心しろ、僕が聞いた話では、他にはぐれになるような個体はいないそうだ」

「なら、いいか。いや、本当に大丈夫か?」

「疑り深いな」


 いや、こういうときは悪い予感が当たったりするもんだ。俺もこいつも碌な死に方してない以上、あまり運が良いとは思えないんだ。


「それより、かなり近づいたぞ。もうすぐだ」

「へぇ」


 遠目からだが、村全体が石の壁に囲まれて、その中に赤茶色のドームが幾つも建っていて、人影らしい姿も見える。あれだろうか。しかし、この土地のこに土でまともに作物が育つとも思えないし、実質的には何で生計を立てているのだろうか。


「さてさて、収穫あればいいけどな」

「少なくとも、賢者の次の行き先は判明するだろう」


 到着も間もないが、革袋の水筒から残りのぬるい水を流し込んだ。


「あの女が来てないと良いけどな」

「ミズXか。一体、誰が召喚したのだかな」


 その呼称は意地でも使い続ける気だろうか。他と区別しなきゃならないわけでもないのだから、使う必要性が薄いだろうに。


「つーか、雨も少なそうな土地だが、雲行きが怪しいのはどういうことだ?」

「僕に聞かれてもな。雨期でもあるのかもしれないとしか」


 アレクサンダーは、わざとらしく両手を天に向けて首を横に振った。そりゃ、なんでも知っているわけ無いか。

 そんなこんなで、集落の前にまで来ると、一人の男が立っていた。門番だろうか?


「これはこれは、勇者様ですか。こちらは?」


 門番は厳しそうな雰囲気を出していたが、意外にも友好的に、アレクサンダーに話しかけた。


「こちらは、フェニックスで召喚された勇者だ。それよりも、サラマンドラは討伐できたので、報告に来た」

「おお! それはそれは、良かった。お疲れ様です。さぁ、シャーマン様に報告をお願いします」


 そういって、門番の男は門から動き、さらに石壁から伸びている鎖を引っ張ると、石の壁が上へとせり上がっていった。中々凝った作りをしているようだ。

 さて、壁の高さは3メートルも無いぐらいか。それなりのアプリを持って使えれば乗り越えるのに困難さは無いな。


「一応聞くが、何も問題は無いよな?」


 門番の男に尋ねる。


「? ええ。特にありませんが?」

「なら、ミズXは、こちらに向かっていないか、僕たちが早かったというわけだ」

「なら、いいけどな」


 そう言ったとき、頬を何か冷たい物が当たった。

 見上げると黒雲から雨が降ってきているようだ。


「雨って振るのか?」

「この時期には降ります。貴重な水なので、今日の夜にも雨乞いの儀式が行われるでしょう」


 門番の男が恵みの雨に、ややテンションが上がった様子で答えてきた。

 さて、ふむ、だが、しかし、もしもあの黒衣の女が、待っていたとしたら罠を仕掛けている可能性もあるわけだが。

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