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【打ち切り】クラガリのムコウ -当世退魔奇譚-  作者: よぎそーと
六章

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59話 差異 → 到達

 突入して一時間もしただろうか。

 目的である奥まで到着する。

「たぶん、この先がユガミだ」

 カズヤの声に、アヤナの体が強ばる。

 対象敵にコウジは、「さっさとやりますか」と気楽だ。

 言う程軽くとらえてるわけではないのだが、アヤナにはそう思えた。

 何というか、余裕が感じられる。

 苦戦はするだろうけど、倒せない事はないだろう、という感じがする。

 それはそうだろうと思う。

 ここまで来る間に見てきた事を思い返せば、決して無理だとは思えない。

 むしろ苦戦する事の方が想像できなかった。

 思い込みは危険だが、実際に目にした二人の力量を考えればそれほど見当違いとも思えない。

 むしろアヤナは自分の事が心配だった。

(大丈夫なのかな、入っていっちゃって)

 ユガミと対峙する事になるが、果たして生き残れるのか。

 それが心配になってきた。

 だからといって待ってるわけにもいかない。

 一人になったら、それこそすぐに殺される。

 二人についていくしかなかった。

「そうだ」

 カズヤが振り返る。

「一応、塩を体にふりかけておいて。

 幾らか変わってくるから」

 言われた通りに塩を頭からかけていく。

 それと、入り口付近にも塩をまいていく。

 線香を立てる道具もあったので、それをつかって線香をこの場に立てていく。

 このあたりのやり方はユウキ達に教わった事だった。

「ついでに、酒も振りまいておいて」

「あ、はい」

 荷物の中にワンカップの日本酒が幾つか入ってるのを思い出した。

 それを塩をまいた外側に数滴ずつたらしていく。

 これもまたお清めの方法である。

 また、もう一つを開封した状態で塩をまいた部分の中央あたりに置いておく。

 こうする事で、効果が増すという。

 言う程効果があるのか分からないが。

 それらが終わったところで、ヨドミのいる場所へと入っていく。



 重たい鉄の扉を開いた先は体育館だった。

 文字通り体育に使うだけでなく、大規模な集会を使うための場所。

 その壇上に人の形をとっているものが一体。

 更に、いくつかの小柄な人影が集まっている。

 ぞれらも外見は人間の子供のように見えた。

「あれが、ユガミですか?」

「多分な」

 言いながらカズヤは壇上に立つ化け者に向かっていく。

 小柄な人影達がそれにあわせて飛び降りてくる。

 カズヤを迎撃するつもりなのだろう。

 何も言わずにコウジが銃を構える。

 何十体といる子供の姿をした化け物に向けて。

 その後ろで、アヤナが塩をまいていく。

 体育館は広いので、少しでも化け物の動きを制限できる場所を拡げておかねばならない。

 それから線香にまとめて火をつけ、周囲にばらまいていく。

 煙が立ちこめ、これらも幾らか化け物の行動を阻止してくれるはずだった。

 それが援護になり、アヤナ自身の身を守る手段にもなる。

 もっとも、それが必要なのか疑わしかったが。



 近づいて来る化け物と接触する前に、カズヤの拘束が飛んでいく。

 まとめて数匹ほど捕え、とりあえず接触する数を減らす。

 その数メートルほど後ろを歩いていたカズヤも引き金を引いていく。

 連射されていくBB弾が化け物の体を貫いていく。

 断続的に発射されるBB弾は可能な限り化け物の心臓の位置を狙う。

 全てが当たる事はないが、三体ほど核を撃たれたものもいる。

 すぐに消えるほどの損傷は受けてないようだが、足を止め、派手にもだえていく。

 化け物のほとんどはそうやって倒れていく。

 それでも止められなかったものもいるが、それらはカズヤの刀で斬られていった。

 風を切る音が鳴る度に化け物が消えていく。

 しかしそうしていっても化け物が減る事は無い。

 壇上にいるユガミは次々に化け物を呼び出し、カズヤ達のほうに向けてくる。



「召還系か……?」

 手下になる化け物を次々に呼び出す能力を持ってるのかもしれない。

 さほど強いものを呼び出すわけではないのだが、数が多いのは厄介だった。

 疲れて動きがとれなくなったり、気力を使い果たして何も出来なくなる事もある。

 なるべく早くユガミを倒したいのだが、なかなかそうもいかない。

「コウジ」

「なんすか?」

「銃でユガミを狙ってくれ。

 近づいてくのも面倒だ」

「はいよ」

 やり方を少し変える。

 離れていても攻撃が出来る銃ならその場からでもユガミを狙える。

 コウジは言われた通りに拳銃を抜き、壇上のユガミに狙いを定める。

 核を狙うのは難しいが、体のどこかには当てる自信はあった。

 引き金を引いて、派手な破裂音を鳴らす。

 一発。

 発射の反動がおさまるのを待って、もう一発。

 更に三発目も放つ。

 当たればそれなりの損害を与えられるはずだった。

 が、相手もそれを予測してたのか、呼び出した化け物を自分の前に進ませる。

 それらが肩を組み、壁になってユガミを守る。

 小柄なので高さが足りないが、最初に肩を組んだ者の肩に飛び乗っていく。

 軽業、曲芸のような事をして壁となった小柄な化け物達は、射線をふさぎユガミへの直接攻撃を妨げる。

「あちゃあ……」

「どうします?」

「どうするって……」

 こうなってしまったらやる事は決まってる。

「近づくしかないな」

「ですよね」

 他に手段はない。

 間を遮る化け物を倒しながらユガミに近づくだけだ。

 面倒なので、まともに相手をする気もない。

「おーい、嬢ちゃん」

 後ろにいるアヤナを呼ぶ。

「こっち来て、塩をまいていってくれ」

 手間は極限まで減らしていく。

 無駄に根性を使う必要はない。



 カズヤとコウジに守られるようにアヤナは進んでいく。

 塩をまきながら。

 面白いように化け物が後ろに退いていく。

 線香からのぼる煙もあってか、向こうから近づいてこようというものは少ない。

 時折飛びかかってくるのもいるが、すぐにカズヤとコウジが倒していく。

 その間にもユガミは化け物を次々に呼び出しているが、塩をまいた所には入ろうとしない。

 とはいえ、良い事だけというわけでもない。

 使い続けてるので手持ちがドンドン減っている。

 ユガミに到達するまで保つか分からない。

「あの、途中で無くなるかもしれないんですけど」

「まあ、その時はその時だ」

「どうにかなるもんすよ」

 二人はいたって気楽な事を言う。

(そりゃそうかもしれないけど)

 二人ならどうにかなるかもしれない。

(でも、私はどうなるのよ)

 手持ちの道具が無くなったら、アヤナはそこで終わりである。



 そうこうするうちに壇上に上がり、ユガミの目の前までやってくる。

 既に体育館の半分くらいは化け物で埋まっていた。

 塩をまいてる所だけが通路のように空いている。

 それは良いのだが、そこから先に進むのはもう無理に思えた。

「あの、塩とかがもう少ないんですけど」

 最後の一袋の半分しか残ってない。

 他の道具も同じようなものだった。

 ここで使っても先に進めるかは分からない。

 化け物どもはそれこそ壁のようになってカズヤ達を遮っている。

 とてもこの先に進めるとは思えなかった。

 アヤナには。

「ま、ここまで来れれば」

「どうにかなるっすよね」

 二人はこんな状態でも至って暢気な事を言っている。

「じゃあ、嬢ちゃんはここから戻って」

「入り口のあたりで待っててくれればいいっすから」

 とんでもない事まで言ってくる。

「無理ですよ……」

 確かに塩のまいてあるあたりは大丈夫かもしれないが、襲いかかられたらどうなるか分からない。

 とても安全に戻れるとは思えなかった。

「じゃあ、こいつら片付けておくから、それまで待ってて」

「なるべく俺らもがんばるんで」

 そう言ってカズヤとコウジは化け物に向かっていった。



 カズヤが気力を刀にこめていく。

 コウジも手にした電動ガンに気力をまとわせていく。

 それからカズヤは目の前の化け物の壁に刀を振っていった。

 横一閃の斬撃は一度に数体の化け物を切り裂いた。

 核も含めて。

 コウジも目の前の化け物に向けて連射をしていく。

 目の前の化け物を貫き、体を吹き飛ばし、背後の化け物にも届いていく。

 手近にいるものなら核を狙う。

 すぐさま目の前の十体が消えていく。

 その上に乗っていた化け物どもが床に崩れ落ちる。

 何体かが塩の上に転落し、悲鳴をあげていく。

 崩れていく体を激しくのたうちまわらせ、そのせいで周囲にある塩に更に体を投げす事になってしまっていた。

 しかし、おかげで塩が化け物の体と共に消えていく。

 その上を化け物が進んでくる。

 仲間を踏みながら。

「塩をまいて、とにかくまいていって」

 カズヤの言葉にアヤナの手が動いていく。

 迫って来る化け物どもがそれで一旦動きを止める。

 だがすぐに戻ってくる。

 新たにまいた塩も、倒れた化け物にかかって消えていく。

「酒も使って、とにかく何でもいいから使って」

 言われるまでも無かった。

 塩がきれたら残った最後のワンカップ酒を取り出してそれをまいていく。

 こちらは塩よりも強力なようで、ふりまいたら化け物がほとんどすぐに消えていく。

 効力もいくらか残るようで、ふりまいた辺りに化け物が侵入してこない。

 いずれ踏み込んでくるかもしれないが、すぐに行動してくる素振りは見えない。

 その間を利用して、線香を取り出して火をつけていく。

 煙の上がったのを見て周囲に投げ、周囲にいる化け物を追い払う。

 せいぜい数分しか保たないが、それだけの時間が稼げれば良い。

「もう、何も残ってません!」

「上等だ」

「まかせろって」

 言いながらカズヤとコウジは化け物を倒していく。

 カズヤは前に進みながら。

 コウジは迫ってくる化け物を寄せ付けないように。

 ユガミにいたる化け物が次々と消えていく。

 無理矢理切り開いた道の先に、ユガミが見えてきたのはそれから程なくだった。



 背広にネクタイ。

 なんとなく教師然としたものを感じる格好をしていた。

(まわりの小さいのは、ガキってことか?)I

 学校の教師と生徒を真似てるのだろうかと思った。

 場所柄、それはそれでふさわしいと思える。

(まあ、化け物を操るのは面倒だけど)

 それが厄介ではあった。

 やはり、これだけ数多く出て来ると手間がかかる。

 わずかな距離だから、立ちふさがる化け物どもを倒して接近できたが。

(こういう面倒なのは、やめてもらいたい)

 そう思って刀を一閃する。

 化け物の体を刃が抉る。

 それだけで核を露出させる事は出来ないが、位置はだいたい分かった。

 切り裂いた胸の一角に書くの端が見える。

 切り返した刀が核をとらえる。

 そうなるまえにユガミは周りの化け物をけしかけようとしたが、それらはコウジによって撃ち抜かれていく。

 連射されるBB弾が、カズヤに近づこうとする化け物を削る。

 核を破壊するには至らないが、体の一部を吹き飛ばされて行動不能になっていく。

 カズヤが次の攻撃を繰り出すには十分な時間だった。

 振り上げ、切り返し、ヨドミの体を切り裂く。

 それによって核の位置が掴めていく。

 一回目では上の位置を斬りすぎて仕留め損なった。

 二回目はこんどは下にずれてしまった。

 続く一撃は外さない。

 一歩踏み込んでの一太刀は核の位置を確かにとらえていった。

 この空間の中心であるユガミは、それで倒れた。


 続きは明日の17:00予定。

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