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第十二脱

「いい加減にしろ貴様ら!! 私をなめるんじゃない!!

 領民全員処刑してやるぞ!! 覚悟しておけ!!」


「いや〜、それってただの自滅ムーブっすよ

 民なくして王なし……みたいな?

 あ〜、でもあんたは王じゃなかったね 失敬失敬」


エマは柱に縛り付けられた侯爵で遊んでいた。

彼女はスマホを片手で数回操作し、その画面を侯爵に見せつけた。


『犯人も人質も殺せ!! 一切の証拠を残すな!!』


「……っ!?」


それは先程の戦いの一部始終を録画した映像だった。

娘より物を優先した事、領民を脅した事、邪教徒である事、

そして無様に敗北した姿まで、全てが鮮明に映し出されていた。

異世界人が持ち込むその道具の存在は知識として知っていたが、

ここまではっきりと証拠を残せる機能がある事は知らなかった。


「くっ……、この私を脅そうというのか?

 ……、……、……クソッ! 幾らだ!?」


領内でその映像が出回る分には粛清すればいいだけの話だが、

自分の手が届かない所に及べば貴族社会での発言力を失ってしまう。

体が自由に動けばこの小娘を殺して解決できるが、今は不可能だ。

ここはおとなしく相手の要求を飲むのが得策だと考えた。


「いや〜、べつにお金が欲しいわけじゃないんすよね〜

 どーせこの後、あんたん家の全財産が持ってかれるわけですし

 こりゃまあ勝利宣言ってやつですかね〜

 わたしゃ死体蹴りを楽しめるタイプなんですわ」


「勝利宣言だと……?」


エマは再びスマホを操作し始め、新しい映像を用意した。


『犯人も人質も殺せ!! 一切の証拠を残すな!!』


「ん……?」


それはついさっき見せられたものと同じ映像だった。

少し違うのは画面が大量の文字で埋め尽くされて見づらくなっている点だ。


「なんだこれは…? 私は異世界語なんぞ読めんのだが…」


「あらら?上流階級の人なのに珍しいですね〜

 じゃあちょっくら読み上げてみますかね

 『恥を知れ』『清々しいまでのクズ』『国の恥』『ドブ野郎』

 …他にも多くのリスナーさんから温かいコメントをいただいてますが、

 全部紹介してたらキリがありませんな まあほとんどは罵倒ですがね」


「りすなー?こめんと?

 ……ええい、わからん!! もっと理解できるように話せ!!」


「この映像はもうとっくに世界中に出回ってるんすよ

 わたしの異能は“配信”でしてね、

 この世界初のオンラインスキルなんですわ

 映像を送って感想を受け取るだけの事しかできませんが、

 視聴者の中には王族や学者の方なんかもいたりして

 貴重な情報をゲットできる時もあるんすよね〜」


「異能だと…!? 貴様、異世界人かッ!?」


「チャンネル登録・高評価お願いしま〜す」




ローラはお目当ての小型船を細工して動かせる状態にしたのに、

共犯者が100人くらい増えると聞いて耳を疑った。

しかしまあ、悪徳貴族から全財産を巻き上げるという策は気に入ったので

その大胆な計画変更を受け入れ、新たな船を探した。


停泊している中で一番大きいのはヤンディール国王の船だ。

あれに手をつけるのはさすがに危険すぎるし、そこまでの大きさは求めていない。

良さげな商船や観光船はちらほらと見えるが手を出しにくい。

国の経済活動に影響が出る船は警備が頑丈すぎる。

狙うなら個人所有でシーズン以外はあまり使ってなさそうな船がいい。


ローラは盗む事ばかり考えていたが、現金を用意できるなら

正規の手段で買った方が安全だという考えも捨ててはいない。

元々はカジノで稼いだ金で購入する予定だったし、

朝が来るまでに商談が成立するのならそうするつもりだ。


そして用意しないといけないのは船だけではなくなった。

小型船ならともかく、それ以上となると専門知識を持った人員が必須になる。

農民たちは海に来たのは初めてだと言っていたので期待できない。

脱獄犯の逃亡に手を貸す水夫がいるとは考えにくい。

何人拉致すればちゃんと動かせるようになるのか、手段はどうしようか…。


「ローラ、そろそろ寝たら?

 昨日の夜からずっと起きてるでしょ

 とりあえずこれ飲んで体温めたらどう?」


シンシアがココアの差し入れを持ってきた。

子供なので正直かなり眠い。しかしまだやるべき事がある。


今まで博打で大負けした事なんて腐るほど経験してきたが、

昨晩の負けは何かが違った。悔しさや喪失感以外の感情が湧き上がった。

その謎の感情は仕事の成功でしか掻き消せない気がするのだ。

みんなが帰ってくるまでにせめて船の目星だけでも付けておきたい。


でも眠い。寒空の下、温かくて甘い物を飲んで安心してしまった。

さりげなく毛布に包み込まれ、とうとう耐え切れなくなって眠りに落ちた。




「…だあーーーっ!!」


誰かの叫び声でローラは目覚めた。

なぜかフカフカのベッドに横たわっており、窓の外は明るかった。

部屋にはペットスペースが備わっており、ウネリンはまだそこで眠っている。

そこは人生初のスイートルームだった。


きっと仲間たちが粋な計らいをして休ませてくれたのだろうが、

逃亡中の身でこんな贅沢をしている場合じゃない。

夜のうちに色々と済ませたい事があったのに時間を失ってしまった。

3日くらいなら徹夜できると思っていたのに、結局2日とも寝てしまった。


ここは観光地で人が多いし、協力してくれる大人も増えたので

上手くやればあと2〜3日は潜伏できるかもしれない。

しかし、それに甘えていたら逃げる機会がどんどん消えてゆく。

出入国制限、海上警備の強化、追跡専門業者による捜索。

3日以内に大陸を脱出したかった大きな理由は主にそこらへんだ。


柔らかい寝具は名残惜しいが、身支度を整えて部屋から出た。

廊下にはなぜか女子供や老人、怪我人がひしめき合っており

外の騒ぎが段々と騒がしくなっているのを肌で感じた。

ローラは宿を飛び出し、その騒ぎの正体を目の当たりにした。


鮫だ。


鮫と人が戦っていた。

その数は10や20ではない。どこを見渡しても鮫だらけで、千か万はいるだろう。

地下鮫が異常繁殖しているという話は聞いていたが、それが今爆発したのだ。

下水道で見た通り地下鮫の個体戦力は低いものの、とにかく数が多い。


重装に身を包んだ戦士は死角から絶え間なく攻撃を受け続けて反撃できない。

仲間に回復魔法をかけていた男が大量の地下鮫の死臭にむせ返って嘔吐した。

ローブに三角帽子の女が地下鮫の血溜まりで足を滑らせて頭を打った。

軽装の冒険者が投げたナイフが運悪く横切った他の冒険者の足に刺さった。


数の力、乱戦の恐ろしさは単純な敵の強さとは直結しない。

そしてそれは魔物使いにとって最大の脅威でもあった。

いくら自身が使役する魔物と心が通じ合っているとしても、

他の冒険者からすればただの魔物にしか見えないのである。

ローラは急いで引き返し、相棒を服の中に隠して宿から去った。




シンシアは後悔していた。農民たちとなけなしの金を出し合って、

リーダーへの景気付けとしてローラを一人で高級宿に泊めてしまった事だ。

そんなタイミングで魔物の大量発生。戦闘員は別行動中。


今倉庫にいるのは武器を持った温厚な性格の年老いた農民が50人。

彼らは体力不足と判断されて置いていかれた者たちだった。

それと鮫から逃げてきた地元の住民や観光客、重傷を負った冒険者たち。


エマはスマホでその光景を撮影していた。

セーラのゲロ動画や侯爵の敗北動画を撮っていた時とは様子が違う。

初めて見る真剣な表情であり、事態の深刻さを重く受け止めているようだった。


シンシアは最後のタバコを吸い終わると立ち上がり、

侯爵の足元にあるレイピアとクロスボウを回収して

壁に掛かっていた安全帽を被り倉庫を後にした。




「よっ、お客さん! 忘れ物だぜ?」


ファーレンハイト家の財産を根こそぎ奪い取った強盗団の前に一人の男が現れた。

冬なのに半袖、不自然な金髪、日焼けした肌、引き締まった筋肉、爽やかな笑顔。

それは脱獄2日目にアレックスが立ち寄ったマリンショップの店員だった。

忘れ物という言葉の通り、あの時置き去りにした商品と一緒に彼はそこに居た。


「店員さん……えっと、それは、その……本当に…」


何も言い訳が出てこないアレックスを察してか、店員はネタバラシをした。


「君が脱獄犯だってのは知ってるよ 名前はアレックスだろ?

 別支店で盗難されたボンベの製造番号見てすぐにピンと来たぜ

 ……でもまあ、君が悪い人間じゃないってのも知ってるよ

 悪徳領主を懲らしめるなんざ、なかなかロックな奴で気に入ったぜ!」


また聞いたロックという単語も気になるが、それ以上に気になるのは

ついさっき行われた侯爵との戦闘を知っているような口ぶりだった。


「ほらよっ、そいつを見てくれ」


投げ渡された物は異世界人が命より大事そうに持っているスマホだ。

そこに映し出されていたものは人々が魔物と交戦している様子だった。

その場所は仲間を残してきた港町だった。


「急いだ方がいいぜ! Good luck !!」


「……ありがとうございます!!」


荷物の積み込みは後続の馬車に任せ、勇者2人は決戦の地へと向かった。




シンシアには才能があった。

剣や弓の扱いとか、秘められた魔法能力とか、そういうのではない。

何がなんでも自分だけは絶対に生き残ってやるという生き意地の汚さだ。

その純粋な生存本能がこの乱戦においては上手く機能していた。

戦闘力皆無の一般人が鮫害の中心地で3時間も生き延びられたのは奇跡だ。


声が無い方向は避けた。生きている人間がいない可能性が高いからだ。

知らない路地は避けた。逃げ場を失い、助けを期待できないからだ。

脳と心臓、喉、手首と太腿の内側、主要な人体の急所を絶対に見せなかった。

体勢を低く維持、自分からは攻撃しない、音を立てない……。


安全圏から出なければたぶん死にはしない。

自分の命を最優先させるならそれが一番の方法だ。

そうだとしても、子供を見殺しにしてまで生き延びようとは思わない。

彼女にも悪の美学は存在し、そのために命を落とすなら


鮫だ。


完全に不意打ちだった。

建物の陰から体当たりされ、シンシアは地面を擦りながら無人の露店に激突した。

下水道で見た時は雑魚としか思っていなかったし、自分が戦う気なんてなかった。

こいつらは冒険者にとっては雑魚だが、一般人にとっては脅威そのものだ。

彼女は認識を改め、急いで体を起こして全力で逃げ出した。


地上に進出した地下鮫は凶暴さが増し、

海が近いせいか動きが活発になっていた。

下水道の時とはまるで別物のそれに追い回され、

シンシアは覚悟を決めて振り向きざまにレイピアを突き出した。


しかし渾身の一撃が刺さる事はなく、刀身が根元近くで折れてしまった。

それは武器の性能ではなく、冒険者と一般人の力量差が表れた結果だった。

もう一つの武器、クロスボウなら誰が使っても威力は変わらないが

さっきの体当たりでどこかに吹き飛ばされ、回収する余裕がなかった。


小さいと思っていた鮫も口を広げれば子供を丸呑みできるサイズであり、

大人のシンシアはこれから噛み砕かれて死ぬ場面を想像した。

これは世紀の大悪女である自分に相応しい惨めな結末だと受け入れ、目を閉じた。



鮮血が飛沫を上げ、赤いドレスが更に赤く染まった。



シンシアは全身の力が抜け、その場にへたり込んだ。

地面に崩れ落ち、バタバタと踊っているのは両断された鮫だった。

もう最期だと諦めたはずが、鮫害を知って駆け付けた勇者によって救われたのだ。


「…おい、カルロス! タオルを投げてくれ!」


そこにいたのはアレックスの父、バランタイン伯爵だった。

今の彼から酒の匂いはせず、ヒゲの剃り残しは無く髪型も決まっている。

たったの2日でダメ親父から素敵なダンディーへと変貌していた。


「……本当はここへ来る気はなかったんだが、

 仲間のために倉庫から飛び出す君の姿を見て

 思わず体が動いてしまったよ」


「えっ、あの……おじさま…『姿を見て』???」


「監獄にいるはずの息子と一緒に映っていたし、

 おそらく君も同じ状況にあるのだろう?

 …君が何者で、どんな目的で動いていようと

 私は責めたりしない 安心してくれ」


「『一緒に映っていた』……?」


「それよりも、大陸を出るつもりなら急いだ方がいい

 昨晩の動画を見たのは私だけではないからな…

 息子や他の脱獄犯を追って精鋭部隊がこちらに向かっている

 逃げ切るならこの混乱が起きている今が絶好の機会だ」


「『動画』って… いや、精鋭部隊ィ!?

 たった3人相手に大袈裟じゃないの!?」


「ん、3人……?」




ローラは冒険者から相棒を狩られないように小型船で身を潜めていた。

鮫害状況下では相当な危険地帯だが、逆に人間が近寄らない場所でもある。


地下鮫が最も凶暴化する場所、それが海であった。

彼らは暗くて狭い場所にいれば比較的おとなしい性格なのだが、

増えすぎて居場所が無くなった者は明るくて広い海に追いやられ、

その結果、合わない環境に不満を爆発させて攻撃的になるのである。


そして、誰も予測できなかった事態が発生した。


新種の出現である。


それは後に“海上鮫”と名付けられるが、現代の人間たちが知る由もない。


地下鮫の異常繁殖は10年前に1度だけ観測され、

今年に2度目が来るのではないかと予想する学者は少なからず存在した。

もしそうなっても発生地点周辺だけ討伐すればいいものと考えられてきた。


10年前に討伐されなかった者たちの子孫が進化を遂げ、

明るくて広い海を克服する個体が現れるようになった。

彼らは旧世代の地下鮫を劣等種と見なし、餌と認識するようになった。


この現象のきっかけは橋本トンネルの完成にあった。

人間が利便性を追い求めた結果、生態系に変化が起きたのである。

彼らはいわば人間が生み出した悲しきモンスターであった。


その新種の大群が餌を求めて水平線の向こうから津波のように押し寄せている。

ローラは新種の第一目撃者として、逃げるか留まるかの選択を強いられた。

短い思考の後、彼女は小型船から飛び出してどこかへ逃げようとしたが、

あまりの敵の多さに怯んでその場で固まるという最悪の行動を取ってしまった。

「死にたくない」より「わからない」という気持ちがローラを支配していた。


ローラは選択肢を間違えたが、結果的に命拾いした。


海上鮫の大群に立ち向かい、ローラを守りきったヒーローは

脱獄初日に陽動作戦の捨て駒として利用した人物だった。

彼には武器も魔法も無く、その代わり鍛え抜かれた剛腕があった。

押し寄せる敵を次々と弾き飛ばし、ローラの左右には鮫の壁が出来上がっていた。


「──ははははは!! オメェやっぱり生きてやがったか!!

 さすがこの俺様の見込んだ女だぜ!! 地図あんがとよ!!

 あと5年もすりゃあ、俺様の女にしてやってもいいぜ!!」


監獄A棟で囚人たちのキングを気取っていた男、ダルトンだ。

彼の存在はローラにとって最大の誤算だった。

適当に暴れて数時間稼いでくれればそれだけで充分だったのだが、

この3日間戦い続け、逃げ続け、看守たちは彼の対応に追われて

ローラが脱獄したという事実はまだ伝わっていなかった。

監獄の職員だけでなく民兵や騎士、中級以上の冒険者が駆り出され、

更には王都が誇る最強の精鋭部隊までもが出動する事態に発展していた。


海上鮫の目的は餌の地下鮫なのでローラたちに興味を示す者は少なく、

通過した鮫はそのまま主戦場の方へ消えていった。

呆然とするローラは差し出された大きな手を反射的に掴み、

人肌に触れた事でまだ生きているという実感を取り戻せた。


「たしか名前はローラだったよなァ? 待たせちまって悪りいな…

 追手の連中がしつこくてよォ、手下も半分以下になっちまった

 ……にしても、よく俺様がこの港に来るってわかったな?」


どうやら彼は何か勘違いをしている様子で、ローラは黙って頷いた。

この男は使えるという直感を信じて利用する事に決めた。


「…ダルトン 残ってる手下は何人?

 それと、船を動かせる奴はいる?

 この小さいのじゃなくて、ああゆう大きいやつ」


「ははは…! なあに言ってやがんだ!

 この俺様も手下の連中も海賊だと知ってて逃がしたんだろ?

 100人ちょい残ってるが、20〜30人いりゃあ余裕だぜ!」


海賊。


絶望的な状況に突如として舞い降りた思いがけない幸運。

ローラは脳内麻薬で満たされ、危険な賭け(ダブルアップ)をせずにはいられなかった。


「あの大きいやつ、いける?」


経済活動用ではなく個人が楽しむ目的の船で、シーズン以外には使われていない。

農民100人に加えて海賊100人が乗ってもまだ余裕がある大型船。

問題は王家の旗が立っている事だ。




「ファーレンハイト卿 貴殿の爵位を剥奪する」


「──えっ?」


海運倉庫でも異常事態が発生していた。

本来ならこんな場所にいるはずのない人物が現れてしまったのである。

立派な装備に身を包んだ騎士たちは全員が直立の姿勢を保ち静観している。

その物々しい雰囲気に飲まれ、避難民たちは頭を低くしながら見学した。


「へっ、陛下…!! それはどのような意味で…!

 いえそれよりも何故このような場所に陛下が……!?」


「剥奪の理由ならば卿自身が理解しているだろう

 貴殿は人々の模範となるべき貴族の身でありながら、

 それに相応しくない行いをした それだけの話だ」


それはヤンディール国王だった。

脱獄犯を追う精鋭部隊とは関係なくお忍びで遊びに訪れ、

到着してすぐ鮫害に巻き込まれて逃げ回り、辿り着いたのがこの場所であった。

侯爵と鉢合わせたのは偶然だが、彼の爵位剥奪は決定事項であり

後でわざわざ王宮に呼び出すよりもこの場で済ませてしまいたかった。


「エマ殿、ちゃんと撮れているか?」


「うぇええ!? わ、わたしですか!?

 とっ、ご撮影しちゃってもよろしいんですか!?」


エマはいきなり話を振られて素っ頓狂な声を上げてしまった。

さすがに国家元首相手に無断撮影はまずいという常識は持ち合わせていたので、

彼女は他の見学者と同じように頭を低くしておとなしくしていた。


「ふむ、撮っていなかったか… では最初からやり直すとしよう

 私に気を遣わず、思うがままの構図で撮影して構わないぞ

 ただしライブ配信は困る 失言で炎上したくはないのでな」


この男、だいぶ詳しい。


「貴殿は侯爵に相応しくない …追放だ!」

「……国の恥め! 貴殿の爵位をハクダチュ…」

「貴殿は貴族として」「侯爵という立場でありながら」

「剥奪」「貴様を処刑してやろうか」「このクズがっ!」


その後、国王の希望でリテイクが何十回と繰り返された。

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