~講義と砂糖の実~
書庫に着き中に入ると講師がすでに授業ができるように準備を終えていた。
「お久しぶりです。カノン様。ご機嫌麗しゅう。本日はご令嬢としての振る舞いの復習と伺っております。」以前にカノンに教えていた講師だ。
「はい!今まで書庫と自室にばかりこもっていたのでもう一度令嬢としての振る舞いを身に着けようと思い講義をお願いしました。再度ご教授お願いいたします。」
美桜はカノンの自伝にあった出来事と食い違いがないように伝え、独学ではなく専門の人から貴族としての知識や技術を学ぼうと頭を下げお願いする。
その行動に講師は目を丸くした。(お嬢様が頭を下げてまで…)
「かしこまりました。ではまずはテーブルマナーからいたしましょう。」
こうして美桜の令嬢としての授業が始まる。
(このように一生懸命なお嬢様は見たことありません。復習と仰っておりましたがやはり完璧にこなせております。侯爵家の立場上きっと影でものすごく努力なさっていたのですね。でないとこのような綺麗な振る舞いは……。私は外見にとらわれていたのですね。お嬢様の努力も知らずに…)美桜の一生懸命習う様子に講師は以前のカノンが完璧にこなしているのには影でそうとうな努力をしていたのだと気付かされる。
(カノンさんの体だからでしょうか…もとの世界の時はこんなにスムーズにマナーをこなせずにいました。身にしみつくほど反復されたのですね。すごく努力家の方なんですね)
美桜はぎこちなくなると思っていたテーブルマナーがスムーズに行える事にカノンの努力があっての事だと感心していた。
「本日はここまでです。おつかれさまでございました。さすがでございます。わたくしたちの見えないところで多くの努力をしていらしたのが伝わりました。次の講義がまた明日、姿勢とダンスでございますわ。その講義で最後となります。テーブルマナーやお言葉など基本的なことはできていますもの。やはりさすがでございます。」
「わかりました。ではまた明日よろしくお願いします。(もっと受けたかったけどしょうがないですね…)」
講師の言葉に内心残念に思う美桜。けれどもまた明日も頑張ろうと意気込む。
講義が終わりアフタヌーンティーの準備をするというリリーについていき一緒に厨房に向かう美桜。
厨房にカノンの姿が現れたことで驚く料理人たち。
「すみません。お料理しているところを見せてもらってもいいですか?」
美桜の言葉に皆が戸惑うが急ぎの作業もないので厨房の中に招き入れた。
「今日のアフタヌーンティーもスコーンを作るのですか?その作り方を見せていただきたいのです。」そう言って料理人が仕込みを始めるのを見る美桜。
ボウルに卵を多めに入れ小麦粉を入れて混ぜていき粉っぽさがなくなり手で成形できるようになるまで混ぜ合わせる。
生地がまとまり成形をしてオーブンに入れて焼き上げる。これがこの世界でのスコーンの作り方だ。(なるほど。だから固くて卵と小麦粉の味しかしなかったのですね。)ついでにパンの作り方も聞いた美桜。
基本スコーンと似たような作りだと言われた。ふかふかの食感になる粉があるそうでそれをスコーンの材料に入れればふかふかのパンができるのだそうだ。
(いくらふかふかでも味がなければ本末転倒ですね。)
「あの!砂糖の実があるって聞いたのですがどこにありますか?すぐに手に入りますか?」
砂糖を入れることで劇的に変わることを知っている美桜は大きな砂糖の実を調味料として使えるように何かできないかと考える。
「砂糖の実なら屋敷のいたるところにいっぱい実がなっていますよ。厨房の裏の庭にもありますのでお持ちします。」そう言って料理人の一人が砂糖の実を取りに行き美桜のもとに戻り実を見せた。
「なるほど…。これが砂糖の実なのですね。(ピンポン玉くらいの大きさですね。)」
「幾年か前にこの実を割った人がいて、固すぎて割るのにすごく時間がかかったそうで…。やっと割れた固い実の中にはざらざらした粉が入っているみたいなのですが、それを聞いた人々がそんなに割るのも苦労して、しかもただ甘いだけの粉か。特に使い道もないな…。と見向きもしなくなりました。」
「そうですか…。ですが使い道はあります!まずは固い殻を簡単に割る方法から探します!ありがとうございました。お邪魔しました。」
砂糖の実を簡単に割れる方法を調べるため実をもって自室に戻る美桜。
アフタヌーンティーの準備ができ部屋に持ち込まれたのを見て軽食はさっきのスコーンだという事を思い出し少しだけ顔を引きつらせる美桜だった。




