第26話 問い詰めよう
突然、謎の男がサラマンドラ戦に乱入してきた。
しかも、異世界救済士で同業者らしい。
そもそも、同業者っていたのか。
だが、同業者なら、先ほどの巨大な水塊を落としたのも彼だろうか。
その彼は、ドヤ顔でシカゴ・タイプライターを撃ちまくっている。
「ハーハハハ! 醜いトカゲめ、撃ち抜いてやる!」
随分と自信満々な態度だった。こういうときに来るこういうタイプって大体は残念なことになるよな……。お約束として……。
で、急な攻撃に、激怒なサラマンドラは、その男、アレクサンダー・ワトソンと言うらしいを標的にしたのか、突進していく。
しかし、アレクサンダー・ワトソンは物ともせずに、足の裏から水を噴出させて高く飛び上がった。飛び上がり、体操の鉄棒競技のフィニッシュのように体をひねって銃弾を放っていく。
ただし、残念ながら、銃撃は効いているように見えない。
華麗に着地後も、木に突っ込んだサラマンドラに銃撃を打ち続ける。
「大して効いてないだろうが!」
丁度、着地地点が俺と歩兵さんの近くだったので、言いたいことを言ったのだが。
「え? 何か言ったか?」
どうやら、シカゴ・タイプライターが五月蠅くて聞こえなかったようだ。事実、その愛称が示すとおりに、ダダダダダッとやかましくて仕方ない。
「効いてないって言ったんだよ!」
「え? なんて?」
不思議そうに聞き返してくる。
「撃つのやめろ!」
大声で怒鳴りつける。
「ごめん!きこえない!」
「馬鹿野郎!」
「誰が馬鹿だと!?」
「聞こえているのか!?」
「え!?なんて?なんて言った!?」
が、弾が切れたのか、シカゴ・タイプライターから銃弾が途切れた。よし、今だ。アレクサンダー・ワトソンはドラム型マガジンを取り替えているが、手で制する。
「効いてないだろ!?」
「聞こうとしたが五月蠅くてね」
「そっちの聞くじゃねーよ。その鉄砲効いてないぞ!」
「いや、そんなはずは。これは、水を弾丸として撃つが、実弾並みの威力だぞ!」
随分と自信満々にドヤ顔で説明する。
「実銃が効いてないんだよ!馬鹿野郎!そんな水鉄砲効いてねぇよ!」
「水鉄砲と馬鹿にするな!」
と言ったところで、サラマンドラが旋回し、大きく口を開けていた。サラマンドラの口から炎が噴出されて、向かってくるのは、当然俺と金髪馬鹿の方向だった。
「あーったく! 」
掌に熱と炎をイメージし、解き放つ。再び、数秒間、炎同士を相殺させていく。
「今のは? 君は?」
「俺も異世界救済士って同業者だよ。とにかく、手を貸せ!」
「いいだろう。最も、僕が来た以上、君の出番は無いが」
「今、正に防御しているんだけどな!」
あー、もう、やっぱり、残念君だったか。こんなお約束なんていらないって言うのに。
「サラマンドラだが、水で冷やせば動きを鈍らせる可能性がある」
「その通りだ。奴の体温は下げればそうなる」
知っているなら、水鉄砲撃っているんじゃない。
「だったら、もっと水ぶつけろ。水塊ぶつけた技あるだろ」
「すまないが」
そう言いかけたところで、炎を吐きやめていたので、俺も炎をやめる。電池を見てないが、結構減ったよな。
「僕も電池が無い。さっきのはとっておきの技だ」
「お前もかよ」
「だが、こんなことならできる」
と、態とらしく指をパチンと鳴らすと、地面をぬらしていた水が、あちこちでスプリンクラーのように水をまき散らし始める。ただ、周囲の温度を下げるだけで、サラマンドラの体温をどれほど下げる効果があるだろう。
「これで、炎も出しにくいだろう」
「で、今度は、炎を出しにくいなら、俺も出しにくいんだがな」
「ふっ、大して君の攻撃も効かないだろう」
「うるせぇよ。水鉄砲野郎」
「水鉄砲と言うな!」
どうやら、水鉄砲は禁句か。幾らでも言ってやるつもりだが。
だが、燃えにくいか。
ふむ、なら、あえて、燃やすにしても燃やさないのも手かな。




