52話 混戦 → 収束に向けて
「アヤナ!」
目の前の敵を倒してアヤナに近づこうとする。
間を遮る敵は多いが、そんな事気にしてられない。
まだ何の能力も持ってないアヤナがこちらに逃げてこれるわけもない。
どうにかしてそこまでたどり着こうとする。
他の仲間も心配ではあったが、もうどうにもならない。
アヤナ以上に離れてるか、既にやられてるかのどちらかなのだから。
ユウキがアヤナに向かっていったのはそういう状況を見ての事でもある。
だが、そこまでが遠い。
「さっさと、どけ!」
言いながら近くにいた化け物を攻撃していく。
だが、一撃で倒せるわけもない。
そんなユウキの周囲に、手の空いた他の化け物がよってくる。
逃げ場もなく、進む事も出来ずに追い込まれていく。
気力を盾にして攻撃をしのぐも、だんだんと意識を保つのが難しくなる。
また、同時に幾つもの方向を見る事も出来ない。
細く硬いものに体が掴まれる。
(しまった……)
あわててそれを打ち払うも、すぐに次のものがやってくる。
それを祓おうとしてる間にその次が。
気がつけば足が地面から離れていた。
「くそっ、離せ!」
二メートル三メートルと高度が上がっていく。
急がなければ着地が難しくなる。
だが、どれほど拳を撃ち込もうとも、気力で攻撃を防御しようとも、虫が離れる気配はない。
「何、すんの……よ!」
無理な体勢からどうにか一撃をきめて、一匹をようやく引き離す。
だが、その次の瞬間に、背中を貫かれる。
痛覚が瞬時に起動する。
だが、背中を突き刺す何かからにじみ出てくる何かがそれすら消していく。
ついでに体から力を、心から意識を奪っていく。
そうと知ることもなくユウキは、全身を麻痺させ、意識を失っていた。
目の前でユウキが弛緩していくのを目にして、アヤナは生存の見込みを失った。
どれほどがんばってもこの中から逃げられるとは思えない。
アヤナをとらえた化け物は、そのまま空へと逃げていき、いずこへともなく消えていく。
捕らえられた他の者も同じようにどこかへと去っていっている。
もう残ってるのは数えるほどしかいない。
それも化け物に囲まれて分断されてる。
絶体絶命だった。
新たに化け物どもがあらわれて一分かそこらでこの有様である。
ほんの一瞬と思える中で、アヤナ達は壊滅状態に陥っていた。
そして頭上から虫型の化け物が迫る。
目前でそれらに気力が絡みつく。
空から来た化け物どもは数が多く、簡単に蹴散らせない。
地上に降りたものも行く手を阻む。
やむなく手近に来た化け物から拘束していき、とりあえず動きを止める。
他の仲間も、障壁でとりあえず接近を遮り、止まった敵に気力をぶつけていく。
コウジも前に出て銃を撃っている。
地上にいる敵とは距離が近いので、電動ガンに持ち替え、大量の弾をばらまきながら。
本来銃器は距離を取って使うものなのだが、そうも言ってられなかった。
近寄ってくる敵から攻撃を受けるが、それは気力による盾で防いでいく。
「そのまま頼む!」
そう言ってカズヤが敵の中に突っ込んでいくのだから、コウジが他の二人の前に出るしかない。
他の二人、コウジ以上に後衛向きというか遠距離型なのでやむをえなかった。
その代わり、後ろから気力を用いた援護が受けられる。
障壁のおかげで地上の敵は食い止める事が出来るし、接近してきてるのには気力がぶつけられる。
ほぼ確実に足を止める障壁と、ほとんど一撃で行動不能にまで陥らせていく攻撃のおかげでコウジの負担も少ない。
そこから漏れた敵を攻撃するだけでどうにかなった。
封印派達の方とは対象的に、コウジ達は三人で敵を撃退し始めていった。
身体能力を強化し、化け物の頭上を飛び跳ねながら敵を拘束していく。
敵があらわれた時に、まずは仲間との連携をはかるために付近にあらわれた敵を撃破していた。
その間に封印派の方は大変な事になっていたようだが、もうどうする事も出来なかった。
やむをえないが、残ってる者を救出するのは後回しにするしかない。
そんな事をしてたら手間がかかりすぎる。
何より、そこまでしてやる義理がない。
散々敵対してきたのだから、それくらいは覚悟してもらいたかった。
手近な所にいる敵を拘束して動きを止め、敵を倒すことを優先していく。
結果としてではあるがそれが被害を最小限に食い止めてもいった。
この時点では既に大半の封印派が化け物に倒されるか、空に連れ出されていたが。
「何、すんの……よ!」
というユウキの声も聞こえた。
目を向けると、虫型の化け物に捕らえられて空に連れ出されている所だった。
拘束しようと思うも、もう射程距離から外れている。
どうにもならなかった。
仕方なしに、まだ近くにいる虫型の化け者をまとめて三匹ほど拘束した。
それが地上に落ちる。
化け物が苦しそうにもだえ始めた。
何だ、と思ってそちらを見ると、アヤナが顔面蒼白で立ってるのが見えた。
その周囲を化け物が一定の距離をとってたたずんでるのも。
おそらく塩か何かを周囲にまいたのだろう、と思った。
こんな時でも基本的な事は出来てるらしい。
状況を打破する事は出来てないが。
だが、それで十分だった。
彼女を取り囲んでる他の化け物を拘束し、刀で斬りつけていく。
一太刀で核を粉砕し、アヤナまでの道を開いていく。
地上に落ちてきた化け物が塩の上でのたうち回っている。
何が起こったのかと思ってると、横で化け物がどんどん切り倒されていっている。
その向こうから、カズヤが近づいてきてるのを見て、涙があふれそうになった。
そのカズヤが、地上に落ちた化け物を彼方で始末していく。
「大丈夫……じゃないだろうけど、とりあえず塩をまいておいて」
言われて何度も頷く。
それがカズヤに伝わったかどうかは分からないが、カズヤは気力を放っていった。
網のようか気が化け物を捕らえていく。
まずは手近にいる地上の化け物からはじまり、空にいるものにも及ぶ。
それらに刀を突きつけていき、核を的確に破壊していく。
瞬く間に化け物が倒されていくのを、アヤナは信じられない思いで見つめていた。
(凄い……)
今までの苦戦と絶望感はいったいなんだったのかと思う。
塩をまいて化け物が入ってこれない場所を確保しつつ、その姿を見つめていく。
あらためて自分達との違いを思い知った。
(こりゃあ、これ以上は無理か)
周囲を見渡しながら思う。
出来れば他の封印派の方も助けようかと思っていたが、そうもいかないようだった。
後ろにいるアヤナ以外の者達は、化け物に連れ去られるか囲まれて攻撃を受けている。
助けようにも、幾分手遅れ気味である。
それでも近くにいる者の所まではどうにかしようと、化け物を拘束していく。
結果は残念なものでしかなかったが。
アヤナの近くにいた者は、既に体の大部分を損壊し、回復もおぼつかない。
念のために最大の威力で気力を送り込んで治療をしてみたが、回復以上に生命が失われていく速度が速い。
こうなると、治療に専念して気力を用いるしかないが、戦闘中の今はそんな余裕は無い。
全く意味が無いわけではないが、死ぬのを幾らか遅らせた程度に留まってしまう。
(まあ、しょうがないか)
相手が封印派という事もあって、そこは冷淡に対処していく。
回復をこころみたのは、人としての多少の情けである。
見込みがないなら助けるつもりはない。
気力の消費も惜しいので、化け物に向かっていく。
(潮時か)
視界を共有していたものは、状況を見てそう判断をした。
カズヤがアヤナを助けに入った時点で状況は化け物に不利になっていた。
地上にいる化け物も、空を飛ぶ虫型も半分は失われている。
虫型は捕らえたものを運ぶ為にその場をあとにしてるものもいるが、数が減ってるのは変わらない。
(少しは減らせれば良いと思ったが……)
今までなら、確実に壊滅させる事が出来たのだが、今回はそうはいかなかった。
相手が手強い。
(まあ、得られたものもあるから良いか)
連れ去ってきた者達がいるので、それで収支はまずまずと判断した。
それに、これ以上の損害は本当に痛手になってしまう。
すでにトガビトも一体失っているのだから。
(撤退してこい。
配下も出来るだけ回収しろ)
思念でそう伝えていく。
それに従って、虫型を率いるものが、地上の化け物を虫でつかんで空に引き上げていく。
残念ながら全ての地上型化け物を回収するには数が足りないが。
やむなき事だが、残りは足止めとしてその場に残す事にする。
どうせ気力で拘束されており、逃げ出す事もままならない。
それを助ける為に、助かるものを犠牲にするわけにもいかない。
損害はやむなきものとして諦めるしかなかった。
【修養値獲得】
総額 五千
続きは明日の17:00予定。
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