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【打ち切り】クラガリのムコウ -当世退魔奇譚-  作者: よぎそーと
十一章

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96話 回想2:思惑

「静かだよなあ」

 移動してる途中、後部座席で誰かが口を開く。

「本当に何もないよな」

「だな」

 別の誰かが相手をし始めた。

「もっと一気に畳み掛けてくると思ってたけど」

「何にもないな」

「どうせ見張ってるだろうけどね」

「こっちの動きを?

 ストーカーみたいだな」

「似たようなもんだろ」

「違いねえ」

 呆れ、うんざりしながらぼやいていく。

 再開されたヨドミ破壊に向かう途中、彼等は辟易した気分で封印派の事を考えていた。

 姿は見えないが、おそらく周囲のどこかに潜んでるだろうと思っていた。

 今も自分達の動きを監視してるはずだと。

 どれだけ情報収集能力があるのか分からないが、封印派の目と耳はそこかしこにある。

 隠し事など出来るものではない。

 相手の組織力を考えれば仕方ないと誰もが思ってはいる。

 それでも気分の良いものではない。

「鬱陶しいな」

「片付けちまったほうが後腐れなくていいんだけどな」

 やりたくてもなかなか出来ない事を口にしていく。

 出来たら苦労はしないが、言わずにはおれなかった。

 どうしても鬱憤がつもっていく。

 それらはそのまま化け物に向けられていく事になるが、それまでが大変だった。

 ヨドミに入れば遠慮無く最大値まで積み上げた不満をぶつけられる。

 それまではタダひたすら我慢だった。

 自分達の後ろに、そうさせている連中が追跡してると理解しながら。



 後ろについてる彼等はその時、武装して町へと繰り出していた。

 寄せられた情報から、ヨドミを破壊して回ってる者達の動向は把握している。

 暫くなりを潜めていたようだったが、ここに来て動きを再び活性化させていた。

 ヨドミへと向かって移動をはじめたのを、張り込んでる者達から伝えられた彼等は、何台かの車に分乗して出発した。

 彼等が(ヨドミと日常の)崩壊派と呼んでる者達を止めるために。

 その手段として、手に入れた銃器などを用いるのは、彼等とて躊躇うものはあった。

 可能ならばもっと穏便な手段でどうにかならないものかと。

 しかし、平行線を辿る双方の意見が妥協点を見いだす事はない。

 どちらかが折れるか倒れるまでこれは続いていく。

 ならばと考えた彼等は、手似入れた武器を用いて相手を殲滅する事にした。

 仲間からも反対は出ていた。

 慎重さを求める意見もあった。

 しかし、それらも度重なるヨドミの破壊と、それに伴う周囲の変化を前にして沈黙していった。

 彼等もそれらを良しとしているわけではないが代案がない。

 進んでいく変化を止める手段が他にあるなら、賛同者も増えたであろう。

 そうでなかったからこそ、強硬手段に支持が集まった。

 また、主導権を握った強行派が穏健派を駆逐したのも大きい。

 反対意見を出した者達を左遷しただけに留まらない。

 穏健派に増えていった行方不明などが、少数になったそれらの意見を物理的にも減らしていった。

 何が起こっているのかを察する者は多かったが、自分が対象になってはたまらないと誰もが口を閉ざした。

 おかげで……と言って良いのかは分からないが、結果として封印派の動きは一本化されていった。

 全体が一つの方向に向かっていく時に、異なる意見があるのは大きな問題となる。

 その懸念が排除された事で、目的に向かっての活動は一気に加速していった。



 それが成功したかどうかは悩ましいものがある。

 確かにヨドミを破壊して回ってる者達を倒す事は出来た。

 ヨドミの中においてはさすがに分が悪かったが、全く成果が無いというわけではない。

 しかし、その成果の為に祓う犠牲が大きかった。

 それでもこの行動が取りやめになる事は無かった。

 犠牲は大きかったが、ヨドミの破壊活動が止まったのだから。

 それが一時的なものであろう事は予想がされていたが動きが止まっただけでもありがたい。

 失敗は反省の材料として改善と改良を与えられる事にもなった。

 それらを踏まえて今回につながっている。

 誰もが前回よりも良い結果が出ると疑っていなかった。



 ヨドミに入っていく崩壊派の姿を確かめ、その周囲に展開していく。

 出来るなら破壊される前に止めたいのだが、それは不可能だった。

 やってやれない事もないだろうが、ヨドミの中では気力が大きな効果をもたらしていく。

 それが人数や装備の差を覆す要素となる。

 なので、中に入ってどうにかするのではなく、出て来た所を叩く事になった。

 内部に置いては戦力差が覆ってしまうが、外に出ればそういうわけでもない。

 気力の効果が大きく減る現実にて対処するのが一番楽に事を成し遂げられる。

 成功と失敗の対比から導き出した答えである。

 前回も同様の意見は出ていたのだが、それでは周囲に気づかれる可能性が大きくなる。

 銃声が鳴り響けばそれもそうだろう、という事でヨドミの中でどうにか事を終えようとする者が多かった。

 しかし、それが出来るほどの能力を持つ者がおらず、それは多大な犠牲をだすだけに終わっていった。

 それよりも、こうして待ち伏せしてる方が成功率は高かった。

 特に、ユガミを倒した後の撤退中に襲撃した場合は大きな成果をあげている。

 考えてみれば当然だった。

 万全とは言い難い状態に陥ってるので、戦っても生き残る可能性が高くなっている。

 脱出しなければユガミの崩壊に巻き込まれて消えていくので、必ず出入り口まで戻ってくる。

 それを見越して地雷などの罠を仕掛けた場合、更に大きな効果を出した。

 それらをかいくぐって外に出ても、現実の中で銃弾を浴びせればたいていは倒す事が出来た。

 これを無傷で逃れた者はそれ程いない。

 なので、ヨドミ破壊に入っていった後に続き、随所に罠を仕掛けていく。

 それに引っかかって吹き飛べば良し。

 それがかなわなくても、撤退を遅らせてヨドミの崩壊に巻き込まれれば良し。

 そこを突破しても、最後の最後で出て来た所を攻撃する。

 これが封印派の作戦となっていた。

 周辺に射撃音などが聞こえるから、出来ればヨドミの外での戦闘は避けたいとは思う。

 もみ消すことも出来るが、その労力は結構なものになるのでなるべく権力を使わないようにしたかった。

 しかし、現実でしか能力差を覆せないのだから他に選択肢はない。

 まだ工夫は必要だろうが、前回までの教訓から導き出されたこの方法が封印派にとって最善の手段であった。

 あと暫くしてから中に入り、それから様々な仕掛けを施していく。

 中に潜んでる化け物に反応する可能性もあったが、それは仕方が無い事として割り切るように言われている。

 また、そういった事態に備えて、可能な限り多くの罠を仕掛けるようにしていくつもりだった。

 可能な限り奥まで進んで。

 出来るかどうかは分からなかったが、しなくては結果を出すことは出来ない。

 時計を見て頃合いを計りながら、彼等は一網打尽にする瞬間を思い描いていった。

 自分達に何が迫ってるかも知らないで。



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