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【打ち切り】クラガリのムコウ -当世退魔奇譚-  作者: よぎそーと
五章

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53/164

53話 収束に向けて → 結果/壊滅/犠牲

 撤退をはじめていく化け物を見て、終わりが近い事を悟る。

 残ってる化け者に止めを刺していく。

 全てを倒したところで刀をおさめ、ワゴン車へと戻っていく。

 物騒な道具を人の目にさらすわけにはいかない。

 境界が現実に戻るまでにそれらは片付けておかねばならなかった。

 


 化け物が消え去ったあとの路上には、化け物に囲まれてた者達が残っていた。

 体に穴を開けてる者がほとんどである。

 連れ去られてここにいない者もいる。

 仲間の末路を見て、アヤナは呆然としているしかなかった。

 どうしてこうなったのかと。

 数でまさる敵に囲まれ、劣勢だったのは分かる。

 だが、その中にあって、カズヤ達は難なく敵を撃退していった。

 それこそ数で圧倒的に劣るのに。

 一方でアヤナ達はカズヤ達より多くいたのに、ほとんど何も出来ずに終わっていった。

 どうしてこんな差が生まれたのか分からない。

 実力が足りなかったからなのか。

 敵に囲まれるように分断されたからなのか。

 それとももっと別の要因があるのか。

 何が理由かは分からない。

 はっきりしてるのは、生き残ったのがアヤナだけであるという事実だった。



 道具を片付け終えたカズヤ達は、境界が消えて行くのを感じた。

 化け物の残骸は既に無く、辺りには倒された封印派の者達が倒れてるだけである。

 それすらも境界化の消滅と共に消え去っていく。

 ヨドミの崩壊と同じで、境界における死者も同様に消えていく。

 それは物理的な消滅に留まらない。

 その者がいたという記録や記憶すらも消えていく。

 戸籍、アルバム、各種公的書類や携帯電話の登録に、店や企業で発行してる会員カード。

 本人が住んでいた部屋や家からも存在の痕跡が消える。

 衣服や趣味で買い込んだ物は消滅するか、別の誰かの所有物である事になる。

 住まいも、他の誰かの所有物か、空き家となっていく。

 そして家族や友人知人達の記憶からも消える。

 そもそも存在していなかったかのように、全く誰も思い出さなくなる。

 ヨドミや境界における死亡は全てそのように扱われる。

 例外的に、それらを認識出来る者達を除いて。

 捕らわれて連れて行かれた者達がどうなるかは分からない。

 ただ、化け物に連れ去られた者達の大半は、近隣縁者に忘れられる。

 そもそも知りもしないという状態になっていく。

 そこから、それらも死んだのだろうと判断されていく。

 いずれ連れ去られて者達もそうなるだろうとカズヤ達は思っていた。



「それで、あの子はどうすんですか?」

 コウジがアヤナを見て尋ねてくる。

「放り出します?」

「どうすっかな」

 言われてカズヤも考える。

 助ける義理は確かにない。

 封印派ならば特に。

 だが、彼女はこういった事に巻き込まれてまださほど日が経ってない。

 分かってない事も多いはずだった。

 出来る事もほとんどないはずである。

 そんな彼女をこのまま放置するのもしのびない。

 他の封印派のように明確に敵対していたならともかく。

「とりあえず事務所まで連れていこうか」

 身の安全を確保する為である。

 家まで送って化け物に襲われた、というのでは意味が無い。

 トガビトが出回ってるだけに、その可能性は十分にあった。

「それまでは、一緒にいてもらおう」

 それもアヤナがどうするかによる。

 彼女が帰るというならそうするしかない。

 一応、必要になりそうな説明はするが、そこから先の判断は彼女次第だった。

 その結果、悲惨な事になっても、それは彼女の選んだ事なのだからどうしようもない。

 とりあえず話しをするべく彼女に寄っていく。

 ただ、どこまで話しが出来るかは分からなかった。

 呆然としてるその様子から、どれだけ気を保ってるか分からない。

(上手くいきゃいいけど)

 これもまた相手次第だった。



 案の定、アヤナの状態は良くはなかった。

 正気は保ってるように思えるが、受け答えに覇気がない。

 声をかけても振り向きはするが、目の焦点があってなかった。

 一応、言ってる事は分かってるようだが、理解に至るまでに時間がかかってしまっている。

(こりゃ、駄目だな)

 やむなく、彼女を強制的に保護する事にした。

 封印派の所に電話でも入れれば良いのかもしれないが、連絡先を知らないのでそれは出来ない。

 アヤナに聞けば良いかもしれないが、まともの答えられるか分からない。

 携帯電話などに登録があるかもしれないが、それは彼女の同意がなければ無理というもの。

 家には連絡させた方がいいとは思ったが、それも後回しにするしかない。

(戻ってくるまでにまともになっててくりゃいいけど)

 ヨドミに突入してからまだ三十分も経ってない。

 解決までには一時間か二時間はかかるだろう。

 それだけの時間があればどうにかなるかもしれなかった。

 無理だとは思った。

 平和な日本で、最近まで普通に生きていたのだ。

 仲間が死んだり連れ去られるのを目の前で見て落ち着けるとは思えなかった。



 その予想通り、ヨドミを破壊が終わって帰還の時間になってもアヤナはまだ呆然としていた。

 正気は取り戻しはしていたが、考えがまだまとまってない。

 これからどうすれば良いのかが分からなくなっていた。

 そのままでは埒があかないので、事務所へと連れて行く事にする。

 近くにあった自販機で買ったジュースを握らせてワゴン車に乗せる。

 無言で従うのが多少不安ではあったが、そのまま出発した。

(気力で治すしかないかな)

 体の怪我と同じで、精神の安定や治療も気力である程度行える。

 だが、心が完全に壊れたり死んでしまっていてはどうしようもない。

 そこまで酷い状態になってないよう願うしかなかった。



 ぼんやりと窓の外を眺めていたアヤナは、見るとは無しに外の景色を目にしていた。

 その町並みがヨドミの到着した時と幾分違うのにも気づかず。

 頭の中では仲間が倒れていく所が時折浮かんできてしまっている。

 どうする事も出来なかった惨状が何度も。

 手の届くところで行われた事は、目だけでなく五感の全てから様々な情報として取り入られた。

 それらがぬぐいがたく刻み込まれている。

 そんな再現映像から逃れるように、アヤナは意識を記憶から遠ざけていった。

 現実から逃げるように。

 続きは明日の17:00予定。

 誤字脱字などありましたら、メッセージお願いします。

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