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対の神(前編)

「こんばんは。大岡マニアだぞー。再び鑑定配信の時間だー」


・こんばんはー

・マニアちゃんかわいー

・鑑定配信!

・マニアちゃんの配信待ってた

・さーて今回の呪物は?


 目の下にクマを持つ歯並びの悪い女子が、可能なかぎりの笑顔で手を振る。まだぎこちない動きの大岡に多くのコメントが反応してくれた。それが、彼女にはとても嬉しい。


「皆、今日も来てくれてありがとうだぞー。んで、この前、私の配信を観た友達から連絡をもらったんだ。私も出たいですわ、だって! そんなわけで、ご紹介ー!」


 配信画面内に別の小さな画面が映り、そこに一人の女子の姿があった。金髪の彼女は紅茶をすすり、優雅に手を振った。大岡とは動きの滑らかさが違う。まるで、物語に出てくるエルフみたいで、大岡は彼女に見とれてしまった。そういえば、こうして顔を合わせるのは一月ぶりくらいだな、なんて考えてしまう。


「ごきげんよう。安藤マリーです。今日はよろしくお願いしますわ」

「……ホゥ」

「大岡さん……?」

「ひゃ!? ひゃわ!? ごめんなさい! マリーちゃんが美人すぎて、つい」

「見とれてましたの? 可愛いのね」

「……そういうことだぞー」


・スゲー。本物の安藤マリーだ

・マリー様!

・ごきげんよう

・トワ様と並んでトップ探索者のマリー様じゃないですか!

・マニアちゃんの交友関係凄いな!?


 うなだれる大岡に対し、マリーは楽しそうに表情を緩めた。大岡は恥ずかしいと感じながらも、相手の表情に少し安心。大岡は、友人には恵まれていると思っている。皆、良い人ばかり。だからこそ、そんな彼女たちの役に立つ人間になりたいと願う。


「……さて、それじゃあ今回も。呪物の鑑定を始めていくぞー。マリーから鑑定を頼まれてる呪物を見てみよー。仕事なんで、真剣にやらせてもらいますよ」


・マニアちゃんお仕事モード

・どんな呪物が出てくるんだろ?

・ドキドキ

・さあ、何が来る!?

・特級探索者からの依頼品、気になります!


 今回の鑑定品をマニアは机の上に並べた。画面に移ったそれに対し、コメント欄で多くの「?」が並ぶ。二つの、布でくるまれたもの。布地は美しく、着物を連想させる。それは、例えるならば、着物の生地を巻いて作った葉巻のような姿。今回の依頼品も厄介なものだろうと、マニアは想像していた。


「……こちらが、今回の依頼品。仮に物体Aと物体A2……としておこうか」

「わたくしの依頼品の正体を、マニアさんが解き明かすのを見学させてもらいますの」

「見学していってくれー。と、言いたいところだけど、今回はマリーの協力も必要かな」

「協力? ええ、構いませんよ」


・今回は二人で鑑定を進めていくの?

・二人の共同作業!

・なんだか面白そうだね

・マリー様、鑑定とかできたんですか!?

・ワクワク


「……協力というのは、私の質問に答えてもらいたいってことです。つまり、聴取だな」

「よろしくてよ。それで、何を聞きたいのかしら?」

「まずは、この呪物を見つけた時の状況を詳しく教えてほしいぞー」

「呪物を見つけた時の状況ね。ええ、少しだけ待ってちょうだい」


 画面の向こうのマリーは少しの間、過去を思い出しているようだ。大岡は静かに待つ。マリーが非常に優秀な探索者であることは、大岡も知っている。だから、大岡はマリーのことを信用している。ほどなくしてマリーは当時の状況を語り始めた。


「……ダンジョンの深層を潜っていたときのことです。わたくしたちのパーティは深層にて二つの呪物を発見しました。新たに見つかった用途不明、おそらく新種の呪物です。規定に則り、未確認呪物専用のケースに収納して運びましたわ」

「……なるほどね。運ぶ道中であったことも、覚えているかぎりで良いので教えてほしいな」

「分かりましたわ。道中のことですね。深層から、ダンジョンの外へ出るまで二十四時間、その間に、六回ほど魔物との戦闘がありましたの。道中で一度食事を含めた休憩を取り、ダンジョンの外へ戻ってからは、探索者協会へまっすぐ向かい、協会を通して、あなたへ鑑定の依頼をしました」

「ふむ……」


 今の聴取の中で大岡には気になったことがあった。些細なことでも呪物の正体を探るためのヒントになる。大事な質問だと気を引き締めて、大岡は尋ねた。


「食事を含めた休憩……その食事内容は覚えてる?」

「食事内容? ええ、覚えていましてよ。あの時に食べたのは完全栄養食六号でしたわね。ほら、あのカロリーバーみたいなやつですわ」

「ああ、あれ結構美味いよな。一回だけ、食べたことがある」


 大岡は、以前トワが持っていたものを食べさせてもらったことがある。トワは「美味いけどカロリーの塊だよ」と言っていたため、大岡がそれを食べたのは一度きりだ。美味いものは好きでも、太りたくはない。


「……つまり、肉や卵は食べていない?」

「ええ、何か不味かったですか……?」


 不安そうに応えたマリーに対して、大岡は慌ててしまう。必要な質問だったけど、それで相手を不安にさせてしまうのは、大岡の望まないことだ。


「むしろセーフ。あの呪物の前で肉や卵を食べる方が危なかったと思う。私の推測が当たっていればだけどな……」


 なんとなく、大岡には今回の呪物の正体が見えてきていた。

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