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【打ち切り】クラガリのムコウ -当世退魔奇譚-  作者: よぎそーと
九章

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84話 回想:地下

「じゃあ行ってくる」

「気をつけて」

 一人エレベーターに乗せられる事になったノボルが、マキの冷たい声に見送られる。

 何かあるかも知れないから偵察はしておいた方が良いのでは、という事になった結果である。

 ただ、最悪の場合の犠牲を減らす為に人数は可能な限り少なく、とも決められた。

 その結果、多数決という民主制度の暴力によりノボル一人が乗り込む事になった。

 日頃の言動と態度と行いの賜であろうか。

 現実的な理由として、ノボルの能力ならば大丈夫だろうというのもある。

 それでも一人で突入させるのは危険であるが、犠牲は可能な限り減らしたいという理由もある。

 もともとの人数が少なく、新しい参加者も簡単に見つけられるものではない。

 今いる人数でやりくりせねばならない彼らにとって、犠牲は最小限におさえる事が求められる。

 今回、先に何があるのか分からないだけに人数を割くわけにもいかなかった。

 とはいえ、兵力が少なければ無意味な犠牲を増やしかねない。

 さじ加減が難しいところだった。

 考え抜いた(と言って良いか悩ましい)結果、このようになっている。

 もちろんノボルだけというのに反対の者もいたが、先がどうなってるのか分からないのでどうしようもない。

 何かあったらすぐ連絡を入れる事を何度も念押しして向かう事になった。

 とりあえず扉をおさえてすぐに閉じないようにしておく。

 いきなり動き出してしまう危険をおさえるために。

 どれほど効果があるか分からないそんな措置をしてもらいながらノボルはエレベーターに入る。

「……地下があるみたいだな」

 ボタンを見てそう言う。

 今まで地上階だけの移動だったので以外だった。

 実際のビルにあるかは分からないが、ヨドミのほうのビルには地面の下の階層があるようだった。

「あと屋上か」

「どっちに行く?」

 両方とも階段では行けなかった場所である。

 どちらを先にするかで少し考える。

 順番が前後するだけで大した差はないのかもしれないし、もの凄く大きな違いになるかもしれない。

 こういう二択は悩むところだった。

 数分ほど行き先ボタンを睨み続けたノボルは、屋上を押した。

 抑えていた手が離れ、扉が閉まる。

 上へと向かったエレベーターの階数表示を、その場にいた者達は無言で見つめる。



 その後すぐにトランシーバーから連絡が入る。

『何にもねえな』

 短いがよく分かる内容だった。

『一応外には出たけど、何があるってわけじゃないし。

 そっちに戻るわ』

 そう言ってエレベーターが降りてきた。

 それがカズヤ達の居る階に到達し────そのまま下へと向かっていく。

「あれ?」

 一度戻ってくるはずがそうならない。

 すぐにトランシーバーを持つ者が声をあげた。

「おい、どうした?」

『いや、それが止まらないんだ』

 切迫感を感じさせない返答が雑音混じりで届く。

「それ、まずくないですか?」

『そうなんだけど、こうなったらどうしようもない。

 行くところまで行くしかないわな』

 開き直ってはいるが、強がってるわけではない。

 どうにもならないのだから、成り行きにまかせるしかなかった。

『出来るなら応援よろしくなー。

 こっちも連絡は入れるから』

 そう言いつつエレベーターが地下に入っていく。

「……電波、届きますかね?」

「さあ?」

 不安はあるが、今は様子見である。

 さもなくば、

「こっちのエレベーターで下に行ってみます?」

 まだ扉を開いたままのもう一つのエレベーターに目が集まる。

「どうする?」

 使えばノボルの所に行けるだろう。

 だが、何がどうなってるのかも分かららない所に踏み込むに踏ん切りもつかない。

 ノボルを見捨てるつもりはないが、危険を考えると行動にうつすことができない。

 連絡があれば多少は違うのだろうがそれもない。

 しかし、トランシーバーからの連絡はない。

 携帯電話も同様だ。

 電波が通じてるかどうかも分からないが、ノボルからの連絡はない。

 そんなすぐに寄越す事もないのかもしれないが気になった。

 それ以前の問題として、

「地下だから、電波がとどいてないんじゃ」

 十分にありえる話しだった。

 このままでいたら、ノボルの危険が増すだけに思える。

「どうする?」

「行った方がいいとは思うけど……」

 誰もが決めかねていた。

 迷ってる場合でもないのは分かっていても。

 こうして悩んでる間に、ノボルが危険になってる可能性は十分にある。

 急がなければ間に合わないかもしれない事も。

「行くしかないだろ」

 全体をまとめていた者が口を開く。

「全員で行ったら何かあった時にまずいから人数を絞る。

 乗り込める人数も限られてるしな」

 定員九人のエレベーターであるので全員は乗れない。

「行きたい奴いるか?

 できれば五人六人くらいがいいんだが」

 定員からすれば余裕のある人数だが、限界に挑むわけにはいかない。

 残った者達の安全確保も考えねばならない。

 下に向かって帰ってこなかった場合の事を考えて、損害を限定する意味もある。

 それらを考えての割り振りだった。

「俺、行ってきます」

 カズヤがすぐに声をあげる。

 他にも何人か。

 全部で五人。

 丁度良い数だった。

「分かった。

 それじゃ、頼む」

 全員を率いている者の声に、エレベーターに乗り込んだ者達が頷く。

 地下階のボタンを押して扉が閉まり、エレベーターが降下していった。



 地下に到着し、扉が開くと物音がした。

 数メートルほど離れたところでノボルが刀を振るっていた。

 周りには化け物が何匹もいる。

 すぐに飛び出しノボルに加勢していく。

 地上部分と違い、エレベーター前はかなり広い。

 駐車場と思えるその空間は、人影型の化け物がかなりうろついていた。

 それらがノボルに向かっていっている。

「ゾンビ映画みたいだな」

 誰かの感想がそのままこの状況をあらわしていた。

 もちろん黙って見ているわけにもいかない。

 すぐさま加勢に加わっていく。

 すぐさま化け物は一掃されていった。



 安全を確保してからあらためてエレベーターを動かそうとしてみる。

 どういうわけか二台とも地下に来ていたエレベーターだが、それらは動く素振りも見せない。

「駄目だな。

 電気が通ってないみたいだ」

「それ、本当に通ってたのか?」

 疑問を抱くも、使えないものは使えない。

 こうなる可能性も考えてはいたが、予想通りになるとさすがに焦燥感を抱いてくる。

 とはいえ、これはすぐに解決した。

 周囲を少しばかり歩き回っただけで階段が見つかった。

 念のために一階まで行ってみて、扉に鍵がかかってないのも確認出来た。

 何かの拍子に締め切られてしまうかもしれないので、開いた状態で固定しておく。

 ただ、化け物によって閉じられる事もありえた。

「見張りは必要だな」

 やむなく、何人かをこの場に残す事にした。

 地下と一階部分のそれぞれに二人。

 化け物だけが相手ならこれで十分だった。

 ただ、その分探索に割く人数が減る。

「しょうがねえか」

 そうぼやくノボルは、カズヤを従えて地下の探索へと向かっていった。



「あの、俺でいいんですか?」

 疑問を口にして尋ねていく。

「何が?」

「戦力ならマキさんとか、他の人の方がいいんじゃ」

「そりゃそうだな」

 あっさりと肯定された。

「でもよ、お前の親父さんが絡んでる場所だからな。

 何となく、お前さんがいた方がいいんじゃないかなーって思ってな」

「そんないい加減な」

「いやいや、意外とこういうのも大事だぞ」

 カズヤの呆れた声をノボルは否定する。

「どこにどんな縁があるか分からんし。

 因縁があるなら断ち切らなきゃならん。

 関係者がいるなら、それを無視するわけにもいかないからな」

「そんなもんですか?」

「そんなもんだ」

 ノボルは躊躇いをこれっぽっちも見せずに答えた。

「少なくとも俺はそう思ってる。

 それだけ気にしてるわけにもいかないけど、忘れたり欠かしたりしちゃいけない事だと思うんだ」

「はあ……」

 とはいえ釈然としない。

 本当にそれで良いのかと思う。

「それに、お前の経験値稼ぎもあるしな」

「まあ、それは……」

「それだけでも十分な理由だろ」

 そう言われてしまうと何も言い返せない。

 確かに強くならねばどうしようもない。

 実際に幾つかレベルアップしてみて実感してる。

 強くなる事で楽が出来ている。

 能力が上がる事で負担は減っている。

 経験値と行ってる修養値が手に入るなら、危険が無い範囲で頑張りたいとは思っている。

 それこそ土台無理な話ではあるのだが。

 強くなるだけでなく、金銭にも変換出来るのも大きな理由になっている。

 何かが欲しいというのはないが、あれば便利なのは確かなのだから。

「ま、がんばろうや」

 良いながらノボルは化け物のいる方へと向かっている。

 更に地下へと続く下り坂の方からだった。

 この下に更に駐車場があるのかもしれない。

 そこから出て来てるのだろう。

「いくぞ」

「はい」

 武器を構えて二人は、化け物に斬りかかっていった。

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