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シュガー・シュガー・シュガー(!)  作者: 助供珠樹
大学三年:4~5月まで(エピソード6)
72/90

第三十五章『三者三様の19さじめ』(2)

 悟司と千佐都が、月子から漫画を受け取った直後のことまで時間は遡る――


 あれから月子はすぐに支度をして、印刷した地図の通りの場所まで自転車を漕いでいた。


「わぁー」


 空知川を渡る橋を眺めながら月子はそんな声をあげた。春日の車に乗せられていた頃に何度か通ったことはあったが、こうして自分の足でここまで来るとなんだか風景が違って見えるような気がした。


 きらきらと太陽を反射する川を見つめながらどうにか渡りきると、あとは国道十二号線沿いの車ばかりの道になる。赤穂浪士の石像が見えたところで、月子は自転車を停めて再度地図を取り出した。


 伊達卯月の家は、隣町の市役所からそれほど離れていない場所にある。島崎の話によれば彼女は既婚者で、旦那がここの職員だということらしいが。


「札幌にいた頃はどうしてたのかな?」


 以前の連載漫画を描いていた頃に札幌に住んでいたと聞かされたが、もしかして互いに別居していたのだろうか。そう思うと地元にこだわり続けているといった島崎の言うこともなんとなく理解できなくもない。同じ北海道といえども、札幌とこことでは内地で比較すると他県二つ分くらいの距離がある。


 ともかくも、場所を再確認した月子は再び自転車を漕いで動き始めた。全行程で大体家から四十五分くらいの距離だろうか。

 日頃運動不足な自分には結構な運動量になるなと思いながら、月子はのろのろとペダルを漕いで車の通りが多い国道の道を進んでいった。


 かくして辿り着いた住宅地の一つに、そのマンションはあった。

 比較的新しめの分譲マンションである。あらかじめ四○五号室だと聞かされていた月子は駐輪場に自転車を停めると、エントランスにある呼び出し機に四○五と打ち込んでその場に棒立ちになった。


 ピンポーンという音が鳴ってしばらくすると、がたがたっというノイズに紛れながら、


「はいっ!? はいっ吉野です! 勧誘ならちょー間に合ってますけど!?」


 と、女の人の慌ただしい声が飛んできた。いきなりのことに月子は目を白黒させて、


「あ。あの~。島崎さんから言われてやってきました。その、漫画のアシスタントをやらせてもらう鷲里っていうんで――」


 そう全てを言い切る前にがーっと自動ドアが開く。


「マジで!? うわー来てくれたんだっ。入って入って。あっ。それともこっちから迎えに行こうか!?」


 備え付けのインターフォンスピーカーで、これだけテンション高く喋る人を月子はいまだかつて見たことがなかった。


「だ、大丈夫です。そっちまで行きますので」

「ホント!? んじゃーよろっ」


 そう言ってぶつっと物凄い音でスピーカーの音が途切れる。月子は開いた自動ドアをくぐって奥のエレベーターで四階を押し込んだ。


 閉まったエレベーターの中で、早くも月子は緊張で汗が噴き出していた。もしかしたら自転車での運動の汗が今更出てきてしまったのかもしれないが、そんなのどちらでも構わない。とにかく急いでハンカチで顔を押さえていると、突然エレベーターのドアががらりと開き、目の前の大きな男の人を見て思わずぎょっと目を見開いてしまった。


「や、やあ――って……おっと。いきなり失礼」


 顔を上げるとエレベーターはしっかり四階で止まっているらしく、階を間違えたわけでも途中で止まったわけでもない。この男性は一体誰なのだと思っていると、


「あ。僕は伊達卯月の夫で、吉野慎太郎って言います。さあ、家内が待っているので」


 そうして先ほどの女の人とは全く違う、穏やかで低い喋り声の男性が、戸惑っている月子に向かって案内を始めた。

 四○号室のドアを開けると、玄関は思っていた以上にこざっぱりとしていた。ピンクのクロックスと革靴が一足ずつで、傘立てに数本ほど刺さった傘しかない。置き物などは何も無く、まるでつい最近越してきたばかりといった感じであった。


「汚いけど、ごめんね」


 そう伊達卯月の夫が言うものの、一体どこが汚いのだろうと思いながら月子が一礼して中へ入ってみると、すぐに言っている意味が理解できた。


 ドアを開けるなり辺りは一気にごちゃっとしだして、部屋の中央に固められた机の上には資料やら何やらが至る所に散乱している。足下だけは気が払われているようで、それ以外の机の上や本棚などは、どれも類を問わず壊滅的な雪崩現象を引き起こしていた。


「どうぞ。いらっしゃい」


 顔も上げずに、奥にいる眼鏡をかけた女性が手をあげる。見てないだろうとは思いつつも、


「鷲里月子と言います。よろしくお願いします」


 と月子は相手に向かって深々とお辞儀をしてみせた。


「あー。堅苦しいのは無しで。それよりも鷲里さん、いきなりだけど背景描くの得意?」

「は、背景ですか?」


 どちらかと言えば全く得意な方ではないのだが、そう正直に言っても良いものなのだろうかと思っていると、


「んじゃいいや。とりあえず終わったヤツからベタお願いします。そこの机を勝手に使って良いから。あと、ペンやインクはそっち。修正液はあっちね」


 そうして伊達は適当に辺りを指さしてから、再び作業に戻るように机とにらめっこを始める。本当にいきなりとは思っていなかった月子がおろおろとしていると、


「ごめんね急かしてるみたいで」


 と後ろから慎太郎がカップに二つコーヒーを淹れて現れた。


「でも、本当にちょっと今月はやばくてね。今は猫の手でも借りたいくらいなんだよ」

「そこ! お喋りしないっ!」


 伊達が二人に向かってぴしっと指を出す。


「とりあえず『今日はここまでやる』という計画通りにスケジュール詰めてるんだから、そこまで終えれてからお喋りする! アタシも鷲里さんと話したいことあるんだから、アンタもささっと作業に戻って」

「はいはい。じゃ鷲里さん、わからないことあったらなんでも聞いてね。それと、はい」


 そう言ってカップの一つを月子に差し出すと、慎太郎はニコニコしながら持ち場の机のところまで戻っていく。月子はそれを受け取りながら、先ほど伊達が示した机へと座ると、


「コーヒーは必ず、後ろの本棚のブックエンドで仕切った空いたスペースに置いてね。それも手前の方じゃ無くて奥。取りにくいだろうけど、こぼして原稿おじゃんにするのだけは勘弁だから」


 そんな風にぴしゃりと言い放つ伊達に、月子はどきりとしながらもコーヒーを一口だけすすって本棚の奥へと静かに置くと、


「それじゃはい。これ全部ベタ塗りの原稿――って、うっわ。めっちゃおっぱいが大きいでやんの、この子!!」


 月子の机までやってきた伊達が突然そんなことを言って、身体を大きく仰け反らせた。


「杏子ちゃん、そんなとこに反応しなくても……てか、それ思いっきりセクハラ」


 苦笑い気味に顔を上げる慎太郎に、伊達はぶんぶんと手を振ってみせる。


「いやいやだってびっくらこいたもん! ふぇー。まるでグラビアアイドルだねぇキミ。こんな子が島崎に水ぶっかけようとしたの?」

「……え? その話どうして」


 月子がびっくりして伊達を見ると、伊達は眼鏡を押し上げながら笑う。


「だっはっは。いや結構有名だよその話? しかもかけていいよって言ってきたんでしょアイツ。ド変態にも程があるっつーか、一体どんな性癖だよっていう」

「は、はぁ……」


 性癖、という単語に敏感にも赤くなってしまう月子。


「まぁなんていうか、でもアイツの気持ちもわかるわー。この子になら冷や水浴びせられても別に腹立たないもん。しっかしまさか、編集部期待の新人がこんな良いもの持ってるなんて、お姉さんちょっぴり嫉妬しちゃうわぁ」

「杏子ちゃん」


 決してキツいものではなかったが、それでもじろりと慎太郎が伊達を睨みつけると、伊達は首をすくめて自分の机へと戻っていった。


「ごめんね。ウチの奥さんちょっと変わってるから」


 慎太郎がそう月子にフォローを入れると、伊達は自らの後ろにあった本棚からコーヒーカップを取り出して慎太郎を睨みつける。


「何言ってんの。こんくらいのことで凹むような精神構造ならやってられんでしょ。ブラックもブラックよこんな業界。昨日だって何時までやってたかっつー話で――っておっと、お喋りはとにかくここまでだ。さぁやるよ」


 そう言うと、ぱちりとスイッチを切り替えたように伊達も慎太郎も無言で作業に取りかかる。月子は一瞬気後れしながらも、目の前に渡された原稿を目にして袖をめくり上げた。


 ***


 そうして渡された原稿を指示通りにこなしていく作業を続けて、ふと時計を見るとあっという間に時間は夜の八時になっていた。いつの間にこんなにと思うと同時に、気付けばすっかり悟司に連絡のメールを寄こすのも忘れていた。


 かれこれ五、六時間ほどだろうか。伊達と慎太郎はほとんど無言のまま作業を続けており、よくここまで集中力が続くものだと月子は舌を巻く思いで二人を眺める。


 そこでちらりと月子が壁にかかっている張り紙に目が止まった。それには締め切りまでの作業カレンダーがびっしりと文字で埋め尽くされており、今日の日付を見るとまだまだ行程が終了する目処すら立ちそうにないのが見てとれる。


「あの――」


 沈黙する中で、気まずい思いをしながらも月子がそう口を開いた。無意識に手まで上げてしまう。


「どうしたの?」


 慎太郎が顔を上げる。


「あ、あのウチ。今日自転車で来てて……あまり遅くなると」

「え? 泊まっていくんじゃなかったの?」


 びっくりしたように伊達が月子を見た。まるで信じられないものを見るような目つきだ。


「すっかりそのつもりでそっちに布団敷いてたのに」

「え。あ、あの……」


 伊達の勢いに押されて、月子は言葉を失ってしまう。確かにこうなることも当然視野に入れておくべきだった。しかしいきなりまさか来た瞬間からすぐに準備もなく始めて、そのままぶっ通しになるとも思っていなかったのだ。

 月子は伊達の視線に圧倒されながら気弱な目で見返していると、突然ああと声を上げて、


「そういや、学生だったんだっけか……。うわー。参ったねぇ。明日も学校あるんだっけ?」

「あ、は。はい」


 伊達はペンの尻で頭を掻いて椅子の背もたれに身体を預ける。


「……うーん、出来ればそういうことは早めに伝えて欲しかったな。作業ペースもちょっと落としてたところだったし」


 作業ペースを落としていた?

 月子は驚きを隠せなかった。これで落としていたというのだろうか?


「はぁーあ。なんかどっとやる気削がれちゃったなぁ」

「まぁまぁ杏子ちゃん」


 慎太郎がなだめるように手を広げる。


「どうしようか。もうさすがにこの時間に自転車じゃ危ないだろうし」

「いいよ。タクシー代渡すから。鷲里さん領収書だけもらっておいてくれるかな」


 ぶっきらぼうな調子でそう言い切ると、伊達はうーんと背伸びをして立ち上がった。


「テレビ観よ。風呂も入ろ。んで少し寝るわ。おやすー」


 独り言のようにそうぼそぼそと呟きながら、奥へと引っ込んでいく。その姿を見てから月子はその場でゆっくりと俯いて思った。


 別にやる気を削ぎたくて言ったんじゃ無いのに。第一に早めに伝えてくれと言ったが、そもそも最初の挨拶もすっ飛ばしていきなり作業を始めたのはそっちの方じゃ無いか。

 こんなの……理不尽だ。


「ごめんね。鷲里さん」


 膝の上で拳を握りしめたところでそう声をかけられた。月子が顔をあげると、慎太郎が申し訳なさそうな笑みでこちらを見て立っている。


「杏子ちゃん、締め切り前でぴりぴりしてるからさ。悪気があるわけじゃないんだ」

「……はい」

「一応、鷲里さんが来れそうな時間帯を教えてもらってもいいかな? それでもう一度作業を見直してみるからさ。もう一週間切ってるのに全然終わってないんだよね。今回はネームにかなり時間割いちゃったから、他の作業が全押しなんだ」

「……はい」


 ***


 慎太郎はマンションの下にタクシーを呼びつけてくれて、帰りもエレベーターの前まで見送ってくれた。

「それじゃ、また明日も頼むよ」

 そう言って慎太郎は優しい笑みを浮かべながら手を振る。

 伊達は姿すら見せなかった。


 慎太郎にお礼を告げるとエレベーターの扉がゆっくりと閉まって、月子はその壁にもたれかかりながらふぅと息を吐いてみせる。


 先が思いやられそうだった。


 ***


 翌日、月子は昼までの講義を全て終わらせてから、すぐにタクシーで伊達卯月のマンションまで向かうことにした。


 マンションに着いたところで、月子は悟司にメールを送っていないことをふと思い出し、慌てて携帯を開いたところでふと顔を上げた。


 ――どうしよう。昨日のことで愚痴を言うのもなんだし。


 結局色々考えた結果、月子はぱたんと携帯を折り畳んだ。向こうからのメールもないようだし、大学でも姿を見かけなかったので、きっと新曲にあれこれ悩んでいるのかも知れない。夜遅くまで頑張っていたのなら、尚更起こすわけにもいかないだろう。


「……よし」


 昨日までは頼りないアシスタントであったが、今日からは違う。昼からがっつりと仕事を始めれば、きっと伊達だって自分のことを認めてくれるに違いない。


 おそらく悟司も頑張っているのだと思うと、自然と月子の心に力が湧いてくる。マンションのエントランスに入ると、さっそく月子は逸る気持ちを抑えぬまま、力強く四○五号室のインターフォンを鳴らした。


「……………………あれ?」


 反応がない。まさかこの忙しい時期に留守ということはないだろう。

 確かに予定よりは早めに来てしまったけれども、この時間からどこかに外出するというのも考えにくい。そう思って、再度インターフォンを鳴らすも反応はなし。


「おかしいな……」


 月子はいきなり気持ちだけが空回りしてしまったような気分になってしまった。呼び鈴が壊れているようにも思えないし、一体どうしたというのだろう。


 そう思っていると、突然マンションの住民が自動ドアから出てきて、月子は慌てて隅っこの方へと移動した。住民は月子を不審そうに見回し、そのまま外へと出て行ってしまう。


 ここにずっと居続けるのも迷惑だろうが、他に行くあてもなかった。自転車は幸いこのマンションに停めっぱなしだったので帰ることも出来たが、せっかくここまで来たのに一度戻るのも嫌だった。


 一体どうすればと思った矢先、ふと月子は島崎のことを思い出した。彼なら当然のように伊達の電話番号を把握しているに違いない。さっそく月子は島崎に電話をかけようと外へ出て携帯を開いてみた。


『――はい。島崎です』


 三コールもしないうちに島崎は電話に出た。


「あのっ。鷲里ですけど」

『ああ、おはよ。どう伊達先生は?』

「あの……そのことで」


 月子は予定よりも少し早めに来てしまったことを島崎に告げると、


『あーそりゃ多分あれだ。寝てるんだよ』

「……寝てる?」


 もうお昼なのにと思いながら月子が顔を上げると、太陽は青空の中でかなり眩しく輝いていた。締め切り近いのに、こんな時間まで寝ているなんてどうなのだ。


『マンガ家はどうしても不規則な時間に仕事することが多いから。伊達先生も今頃はぐっすり寝てるんだろ。僕も他の先生さん達の都合に合わせて寝起きしてるしさ』


 つまり、伊達はあれからずっと明け方近くまで起きて作業していたということなのだろうか。しかしテレビを観るだの、少し寝るだの言っていたような気もするのだが。

 そんな風に月子が昨日の伊達の様子を思い出してぼんやり振り返っていると、島崎はのんびりした口調で月子に言った。


『まぁ寝てるんなら、起こしてみるといいよ』

「えっ!? ……で、でもそんなことしたら――」

『不機嫌になるだろうね』


 けらけらと面白そうに島崎は笑う。


『こっちとしても締め切り前だし、なるべくなら早く仕上げて欲しいところなんだ。叩き起して机に向かわせて欲しいなっていうのも、僕としてのお願いだよ』

「で、でもぉ……!」

『任せたよ。あっ、それと今は多分旦那さんは仕事中で家にはいないと思うよ』

「えぇっ!?」


 そう月子が叫んだと同時に通話が切れてしまった。


「どうしよう……電話番号も聞いてない……」


 月子はだらんと携帯を持つ手を下げてマンションを見上げる。気合いを入れて早く来てしまったのが、とんだ裏目に出てしまった。起こすと言ってもこのまま出来ることと言えばインターフォンを鳴らしまくる以外に手がないではないか。

 しかしこいつまで経ってもここでぼーっとしているわけにもいかない。

 月子は意を決して、再びマンションの中に乗り込んだ。


 ――どうか怒られませんように。


 エントランスのインターフォンの前で四○五と押して、伊達を呼ぶ。

 一回目はなんの反応もなかった。続けて二回目。三回目。

 九回目でようやく相手が電話を取る音が聞こえた。


『――ふぁい……間に合ってまふ……』

「だ、伊達先生っ! ウチですっ! 鷲ざ――」


 最後まで言い切ること無く、ぶつりと音がして電話が途切れる。へこたれずに月子はさらなるインターフォンの連打を強行した。

 計十七回目で、とうとう不機嫌な口調の伊達の声が電話に現れた。


『しっつこいヤローね……間に合ってるって言ってん――』

「わ、わわ鷲里月子ですっ! すみません、おやすみのところをっっ!」


 エントランスに伊達が立っているわけでもないのに、月子はぺこりと頭を下げる。


「は、早く着き過ぎちゃったんです! ででで、でも! 昨日はあまりお役にたたた立てなかた、立てなかったのでっっ!」

『…………』


 通話は繋がっているけれども、無言の間が空いたまま。確実に怒っている反応だ。そう思っていると、自動ドアががーっと開いてぶつりと通話が切れた。


 ドアが閉まりきる前に月子はその中に飛び込んで、それからふーっと重苦しく息を吐いた。


「どうしよう……絶対に怒ってます……」


 どきどきしながらも、エレベーターに乗って四階まで辿り着く。ぎくしゃくとした足取りで四○五号室の前まで立つと、昨日とは別の汗をかいていることに気付いて月子はハンカチを取り出した。


「うう……こ、怖い……」


 思えばこんなに人から直接的な怒りを向けられるのも初めてかも知れなかった。

 よほどのことじゃない限り、人はそこまでの怒りを他人にぶつけようとはしない。遠回しにちくりと刺されるようなことや、嫌味を言われたりすることはこれまでにも多々あったが、さすがに怒鳴ったり罵倒されたりすることは月子の人生の中では全くと言って良いほどなかったのである。

 家族も優しかったし、学校の先生も厳しい人はいたが直接指導をされるほどのことをしたことはない。


 だから怖い。


 そうなりそうな気がして、ひたすら怖かった。

 ハンカチで顔を軽く拭って、月子は玄関のドアをゆっくりと開けた。鍵はかかっていなかった。


「お、おはようございます……すみません」


 玄関は真っ暗で電気は点いていない。その中に忍び込むようにしてひっそり入ると、月子はびくびくしながら靴を脱いで、昨日作業をした部屋まで音も立てずに歩いた。


「伊達先生……どこですか……すみません」


 無意識に語尾にすみませんをつけながら、月子が部屋のドアを開けると、昨日座っていた椅子の上で、伊達は膝を立てながら座ってこちらを見ていた。


「……おはよう、鷲里さん」

「……す、すみません。こんなに早く」


 視線が無茶苦茶痛かった。あれは、明らかにこちらを非難している目つきだ。


「仕事熱心なのね、あなた」

「す、すみません……」

「昨日はあんなに早く帰ったのに」

「そ、それもすみません……」

「とりあえず、始める前に何か飲んでも良い? あなたも何か飲むでしょ?」

「す、すみ――」

「さっきからすみませんすみませんって……そればっかりうっさいんじゃいっ!」


 どんっと机を叩く伊達に、月子は涙目になって肩を揺らす。声のボリュームはちっとも大きくはなかったけれども、それでも月子は縮こまりながら擦れる声で頭を下げた。


「ひぃぃっ! す、すみませんん……」

「はぁ……。もういいからそこに座って」


 呆れたように昨日月子が座った位置を指して、伊達はキッチンの方へと消えると、すぐに一リッターパックのオレンジジュースを持ってきて戻ってくる。


 それでも月子が元の位置で立ったまま微動だにしないので、伊達はもう一度同じ場所を示しながら月子に言った。


「座ってって言ったでしょ? ほらそこ」

「う、動けません……」

「は?」

「あ、足が震えて……う、動けないのです」


 そう言われてようやく伊達が月子の身体から目線を下げると、月子の細い足がびっくりするほどがくがくと震えていた。


「ちょっ!? あなたどうしたのそれ!?」

「も、申し訳なくて……怒られると思って……ぇ」


 涙を目尻にいっぱい溜めながら小動物の様に震える月子に、伊達はパックのジュースを慌てて机に置いて肩を貸した。


「もう! なんなのあんたって子は!?」

「うぅ……すみません」

「だから謝るなっての!」

「うぅーっ!」


 そうして唇を噛みしめるような顔つきになった月子を見て、伊達は慌てて近くの空いている席へと月子を無理矢理下ろしたのだった。


 ***


「――落ち着いた?」

「……はい」


 グラスを両手に持ったまま月子が頷くと、伊達は頬杖をつきながら月子に告げる。


「前、札幌いた時にも変わったアシスタントの人はいたけど、さすがにあなた以上に変わった人はいなかったわ」

「…………すみません」

「島崎さんの話だと結構粘り強そうだって聞いたのに、どう見たって真逆じゃない……」

「…………頑張ります」


 はぁーっと溜息をついて、伊達はオレンジジュースの入ったグラスに口をつける。


「あのねぇ。そうやってなんでもかんでもこちらの言うことを、そのままそっくり受け流すような言い方はしちゃ駄目だって――って……なんか説教臭くなっちゃったなこれ」

「…………」


 無反応まま目を赤くしている月子を見て、伊達は頭を掻きながら、


「端的に、扱いにくい」


 そうきっぱりと言い切った。


「早く来てくれるのは嬉しいけど、アタシも人間出来てないから不機嫌になることだってあるよ。聖人君子じゃないんだから」

「…………」

「でも、あなたももう少し強くならなきゃ駄目だって」

「はい……」


 ぽつりと呟く月子をじっと見つめて、伊達はオレンジジュースを机に置く。


「本当にわかった? 今のは受け流したわけじゃないよね?」

「はい……」

「ならいいけどさ」


 そうして二人きりの沈黙が訪れた。


 扱いにくい、と伊達は今さっきそう月子に言った。

 そんなのこっちだってそう思っている、と月子は思った。気分屋だし、男性の前でセクハラまがいのことも平気で口走るし、何より仕事がとにかくいい加減だ。結局、昨日のスケジュールだってほとんど出来上がってないんじゃないだろうか。


 現に今だって、伊達は仕事を始める気配すら無かった。オレンジジュースを出しているくらいなのだから、きっと原稿は自らの机の上にはないのだろう。


 今更になって月子は、どうしてこんなところにいるのだろうとすら思えてきていた。仕事以前に人間としての相性がひたすらに悪すぎると思った。


 でもそれでも我慢して、自分を殺しながら作業だけを淡々とこなしていければどうにかなるだろうと思っていた。なのに、ことごとく自分の言い出すことややることは、伊達には通じていないようだった。


 ――嫌いだ。こんな人。


 人は第一印象で相手のことを八割は判断すると聞いたことがある。確かに月子は第一印象の時点で既に伊達のことをあまり良いと思えていなかった。


 だからその説は、きっと正しい。


 自分はきっと、この人のことが大嫌いなのだ。


「もう二時か……」


 そんなことを思っていると、突然伊達がそう漏らしてその場から立ち上がった。月子も時計を確認すると、午後二時を少し回ったところだった。既にここへ来てから二時間近くなろうとしている。その間、お互いに原稿には一切手をつけていないままだ。


「ねぇ鷲里さん。ちょっとこっちに来てくれる? こっちの部屋」


 なんだろうと思いながらも、伊達はそれだけを言って自らが指した部屋の方へと歩いて行く。月子は椅子から立ち上がると、そんな伊達の後ろを静かについていった。

 伊達は一つの部屋の前に立つとそこのふすまをがらりと開けて、


「ここ、憩いの間なんだ」


 と月子に向かって部屋を指し示す。

 そこは、六畳ほどの小さな部屋だった。部屋の中にはテレビとゲーム機、それに二人分の大きなクッションとノートパソコンが置いてある。


「これが……どうしたんでしょうか?」


 そう尋ねても答えはなく、伊達はそのまま部屋の中に侵入すると、大きなクッションの上にどかりと座り込んで月子に手招きをしてみせた。全く意図がわからない。


「早くこっち座って」


 隣のクッションをぽんぽんと叩いて急かしてくる伊達に、月子は渋々ながらもクッションをお尻に敷いて座り込んだ。

 すると伊達はテレビの電源を点けて、片方のコントローラーを月子の手にぽんと乗せる。そのコントローラーを見ながら月子はきょとんとした目で、


「え……と。これは?」

「これはって、見りゃわかるでしょ。ゲームコントローラー」

「いえ……あの、そうではなく」


 伊達は有無を言わさずゲームの電源を点ける。


「ちょっくらあなたと遊ぼうかなと思って」

「……え?」


 伊達はテレビのそばに立てかけてある時計を見ながら、月子に告げる。


「鷲里さん。今から旦那が帰ってくるまでの三時間半、アタシとここでゲームをしよう。作業はその後に取りかかって、途中ご飯タイムを混ぜながら二十二時に終了。その後で鷲里さんはタクシーで帰宅、と。これで良い?」

「こ、これで良いって――」


 良いも何もあったもんじゃないと思った。締め切りが近付いているのに、何を呑気なことを言ってるんだと思った。月子はコントローラーを掴みながら思わず憤慨しそうになる。


 テレビに映し出されたのは有名な格闘ゲームであった。月子どころか、おそらくゲームをあまりしたことがない人でも名前くらいは聞いたことのある、それほどに有名なタイトルのヤツだ。伊達がそれの対戦プレイモードを押したところで月子は、


「ウチじゃ――」

「ん?」

「ウチじゃ――使い物にならないってことですか……?」


 馬鹿にされていると思うのも無理はなかった。

 気を張って、予定よりも早い時間に来て――そうして少しでも伊達の仕事の負担を減らそうと思ってやってきたというのに。

 なのに当の本人は、まるで締め切りのことなどどうでも良いと言いたげに月子へそう振る舞ってみせる。これでは自分は何のために呼ばれたのかまるでわかりやしなかった。


 まだ未熟だけれども、それでもやる気だけは誰にも負けないつもりでここにやってきたはずだった。でもそれは結局、この隣に座っている伊達には何一つ全伝わっていないというのだろうか。


 悔しくて、ぽろぽろと涙がこぼれてきた。あれだけさっきは我慢して耐えてきたというのに、さすがにこれにはもう限界だった。


「あーあ……泣くかね。ここで」


 伊達は気まずそうにぽりぽりと頬をかく。


「使い物にならない、って言ったね? そうだよ。今のあなたじゃアタシの仕事のお荷物でしかない。それって、なぜだかわかる?」

「わかり……ませんよっ! ちっともっ!」


 嗚咽を漏らしながら身体を震わせ、それでも懸命に月子が気持ちを吐露すると、


「……アタシもあなたのことが何一つわからないから、だよ」


 わからないって?

 月子はぎゅっと服の胸の部分を掴んで思う。

 それはわかろうとしなかっただけじゃないのか。少なくとも自分はわかろうと努力した。なのにちっともあなたは、こちらのことをわかろうとする素振りすらなかったじゃないか。


「はぁ……もういいよ」


 伊達はコントローラーを放り投げて立ち上がる。


「鷲里さん。今日のところはもう帰りなさい」

「帰っ……り、ませんっ!」

「いいから帰りなって言ったんだ」


 ぐしゃぐしゃの顔の月子とは対称的に、伊達は険しい表情で睨みつける。


「また来たくなったら来なさい。でなければもう来なくても良い。締め切りのことは気にしないで。どうにかする」


 そう言って、伊達は部屋のふすまを乱暴に閉めていく。

 月子は怒りと悲しみがないまぜになったまま、げほっとむせ返って立ち上がると、


「…………っっ!!」


 そんな言葉にならない声を漏らして、伊達の家から逃げるように飛び出していった。


 ***


「うう……ひぐっ! ひぐっ!」


 泣きべそをかきながら自転車をこぎ続ける。ぼろぼろととめどなく流れる涙がたまらなく嫌だった。袖で何度拭っても一向に収まる様子もないその涙に、とうとうそれまでせき止めていた感情がどわっと身体の外へと溢れ出していき、


「……ううう、うええぇぇぇぇんっっ!!」


 終いには大声で号泣していた。

 まったく、最低最悪の気分だった。


 どうしてこんなことになったのだろう。なんでこんなに辛い思いをしなくてはならないのだろう。自分はただ漫画が好きで、絵を描くのが大好きで、それで頑張って描いた漫画が賞に選ばれることになって、やっとこれから本格的に自らの足で夢のスタート地点に立ったというのに。それなのにどうして――


 通りすがっていく車の運転手は皆一様に、そんな月子の泣き顔を見てぎょっとした視線を送っていた。当たり前だと思う。自分だって、こんなわんわん泣いている人間が自転車で走っていたらびっくりするに決まっている。


 かっこ悪すぎて、情けなさすぎた。


 それでも家の近くの見慣れた風景が目に入ってくると、多少は気持ちも落ち着いてきた。目を真っ赤に腫らして、なるべくそういう姿を人には見られないように顔を隠しながらキコキコと家路に向かっていると、またしても打ち寄せた波が再び戻ってくるかの如く、伊達の顔がぼんやりと頭の中に浮かび上がってきた。


 これまでの人生で、こんなにも他人のことを憎らしく思ったのは初めてだった。なんて嫌な人だろうと真剣に思った。死んでしまえとまではいかないにせよ、せめて風邪でもひいて食欲がなくなって辛い思いをしてしまえ、くらいには頭に来ていた。


 ようやくアパートに着くと、月子は阿古屋が帰ってきていないかびくびくしながら鍵を開けて部屋の中へと転がり込んだ。

 そして着の身着のまま、ベッドにどさりと倒れ込む。


「もう……嫌だ……」


 自分が嫌いになりそうだった。うまく相手に怒ることも出来やしない。何か言われても言い返せるような言葉を持ち合わせていない。ぐっと気持ちだけを押し殺して、返事だけするオウムのような性格が、大嫌いだった。


 伊達のことも、そして自分のことも嫌いなのだった――





 ――そうして、気がつけば真っ暗な状態の部屋の中で月子はゆっくりと目を覚ました。


「ううん……」


 寝てしまったのだろう。月子は目をこすろうとして、すぐに泣いていたことを思い出しバスルームへと向かう。


「……ヒドい顔」


 鏡に映った自分の顔を触りながら、月子は重苦しい溜息をついた。

 これからどうすればいいだろうと思った。来たくなったら来なさいと伊達は言っていたが、正直なところもう顔も見たくない。

 島崎に相談すべきだろうかと思ってぱかりと携帯を開けると、


『今忙しいのかな? 大丈夫?』


 そんな悟司のメールが届いていたことに月子は気付いた。きっと連絡をしないままだったので心配していたのだろう。そう思うと、ますますうんざりした気持ちになる。


「ウチは……悟司くんのようになれないみたいです……」


 ずるずると部屋の壁にもたれかかり、足を組んでから顔を伏せる。


「たぶん……一生なれない……」


 彼のあの逆境での強さは、一体どこから来るものなのだろう。

 シュガーの前身であったガストロンジャーズの時もそうだった。あれだけ多くの批判を浴びた動画を見ても、彼はすぐに気持ちを切り替えて別の曲を出そうとした。


 去年の学祭の時もそうだ。あれだけのアウェーな状況の中でも、彼はしっかりとギャラリー皆の心を鷲づかみにする演奏をしてみせた。

 そんな彼のことを――ずっと自らの憧れの対象として見てきていた。


 そのはずなのに。


「……ウチは弱い」


 きっと彼よりも精神的にはずっと脆いのだろう。少し他人から厳しくどやされただけで、もうこんなにも弱ってしまっている。


「もう……やめようかな」


 そう無意識にぽつりとそんな言葉が出たところでインターフォンが鳴って、月子はびくっと身体を震わせてから慌てて立ち上がった。

 誰だろうと思って、月子はおそるおそるドアの覗き穴を覗き込む。


「……庄……ちゃん?」


 そこには、ビニールの袋を持ったままの小倉の姿があった。月子は反射的に鍵を開けて、それからすぐに自分の状態が最悪であることを思い出す。


「やぁ月――」

「開けないでっ!」


 ドアが半分開きかかった瞬間に、月子はノブを掴んでそれを引き戻そうとする。


「……ちょっと。急になんなんだよ」


 小倉が珍しく驚いたような声を上げる。


「い、今は開けないで欲しいのっ!」

「そんなこと言っても、今開けたのは月子の方だろ……」

「そんなことよりもっ! ……きゅ、急にやってきて何の用事?」

「ん」


 ドアの隙間から、小倉の手とそこに握られたビニール袋がにゅっと入り込む。


「実家の漬け物さ。送られてきたはいいけど、量が多すぎて食べきれないから少し分けに来たんだ」

「そ、そうなんだ」

「で? なにかあったのかい」


 ごくっと唾を飲み込む。

 この顔を見たら、はたして小倉はどう思うのだろうか。


「そういや、アシスタントに行ってるんじゃなかったの?」

「そ、それは……」


 そうしてうっかり気が緩んだのをしっかり見計らってたのか、突然小倉が思いっきりドアを引っ張り上げた。


「きゃっ!」


 握っていたノブがつるっと手から離れ玄関のドアが完全開放されると、月の明かりで逆光になった小倉のシルエットが、


「……また随分とヒドい顔をしているな、月子」


 とそんな風に漏らした。



 ***


「――ふぅん。そういうわけね」


 バレてしまった以上は話さないわけにもいかない。小倉は月子の話を最初から黙って聞き続け、そうして全てを話しきったところでそう頷いてみせた。


 そしてそんな二人の目の前には現在、まるで空気にそぐわっていない皿に盛った大量の漬け物が置かれている。少しと言っていたが、見ただけでもかなり多い。


「それで? どうするの?」

「どうするのって――」


 小倉は手元の箸を掴んで、月子の顔を見つめる。


「やめるの、漫画?」

「…………」


 思わず黙り込んでしまった月子に、小倉はゆっくりと首を振りながら言った。


「無言……ね。さすがに今回はかなりひどく重傷を負ったようだ」

「ウチは……あの伊達って人が嫌い、です……」

「きっと向こうもそう思ってるだろうさ。でなきゃ職場から追い出したりはしない」


「今からでも……ウチは島崎さんに言って、アシスタントを断ろうって思ってる」

「でも、他にこの近くで漫画を描いている人なんていないんだろ? その島崎って人は月子にアシスタントをやってもらうことで、プロの仕事を知ってもらいたいと思っている。それを拒絶するってことは今後の月子のキャリアにとって、かなり手痛いダメージを喰らいそうな気がするんだけども」

「それでもっ! ……ウチはもう嫌なの」

「……本当に嫌なんだね。月子がそれだけ言うのもかなり珍しいことだよ」


 月子が正座をしながらぐっと太ももで拳を握るのを見ながら、小倉はそんな風に呟いてみせる。


 それから小倉はあぐらをかいている足を引いて、小さな溜息を漏らすと、


「月子には悪いけどさ。ボクはその伊達さんという人が、そこまで悪い人だとも思えないんだよね」


 そんな風に言いながら目の前の漬け物をぽりぽりと食べた。


「どうして、そう思うの?」


 小倉の食べる姿を見つめながら月子が尋ねる。


「どうして、か。説明すると難しいところなんだけれども、きっと月子が気負ってみせたことのほとんどはその伊達さんには伝わっていないんだ。互いに一方通行の思いがぶつかりあって、それを明確に正さないままの状態でいるのが、今の状態だから――かな?」

「う、ウチはそれでもわかろうと努力した!」


 つい声を荒げる月子に、小倉は静かに語る。


「『わかろうと努力する』。……それはとても良い言葉だけど、実のところ何もしていないと同義だ。他人のことっていうのは努力したってわかるもんじゃない。月子がすべきだったことは『わかろうと努力する』ことではなく、『違いを認める』ことだったんだ」

「違いを……認める?」

「なぜ伊達さんがいきなりゲームをしようとしたか月子にはわかっているのかい? ちゃんとわかろうと努力してみせたのかい? そうして意図を知り、理解したところで君は首を縦に振ったのかい?」


 立て続けの質問攻めに多少混乱しながらも、月子はゆっくりとあの時のことを振り返ってみた。確かにそうすることの意味を、自分は何も尋ねたりはしなかったし、仮にそれを知ったからといって、そんなことをしている場合ではないと声を上げていたかも知れない。


「伊達さんには伊達さんなりに、君への心配りがあったんだと思う。おそらく月子の話を聞いただけだと、彼女の周囲には、これまで月子のような消極的な人間が存在しなかったんだろうね。だから月子自身の主張のない態度に困惑した」

「消極的って、ひどい」

「悪かった。『控えめ』と、言い直すよ」


 むくれる月子に小倉は無表情で眼鏡を押し上げる。


「ボクが思うに、彼女はゲームをすることで、月子と心の距離を縮めたかったんじゃ無いのかな? それは、常識的な尺度で測ってみると、このような締め切り間際である今に為すべきことじゃないだろうとボクも思う。実際誰しもがそんな状況の中でゲームだなんて、と言うだろう。でも伊達さんはそういう人間じゃなかった――どうだい?」

「庄ちゃんって……やっぱりすごい」

「褒めたって、ボクに出せるのはこの漬け物くらいだけどね」


 そう言いながら、小倉は漬け物を箸で摘む。


「で。そこまで聞いて、月子はどう思う?」

「え……」

「やるしかないんじゃないの。伊達さんのアシスタント」


 ぽりぽりと音を立てながら、小倉が月子の顔を覗き込む。


「……ボクはね月子。キミがどうあれ、シュガーという悟司くん達のグループにキミが入ったことが、結果的にマンガ家の卵としての今を作り出したんだとボクはそう思っているんだ。特に悟司くんからかな? 月子は彼に良い意味で刺激を受けて、ようやく本来の才能を発揮できるところまで自分を持ち上げてきたんだよ」


 そこで、小倉がぱたりと箸を置く。


「それは……何もないボクには、出来なかったことだ」


 どういう意味だろうと思っていると、小倉はそのままゆっくりと立ち上がって月子に振りかえった。


「今日みたいに、もし辛いことがあればいつでも話を聞くよ。月子にとって、ボクはそういう存在だろう?」

「庄ちゃん……?」

「じゃ、また」


 呆然としている間に、小倉はぱたりと玄関のドアを閉めて出て行ってしまった。そうして漬け物と一緒に部屋の中で取り残されてしまった月子は、ラップを取って漬け物を冷蔵庫にしまいながら、ふと顔をあげて呟く。


「庄ちゃんは……ウチにとってどういう存在?」


 ***


 そうして翌日、学校を終えた月子はタクシーに乗せられながら再び伊達の家に向かっていた。

 あれだけの気まずさの後で行くのは、正直なところかなり嫌だった。でも小倉の話を聞いてから、月子の中で不思議と以前より伊達のことを完璧に受け付けないということはなくなってしまっていた。

 だからといって、抵抗はある。気に入らない人間であることには変わりは無かった。


「うう……嫌だなぁ……」


 タクシーを降りて、マンションを見上げる。

 昨日はほとんど眠れず、悟司への返信を済ませてからも何度か寝返りを打ってようやく意識を失ったのだった。

 また帰って良いと言われたら、今度こそ完全に心が折れてしまいそうだ。


「あ……電話」


 ぴりりりと鳴りつづける携帯を取って、月子は口を開く。


「もしもし。鷲里です」

『どうも。島崎です』


「あの、なにか……?」

『ううん。頑張っているかなって思って。どうだった昨日は?』


 嬉しそうな口調でそう問いかけてくる島崎に、月子は少しだけかちんとくる。元はといえば、この人が余計なことを吹き込んだせいで話がおかしくなったというのに。


 しかし意外だった。

 どうやら島崎は、昨日の件のことを伊達から何も聞かされてはいないらしい。


『伊達先生、変わってるでしょう?』

「え? あの、えーっと……」


 答えに詰まっていると、島崎は続けて月子に言った。


『でもね。ああ見えて先生は、結構自分の中でのスケジュールを大事にする人なんだ。一日の間に自分で決めた部分までは、たとえ何があっても絶対にやり終えないと気が済まないってタイプでね。一緒に働いてて、そんな感じ受けたでしょ?』

「え……」

『きっと昨日ガチ寝してたのも、明け方遅くまでずーっと描いていたんだろうさ。彼女は絶対に締め切りを破ったりしないって定評なんだ。助かるんだよ、ああいう人は編集にとってすごくね』


 月子は呆然と、島崎の言葉を聞いたまま立ち尽くしていた。

 その話はこれまでに月子が抱いていたイメージと、全く真逆であった。ちゃらんぽらんで、締め切りなんてまるで気にしない、直前でも月子にゲームを勧めてくる――そんな、どうしようもない人だとばかり思っていたのに。


『まぁ~実際、今回みたいな遅れは彼女の場合すごく珍しいことでさ。漫画の展開に悩んで、どうしてもネームが仕上がらなかったというのがその原因なんだけどね。僕がキミをアシスタントに向かわせたのも、そんな彼女だからという理由が非常に強い。僕は彼女の仕事ぶりを一から見ているわけじゃないから、一体彼女がどういう雰囲気の中でキミと一緒にやっているのかってのは測りかねるけども、彼女の元で働けばきっとキミにもプラスになるんじゃないかって思って、それで行かせてみたんだ。先生も快諾してたしね』

「そう……なんですか」

『伊達先生に色々教わると良い。すんごいタフな人だからね。多少言葉足らずで、真意が伝わりにくいところはあるけどね』


 そうして島崎との通話が終わり、月子はだらんと携帯を持った手を下げてマンションを見上げる。


「先生……あの後、ウチがいなくなってしまった分を補ってくれていたんですか……?」


 途端に申し訳ない気持ちになって、月子はその場にしゃがみこむ。


「そんなの聞いたら……また……泣いてしまうじゃないですか……」


 だけれども、その涙はもう昨日とは別種のものであるとはっきりわかる。

 どうにかしてそれをこらえると、月子はそのまま勢い良く立ち上がり、


「行きます……っ!」


 それから力強くマンションのエントランスへと足を踏み入れたのだった。


『――はい吉野です』


 エントランスの入り口に、そんな伊達の声が反響する。月子はすぅっと息を大きく吸ってから、ぐっとお腹に力を込めて言った。


「……鷲里です。よろしくお願いします」


 しばらくスピーカーからサーっというノイズだけが聞こえてくると、やがてぶつりと音が途切れて自動ドアがゆっくりと開いていった。月子はまっすぐエレベーターへと向かって四階のボタンを押す。


「怖くない……もう逃げない……」


 ぶつぶつとそう漏らしながら、エレベーターのドアが開く。そのまま急ぎ足で四○五号室の前に行き、ゆっくりとドアを開けると、


「……もう来ないと思ってた」


 伊達が玄関の前に立っていた。

 その表情は昨日よりもずっとやつれており、先ほど島崎が言った言葉がより真実味を帯びて月子の胸に響いてくる。


「そんなわけにはいきません……っ」

「……なんで?」


 月子が伊達の姿を見上げると、その視線に立ち向かうように伊達も月子を見下ろした。


「ウチはまだ……伊達さんから何も教わってませんから」

「アタシは何もあなたに教える気なんかないよ」

「それはどういう意味ですか」


 月子が尋ねると、伊達はめんどくさそうに眼鏡を押し上げて告げる。


「そのままの意味だよ。こちらは仕事を手伝って欲しいだけなんだし。まぁこの二日間はどうにもならなかったけどさ」

「それは……本当に、申し訳ありませんでした」

「これ以上はもう時間を取りたくない。アタシは仕事に戻るから」


 そう言って振りかえった伊達の背中を追って、月子は靴を脱ぎ捨てる。


「う、ウチも、すぐに準備します!」

「アンタはなにもしなくていい」

「なにかしたいんですっっ!!」


 そう叫ぶ月子の剣幕に圧倒されて、伊達の足が止まる。

 しまった。そういえばここはマンションじゃないか。そう気付いて慌てて手で口を塞いでみるも、今更止めることの出来ない思いがそれを阻害する。


 月子はなおも言葉を続けた。あくまで声のボリュームは抑えめに。


「……お願いします、やらせてください。やりたいんです」


 そうして、ゆっくりと頭を垂れる。


「お願い……します」


 息苦しいほどの無言の時間が続いた。

 伊達の足は止まったままだった。月子は頭を下げながら、ぎゅっと唇を噛みしめて小倉が言っていた言葉を思い出す。


 ――月子がすべきことは『違いを認める』ことだったんだよ。


 この人はきっと自分とは真逆の人間なのだろう。おそらく弱音を吐くような人間ではないし、自身に対して常に確固たる信念を持っている。プライドが高く、責任感もある。


 こういう人をプロと呼ぶのかも知れない、と月子は思った。

 そんな伊達と比較すると、あらためて自分にはそういうものが著しく欠けていることに気付かされる。もしこのまま一人でプロとして漫画を描きあげていくようなことになった場合、自分はそんな時にでも誰かに頼ったりすがったりしながら生きていくのか?


 そんなこと、出来るはずがない。


「アタシは――」


 突然伊達がそう口を開き思わずはっと顔を上げるも、月子は再び頭を下ろす。


「アタシは、あなたに何も教えたりはしない。つい今さっきそう言ったね?」

「……わかっています」

「アタシは、あなたに仕事を手伝って欲しいからここに呼んだ。それも、さっき言ったことだね? アタシは鷲里さんに自分の仕事を手伝って欲しいだけで、漫画を描く際に身につけておかなきゃいけない事や、覚えておいた方がいいことなどは何もアドバイスしない。……というより、出来ないんだ。アタシは人に教えるのが下手くそだからね」


 頭を下げたまま器用に頷いてみせると、伊達は再び歩き出して部屋へと続くドアノブにそっと手をかける。


「だから『教わる』つもりじゃ無くて、勝手に『盗んで』ちょうだい。好きなだけアタシのやることパクっていいから。いつかあなたがデビューするときのために、ね」

「え……?」


 ぽかんとしながらそう聞き返すも、伊達はそれだけ告げてさっさと仕事場の方に戻っていってしまう。

 月子はしばらく伊達の言った言葉の意味を図りかねてぼんやりとしていたが、次第にその意味がじんわりと脳内に浸透していくと、


「は、はいっ!」


 と力強く返事をして伊達の後に急いで続いていった。


 ***


「はぁ……憂鬱」


 慎太郎はエレベーターに乗りながら深いため息をついていた。

 その溜息の主な原因は、妻の吉野杏子――ペンネーム伊達卯月のことだ。

 昨日仕事から帰ってみると、なぜだか彼女はものすごく不機嫌な表情で原稿に手をつけていたのだった。そのような顔つきは、締め切り前の今じゃ割と平常運転なのだが、どうも昨日のそれはいつもとは少し様子が違っている。


 一体何があったのかと、慎太郎がそんな恐るべき形相の彼女に理由を問い質してみると、なんと来たばかりの新人アシスタントを早々に追い返してしまったとのこと。


 ――いいんだって。どうせアシスタントなんて、あんまアテにもしてなかったし。


 そうは言っていたものの、ここ数日の彼女の疲労している顔は見ていて目に余る物があった。慎太郎自身はトーンやベタといったものなら手伝う事は出来ても、それ以外の大部分の作業は全て彼女にいってしまっている。なにより自分にはちゃんとした仕事がある以上、彼女の生活ペースに合わせて夜更かしすることも出来ないのでますます彼女の負担は増すばかりであった。


「まぁ……合わないだろうとは思ってたけどさ」


 慎太郎はぼんやりと鷲里月子という女の子の顔を思い浮かべてみる。正直なところ第一印象の時点から、あの気の強い杏子とはとても合いそうにないと慎太郎自身も思っていた。相手はかなりの繊細なタイプのようだったし、妻のようなたとえ空気の読めない発言でも思ったことならなんでも口走ってしまう性格とは、まさしく水と油の関係ようだと。


「でも、それでもいくらなんでも早すぎるだろうよ……」


 そう愚痴をこぼしながら、四階に辿りついてドアが開いた。

 なんにせよ、この二日間の彼女の仕事ぶりはいくらなんでも目に余るものがあった。明日は仕事も休みなので自分も徹夜が可能だし、出来ることなら彼女には早めに休んでもらうとしよう。


 そう思って慎太郎が自宅のドアノブを回して家の中に入ってみると、


「――鷲里さん! ここのトーン貼りよろしく」

「はいっ!」

「それと前のページのベタもね。それとこのページの背景の方は……」

「出来ます! やらせてくださいっ!」

「ん。なら任せたっ。あとはこの部分の効果か……。どうしようかな」


 ……なんだこれは。

 慎太郎はぽかんとしながら、部屋の中で行われている二人の女性のやり取りを見守っていると、


「あら。なんだ帰ってたの。おかえり」

「あっ。お邪魔してますっ!」


 杏子が手を上げると同時に、鷲里月子がぺこりとこちらに頭を下げる。その間はまさに言葉通りの一瞬の出来事で、すぐに二人は自らの作業に戻ると後はこちらの方になど目もくれずにただ黙々と手だけを動かす。


 戻ってきて、くれたのか。

 ネクタイを緩めながら、慎太郎は奥の部屋に移動して部屋着へと着替える。


 これまでにも彼女のアシスタントが途中でいなくなることはそう珍しいことじゃなかった。キツい性格の女性だし、札幌で彼女が一人働いていた頃もこちらがふと電話で尋ねてみると、いつも誰かが職場からいなくなっていた。


 ――アタシのことは誰にもわかってもらえなくたって構わない。


 まだ付き合う前にそうぽつりと寂しそうに漏らした一言を、慎太郎はいまだにはっきりと覚えていた。気付けば自分は今こうして二人で暮らしているような仲になったけれども、彼女はそうなった今までも、まだその思いを完全に拭いきれてはいないだろう。


「もしかしたら、いつかあの子が杏子ちゃんのことを……」


 そんな風に思いながら、慎太郎は首を振って仕事場の方へと戻っていく。


「よ、よしっ! じゃあ僕も何か手伝うよ。何をすればいいかな?」

「ごはん作ってっ!」

「え……?」


 まさかの妻からの前線離脱告知。


「鷲里さんもお腹空いてるでしょ?」


 手を動かしながら、杏子がそう鷲里月子に声をかけると、


「ウチはまだ大丈夫です! 先生こそ、お腹空いてるんだろうから休んでください」

「ああん!? それは暗にアタシが太ってるって言いたいわけ?」

「な、なんでそうなるんですかっ! ウチはただ良かれと思って――」

「はん、どうだかねっ! 本当はそうやってカマトトぶっちゃって腹の中は真っ黒なんでしょうが。そんなおっきいおっぱいの女は大体そうなんだよっ! べーっだ!」

「む、胸はまったく関係ないじゃないですか!! もうっ! 知らないですっ!!」


 二人ともまるで揃って子供も口喧嘩のようだ。


「……じゃ、じゃあカレーでも作ろう、かな?」


 たまらず慎太郎が仲裁に入るように口を開くと、


「よっしゃカレーだっ! ふぅーっ!」


 と杏子が手を叩き、


「ウチもカレー大好きです。ありがとうございますっ!」


 と月子が嬉しそうに声を上げ、それからすぐに、


「うちの旦那にカレー好きだとかアピールして、ますますビッチっぽいねあなた!」

「もはやそれってただのイチャモンの域じゃないですかっ!?」


 そんな風に、再び即座に口喧嘩が始まるのであった。


 その後も互いにぎゃあぎゃあと騒ぎながら、作業工程の話になるとすぐに的確な指示出しと了解の言葉を掛け合う二人。


 その姿を見てやれやれと思いながら慎太郎はキッチンへ引っ込むと、


「でも、本当に良かった……」


 そんな安堵の息を漏らしながら口元にふっと笑みを浮かべたのであった。


 ***


 それから数日して。


 締め切り最終日の朝方に原稿が完成した伊達は、自らのデスクの上で眠たそうな瞳のまま缶ビールに口をつけていた。


 それは、無事に原稿が上がった記念に飲むものにしては少々味気ない安物の発泡酒である。でも、伊達はそんな薄い味の発泡酒が大好きであった。


 これを飲み終えたらきっとあっという間に意識を失うだろうと思っていると、ちょうど隣部屋から夫の慎太郎が顔を出した。


「あの子は寝てる?」


 伊達が問いかけると、慎太郎はにっこり笑いながら頷いた。


「連日ここで働いてたからね。やっと家に帰れると言ってたけど、力尽きちゃったみたい」

「どうせデビューしたら毎日こんな感じだから、今のうちに慣れとけば良いのよ」


 そう言ってぐびっと少しだけ多く発泡酒を口に含んでから、伊達ははぁーっとアルコールの混じった吐息を漏らす。


「鷲里さんは、杏子ちゃんの良いアシスタントになれそうだね」


 突然慎太郎がそんなことを言ったせいで、ひっくとしゃっくりが口から飛び出る。


「はぁーっ!? なになにちょっと。慎太郎はああいう子がタイプなの? ボインとしてむちっとしたあんな感じのが!」

「その言葉、そっくりそのまま君に返すよ。意外過ぎるというかね」


 伊達の言葉にも動じることなく、慎太郎は優しい声で隣の机に座りこむ。見ると彼も冷蔵庫からビールを持ってきていた。ぷしゅっと音を立ててプルタブを引くと、


「僕は杏子ちゃんの、違う一面が見れたような気がするな」

「……そうかね? アタシはいつだって同じつもりだけど」

「良い相方を見つけたって顔してる」

「まだまだ小手先だけのヒヨッコよ。持ってる技術だけはアタシなんかよりもものすごく高いけどね。でもそれだけ」


 慎太郎が隣に座ってから、少しだけ飲むペースが狂ったらしい。酔いの回りがいつもよりも早い気がした。寝てない時に入れるアルコールは酔いやすいとわかってはいたのだけれども。


 そうして、気付けば甘えるように隣の慎太郎に頭を預けている自分に伊達は気付いた。


「ねぇ、慎太郎」

「……なんだい?」


 慎太郎の肩に乗せた頭を動かして、伊達は告げる。


「アタシ、もっとあの子の理解者になりたい……かも」


 そう呟く伊達の頭を、慎太郎はくしゃりと撫でつける。


「……あの子も、きっとそう思ってるだろうさ。変わり者だからね」


 その暖かな手の熱を感じながら次第に微睡みを覚えた伊達は、そのままゆっくりと夢の中へと落ちていったのであった。


2014/10/08~10/12更新分

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