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【打ち切り】クラガリのムコウ -当世退魔奇譚-  作者: よぎそーと
四章

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44/164

44話 襲撃 → トガビト

「ん?」

「なんだ?」

 近くにいる化け物の塊に向かってる途中、物音が聞こえてきた。

 風を切る羽音が。

「止まれ!」

 すぐに何なのか気づいたカズヤが急停止する。

 他の者達も慌てて止まった。

「来るぞ」

 良いながら武器を手に取って、羽音のする方を見る。

 まだ事態を掴み切れてない者もいるが、他の者達もそれにならっていった。

 そんな彼らの前に、音の発生源である虫型の化け物があらわれた。



 上位者から与えられた指示に従って飛んできたそれらは、六人に一斉に襲いかかる。

 それらを拘束しようとカズヤが気を放つ。

 飛び回ってる範囲が広いので全部というわけにはいかない。

 ある程度固まって飛んでいた五匹を捕らえるにとどまる。

 それらは地面に落ちたが、他は変わらず接近してくる。

 それでも問題はない。

 同じように拘束をしている者達は他にもいる。

 まとまっていた虫達が更に地面に落ちていく。

 残った何匹かは当然そのままカズヤ達に向かってくる。

 電動ガンを構えていたコウジが、それらを狙って引き金を引く。

 何匹かが撃ち抜かれて体を崩壊させていく。

 羽根を失って落ちるものも出た。

 それでもまだ何匹か残っていたが、襲いかかってきた瞬間にカズヤ達がたたき落とした。



(ほう)

 その様子を観察していたものは素直に驚いた。

 封印派とは比べ物にならないほど手強い。

 一度に二十匹ほどの化け物をけしかけたのだが、難なく撃退されてしまった。

 思っていた以上の力を持ってるのが伺えた。

 少しばかりやり方を考えねばならなくなる。

 彼らに向かってる者達の展開を少しばかり変更させる。

 前に出ていたものどもは足を止め、後ろから来る者達と合流させる。

 少しばかり遅れ気味の者達はなるべく急がせ、他の集団との合流を促す。

 そうしてる間にも相手は動いていくが、気にせず配下を動かしていく。

 相手がどう動こうとも、彼らに接してるなら逃げる事は出来ない。

 多少動きに変化があっても、最終的にはやりあう事になる。

 ならば、それまでに体勢をととのえておいた方がよい。

 多少の数では何の障害にもならないのだから、より大きな集団としてあたるしかない。



(どうなってんだ)

 襲いかかってきた化け物を始末しおえた所で、疑問を抱く。

 事前にみた化け物の配置通りなら、こんなに早く接触するはずがない。

 気を張り巡らせて周囲の様子を探る。

 化け物の動きがすぐに伝わってきた。

 今も動いてる最中の化け物どもだが、それらが自分達を目指してないのを把握する。

 互いに寄り集まって大きな集団になろうとしている。

 普段の化け物らしくない動きだった。

 いつもなら、何も考えずただひたすら突進してくるだけなのだが。

「まずいぞ」

 とりあえず仲間に状況を伝える。

「あいつら、一カ所に集まってる」

 すぐに襲いかかってくる事はないだろうが、このままではそれらと接触する事になりかねない。

 負ける事はないかもしれないが、勝つにしても苦戦は免れないだろう。

 逃げるにはどうにかしてそれを蹴散らすか、上手く避けていかねばならない。

 だが、道路の都合で、逃げだそうにもそれも難しい。

 どうしても化け物の集団の近くを通り過ぎねばならない。

 捕らえられて戦闘になだれ込む可能性は大きい。

 一旦戻って別の道を進もうとしても、今度はそちらの方向からやってくる化け物どもと遭遇してしまう。

 見ていて驚くくらいに上手に動いている。

 偶然そうなっただけかもしれないが、狙ってそう動いてるのかもしれない。

 どちらにしろ危機である事に変わりはない。

「ちょっと、腹をくくらないといけないかも」

 全員に相応の覚悟を求めるしかなかった。

 最悪、それらと矛を交える事になる。

 それも仕事であるが、無理は避けたかった。

 戦うにしても可能な限り勝てる確立を上げておきたい。

 多数に対して少数であたるとなると、どうしても勝率が落ちる。

 回りの者達もそれは覚悟していった。

 ただ、それでもカズヤは当初の方針になるべく沿うような努力をしようと思っていた。

 携帯電話を取りだし、相手を呼び出す。

 ほとんどすぐに出た相手に、状況を説明してすぐに動くようお願いをして。



 その後すぐにカズヤ達は移動を始める。

 化け物集団は更に巨大化し、より大きな塊になっている。

 指示機はそちらの方を指していた。

 針が絶えず細かく動いているのは、その集団にいる一つ一つの化け物をとらえてるからだろう。

 それがどこまで近づいてるのか分からないから不安は余計に募る。

 探知をすれば良いのだが、その為には止まって意識を集中する必要がある。

 動きながらではそれも難しい。

 よほど慣れてない限り、動きながら気を複雑で高度に用いる事は出来ない。

 今はただ化け物がそれほど近づいてない事を願うしかなかった。



 願いは残念ながらかなわない。

 素早く移動してきた化け物どもがカズヤ達の行く手を阻んできた。

 進行方向にあらわれた虫型の化け物どもが、宙を漂いながら道をふさぐ。

 先発隊であろうそれらは、さすがに振り切る事も出来なさそうだった。

 こればかりはどうにかして倒さねばならない。

 それほど難しくはないだろう。

 ただ、それで時間をとられてる間に、化け物の本隊が到着する可能性もある。

(足止めか?)

 その可能性を考える。

 相手が組織だって動けるならそれもあり得た。



 あらわれた化け物は三十匹ほど。

 先ほどより更に多い。

 それらがほどほどに距離を開いてひろがっている。

 効果範囲を拡大した気による攻撃も、これではさほどとらえる事が出来なくなる。

 それを見越しての動きなのかもしれない。

 一回で全部をとらえる事は出来ない。

 何回かしかければ全部をとらえる事は出来るが、気力の消耗が大きくなる。

 そうやって無駄弾を撃たせる腹づもりなら、なかなか大したものである。

 それでもやるしかない。

 ここを切り抜けるには。

 ただ、やはりそれも簡単にはいきそうになかった。



「やっぱり居たか……」

 カズヤの目が、化け物達の中にいるそいつを見つめる。

 月明かりと街灯の下で姿を浮かび上がらせるそれは、化け物どもの後ろに立っていた。

 姿形は人そのものである。

 だが、化け物が襲いかかる素振りはない。

 むしろ、カズヤ達の間に立ちふさがっている。

 そいつを守るかのように。

 もしそいつが普通の人間なら、化け物に襲いかかられていたはずだ。

 そうでないのが、化け物の向こう側に立ってる者の正体を示している。

 カズヤ達を見るそいつは、口を動かす。

「行け」

 短いその言葉は大して大きくないはずなのに、カズヤ達の耳にもしっかりと届いた。

 生理的なおぞましさを感じ、背筋に震えが走った。

 人間でありながら人間のものではない。

「トガビトか……」

 言わずもがなの事を呟いてしまう。

 化け物に取り憑かれた、化け物取り込まれた者達。

 人としての姿を持ちながら、人としての能力を持ちながら、化け物となった者達。

 あるいは。

 力を求めて自ら化け物を取り込んだ者達。

 人でありながら化け物でもある存在。

 トガビト……誰が呼び始めたのかは知らないが、化け物と対峙する者達はそれらをそう呼んでいた。



 厄介である。

 化け物としての力を持ちながら、人間としての能力も持つ。

 その為、人間並みには智慧を使って行動してくる。

 今回、動きが普通の化け物と違っているのはこいつらがいたからなのだろう。

 予想はしていたが、実際に目にすると危機感を抱く。

 たいていのトガビトは一般的な化け物よりも強力な存在だ。

 単に力があるというだけでなく、それを有効活用するために頭を使う。

 個体差はあるが、トガビトの強さはユガミに匹敵すると言われている。

 実際、これまで遭遇したトガビトはいずれも強敵ばかりだった。

 そんなのを相手に、上手く切り抜けられるかどうか。

 迫ってきてるだろう化け物の集団を切り抜けるためにも、目の前の敵を即座に撃退せねばならない。

 しかし、早期の解決はトガビトがいる事で格段に難しくなってしまっている。

 嫌な展開になったことを感じつつ、カズヤは化け物とトガビトに向かっていく。

 ここを突破しなければ先は無い。

 出来るかどうかではなく、やるしかなかった。

 続きは明日の17:00予定。

 誤字脱字などありましたら、メッセージお願いします。

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