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第一話「道士と殺人鬼」9
顔面を蒼白にして彼女は黒い影を睨みつける。
「お前が斬り裂きジャックか!」
『……』
影は答えず、再び大剣を振りかぶった。
「あんたはなぜ殺す! 私たちがあんたに何をした!」
『……』
涙を散らしながらの叫び。
しかし、黒い影には瞳らしき二つの赤が燃えるが、感情らしきものは読み取れない。
ただ機械的に、再び断頭台が如き刃が振り下ろされる。
が――今度はその刃が止まる。
中空の見えざる何かにぶつかり、水面のように波紋を散らす。
「これは……」
東洋の筆で書かれたと思しき、墨文字の札。
それが数十枚ほど宙に舞い、そこから広がる波紋が剣を受け止めている。
空間を波立たせ、何も無いはずの宙を壁としているのだ。
「こ、これって……?」
「下がっていろ」
声は真上から響いた。
そこには胴を両断された男の上半身が浮いている。
その胴からは血は一滴たりとも零れず、代わりに宙を舞っているのと同じく奇怪な筆文字が書かれた札が、その断面より覗いていた。
「あ、あんたは一体……」
「そいつと同じ、『人でなし』だ」
その言葉を示すように札が張り子のように彼の下半身を再生していく。




