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【打ち切り】クラガリのムコウ -当世退魔奇譚-  作者: よぎそーと
十一章

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97話 回想2:もう一人

 周囲から気配が消えて行く。

 物音が消えて、人影も失せていく。

 ありえない静寂が周囲を包んでいく。

 その事に気づく事もなく、封印派は待ち伏せのための場所に張り込んでいた。

 化け物に対応出来る能力が無い者がほとんどだから仕方が無い。

 大半は武装した一般人であり、どれほど訓練を積んでいたとしても化け物と渡り合う能力は無い。

 それらはそうと知らぬうちに接近してきた化け物に取り憑かれていく。

 すぐに何かが変わるわけではないが、肉体と精神は寄生され徐々に変質していく。

 その予兆として、取り憑かれた者達の大半は軽い目眩をおぼえた。

 なのだがそれを長時間にわたる待ち伏せによる緊張によるものと思ってしまった。

 故にほとんどが自分達の周囲に結構な数の化け物が出回ってる事に気づきもしなかった。



 化け物に対応出来る少数の者達はさすがにそれらに気づいてはいた。

 発生した境界を感じ、すぐに近くにいた者達に警戒を促そうとしていく。

 化け物の存在を感じとる事が出来ない者達も、それで異変に気づく。

 すぐに他の者達と連絡をとろうとしたり、簡単な対策として周囲に塩をまいたりしはじめた。

 対応出来る者は周囲を見渡し、境界化を起こした化け物がどこから来てるのかを確かめようとする。

 すぐに絶望的な状態になってる事に気づいていく。

 周囲は数多くの化け物が取り囲んでいる。

 空には十数匹の飛行型の化け物が飛び、道路も陸上型のものが封鎖している。

 逃げ場らしい逃げ場はない。

 逃れるには、どこか一カ所だけでも良いから包囲網に穴をあけるしかなかった。

 待ち伏せという目的はあるが、それを果たす余裕は無い。

 今ここで逃げ出さねば自分自身の命が失われる。

 危機感が次の行動を選択させ、現在地からの撤退を促していった。

 すぐ近くにいた者達に声をかけ、そこから逃げだそうとする。

 能力のない者達には、取り憑かれないように自分達に塩や御神酒をかけるよう促す。

 それから彼等はその場から逃げだそうとした。

 本来、ヨドミから出てくる化け物を排除するためいた対応能力者達だが、今は自分達がこの場から出て行く為に能力を用いようとしている。

 それもすぐに終わった。



「よう」

 声が聞こえた。

 先頭にいた者が切り捨てられるのと同時である。

 いつの間にあらわれたのか、目の前には人間が立っていた。

 誰だ、というのが最初に浮かんできた。

 そして、どこから、とも。

 目の前にあらわれた者に面識はない。

 その場にいた者達にとっては初対面である。

 境界の中で活動してるところから、相手が対応する能力をもつ者なのは予想できた。

 だが、どこから表れたのかが分からない。

 今の今まで存在に気づく事が出来なかった。

 封印派達の見えない所に隠れていたかもしれないが、それにしたってすぐに目の前にあらわれるとは考えにくい。

 待ち伏せしてる彼等は十人ほどはおり、それぞれが相互に死角を補いあっていた。

 全員が気づく事はなくても、そのうち一人は何かに感づくことはありえたはずである。

 それもなく、目の前の男はいきなりあらわれた。

 異様だった。

 その男は驚愕してる封印派に、

「じゃあな」

 短い声をかけた。

 手にした刀を振っていく。

 次の瞬間、もう一人の仲間が切り捨てられた。

 一刀両断である。

 他の者達が慌てて銃を構えるも、更にもう一人を切り捨てる。

 引き金を引いてどうにか弾丸を発射するも、恐ろしいほど素早い動きで弾丸を避けられた。

 それどころか、一気に間合いを詰めて次の一人を切り捨てる。

 ここに来て彼等は目の前の者が想像以上に厄介な相手である事に気づいた。

 しかも。

「どうしたんです、どこに撃ってるんですか?!」

 仲間から疑問をなげかけられた。

 目の前に男に向けてなのだが、何でそれが分からないのかと思う。

 しかし、すぐに理由を察した。

 声をあげた者は、能力を持たない者だ。

 対して、銃を撃ってるのは、見える者。

 ならば合点がいく。

(こいつ……)

 生き残っていた化け物が見える者の、それが最後の思考だった。

 刀を手にした男が何者なのかが分かった。

(トガビト……)

 体を切り裂かれながら答えにたどり着く。

 全てが遅すぎたが。

 指が引き金を引いてあさっての方向に弾丸をばらまく。

 下半身から切り離された胴体が地面におちるのを感じる。

 残り数十秒もない余生の中、地面に落とされた衝撃にうめく事も出来ず、仲間の断末魔を耳にしながら意識を失っていった。



「なんだよ……」

 ヨドミから出て来た者達は、周囲が境界になってる事にすぐに気がついた。

 化け物も数多く集まってきている。

「どうなってんだ」

「どっから出てきたんだ、これ」

 何も分からない。

 ただ、面倒な事になってるのだけは分かる。

「やるしかねえよ。

 行くぞ」

 リーダー的な立場にいた者がそう言って踏み出していく。

 そこに居ても何も変わらない。

 とにかく化け物を突破しない事にはどうしようもない。

 ユガミを倒してきたので消耗してるから、その分は不利である。

 だが、封印派を警戒して人数が多めだったのが幸いした。

 五人いるから、ここを突破する事は可能だった。

 化け物だけならば。

 踏み出した彼等の前に、刀を持った男があらわれる。

 その顔を見て、彼等は足を止めた。

「あんた……」

 見知った相手だった事もあり、動きを止めてしまった。

 それが明暗を分けたのかも知れない。

 初動において相手に先制権を奪われた。



 五分後。

 封印派もヨドミの破壊派も関係なく誰もが倒れた。

 その死体を持って化け物が退散していく。

 一体のトガビトに率いられて。

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