番外3、キラキラ星とたそがれる猫
ガタンガタンと、揺れる電車の夢を見た。
この世界には無い、文明の塊。
学生がおしゃべりしてる。スマホを見てる人、音楽を聴いている人、何気ない日常。
ここは気候が違うようで、曇りの時は薄い雲がかかることが多い。
あの、うだるように暑い夏の入道雲を見ることも、秋だなぁって思う、うろこ雲も無い。
四季が無いのだ。
年中、朝晩は肌寒く、昼は半袖でもいいくらいだ。
暦の上で、冬季はあるらしく、何年かに一度、雪が降る。
屋根の上で、夕日を見ながら、もう、帰ることの無い世界に想いを馳せる。
大好きだった歌を思い出す。
歌っても人から聞くとニャーニャーなんだろうけど。
遠くに見える牧歌的な風景に、豊穣の歌を歌う。
独唱だ。
カラオケ大好きだったなぁ。
イメージは歌姫だ。凪いだ海。美しい緑。優しい空の青。
文明の遅れた、この土地が少しでも富み、人々が飢えずにすみますように。
去年よりも多くの実りがありますように。
「歌を歌えるのか。」
!!!!!!!!!!
はいっ??
ビックリしたよっ!
危うく屋根から転げ落ちそうになって、レンに支えられる。
ん?
支えられる?
手が!!ちょっとまて?猫の手じゃない!
待って、人間の手!!
んん?ちっちゃい、子供の手。
でも、透き通ってる!!
「どうした?夜は時々、人型になってたじゃないか。無意識か?」
『えっ??』
気がつくと、レンにぶら下がってる自分(猫)がいる。
「無意識のようだな。氷猫に戻ってる。寝ている時が多いし、人型を取っても話さないから、話せないのかと思っていたが。訓練次第では、人型で会話もできるのではないか?」
ニャーン。
残念。残念すぎるぅぅぅ。
でも、手は透き通ってたし、それじゃ幽霊みたいじゃない。
まじまじと手を見る。うん。見慣れた桃色の肉球が我ながらカワイイ。
「ミイ、お前、寝てる時はしっかりと実体化してるからな。ここに来た時からだからな。赤ん坊の時からだぞ。猫に戻る時に透けたようになるが、寝てる時に見たら普通に人間のようだぞ。」
ちょっ。待ってレン。
どういうこと?
知らなかったよ。そんなこと。
寝てる時に実体化するって。どういう事?
ええ?
ちなみに、私の性別って何なんでしょう??
破魔獣だから。でも、男の子ではないはずなんですよ。
ええっと。えっと。だって、排泄の必要がないから自身の性別に無頓着でいられたというか。
破魔獣だから、ジェンダーフリーとか、そういう生き物なのだと思っていたんだけど。
待って。
こういう時の、変身のお約束って、真っ裸じゃありません??
すごく嫌な予感がするんですけど。
だって、私の猫ベッド、レンの部屋だし。猫ベッドなのに、やたら大きくて、金持ちは違うなーとか思ってたのに。
そっち?
デブ猫になるハプニング前からデカかったよ。
と、いうことは。人間の子供サイズで寝てたからベッドがデカかった??
挙句、時々、レンのベッド潜り込んで寝てたよね??私。
ああああ。やらかしたぁぁぁ。
「知らなかったのか?夜になると、人型になるから、他の部屋で休ませる事が出来なかったのだが。」
絶対、漫画だったら、ボンって効果音と一緒に、赤くなってるよ。ゆでダコだよ!!
「子猫だから、色々理解できてなかったのだな。親もいないし。ミイ。お前、知らないっぽいから行っておくが、メスだからな。外で人型になると真っ裸だから、気をつけろよ。まだ、人間でいう7歳ぐらいの見た目だがな。」
ひいいいぃ。やっぱり。やらかしてた。
子供で許してもらえる?
でも、成長したらどうなるんだろ?
「この際、言っておこう。寝てる時に、ゴロゴロ動いて顔を蹴るのはやめてくれ。」
!!!!!!!!!!!!!!
ごっ。
ごめんなさい。
レン、ごめんなさい。本当に。このとおり。
しゅーんとしてたら、よしよししてくれる。
レン優しい。
イケメンに育ったなぁ。
いや、もう、絶対、猫ですごそう。いや、もう、魔獣でよかった。人外万歳です!